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根室に愛着が湧いてしまいました(道東7)

今回で「DOTO travel campaign」の投稿は最後になる。

根室4泊5日、「量より質」を求めた旅行。

宿からの道も、スーパーの場所も、覚えてしまった。
地名の読み方も、どこに何があるのかも、分かるようになっていた。
名前しか知らなかったはずの場所が、勝手知ったる場所になっていた。
旅先からの出発が、これほど恋しかったことはなかった。

当初死んだと思っていたはずの、心の感度は、敏感に動いていた。

前回は、北方領土について書いた。
領土問題の詳細云々より、根室を取り巻く空気感が伝われば、何よりである。

納沙布岬すぐそばの食堂で、蟹の卵とじ丼をいただく。

根室は「花咲ガニ」で有名だが、12月下旬当時、旬を少し過ぎてしまっていた。
「食いだおれ」ならぬ「カニだおれ」は叶わなかった。

こちらがカニで有名な花咲にある灯台である。

手がふやけるほど、カニ食べたかったなぁ...。

カニには会えなかったが、素敵な柱状節理を眺めることができた。

東尋坊のようなロケーションである。

沖に浮かぶのは無人島のユルリ島である。

こんなかわいらしい柱状節理もある。

車輪のような形から「根室車石」と呼ばれている。

この日は、根室を満喫できる最後の日だった。
もう日は傾き始めていたが、往生際悪く散策を続けることにした。

最後にどうしてもキタキツネを見たかった。

そこで、再び春国岱(しゅんくにたい)近くの林を訪れた。
それにしてもこのカラス、デカイ。

だけど、歩いていても、キタキツネどころか誰にも巡り合う気配がない。

と思っていたそのとき。

ん?

エゾシカの群れだった。

子鹿と雌鹿が何頭も歩いていた。

落石岬や野付半島よりも間近で眺めることができた。
彼らの足音が、確実に、今、まさに、そこで、鳴っている。
興奮した。

やがて、群れが通り過ぎると、

後ろから群れを見守るように、雄鹿が歩いてきた。
我々の心など見透かしているのではないか、という貫禄である。

彼らのおじいさんだろうか。
「こんな歳の重ね方をしたい」と、心底感じた。

結局、キタキツネは見られなかったが、満足感を覚えながら日没を迎えた。

根室の街に引き上げようと、温根沼(おんねとう)付近を走っていたところ、

白鳥が羽を休めていたのを見た。

この旅で白鳥は何度も見た、でも、それも明日でおしまい。

根室最後の夜である。

「食事と喫茶・薔薇」さんで、エスカロップ。
この旅ではお馴染みの料理であった。

Tもオリエンタルライスを... 
食べるつもりだったが、メニューになかったため、同じものを頼んだ。

そして、当たり前のようにスーパーでサッポロクラシックを買い込み、最後の晩酌をした。

すると、ゲストハウスのオーナーさんから、根室の地酒「北の勝(大海)」とみかんをいただいた。

こんな素敵な宿に5日間も泊まらせてもらっているだけで、ありがたいのに...。

日本酒に明るいTでも、満足の味だった。

これが「卒業旅行」なのかどうかは分からない、
華やかな、大学生のそれと比べたら地味だったかもしれない、
が、
とってもメロウな夜だった。

根室5日目

毎朝おいしい朝ごはんがいただけるゲストハウスともお別れである。

地元で熱い仕事をする、素敵なオーナーさんだった。

11時3分

日本最東端の始発駅、根室をあとにした。

ふと目を覚ますと、車窓に釧路の街が見えた。
黒々としたビルと工場の景色である。

根室が終わってしまったのだと思い知らされた。

この旅行が終わり、Tと日本地図を眺めた。
一方は自動車で、もう一方は鉄道で、日本中を回ったような男である。

「だいたいどこも行ったよなぁ」

と、呟いた。

でも、日本地図の右上、北海道の端っこには妙な愛着が湧いていた。
根室半島と風蓮湖、野付半島の形だけで、安心感を覚えてしまう。

この旅行の目的はほぼ達成されたと言っていいだろう。

問題は、根室のような場所を今後も作ることができるかどうかである。

場所と時間、食べ物、移動手段、そして、人。
これら全てが揃わなければ、その土地の魅力を引き出すことはできない。

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