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心のやさしい職人たち

僕は大工をやっているので、日頃からいろんな職人さんと一緒に仕事をする。
仕事をとおして僕が職人さんに感じたことは、『みんなやさしいなぁ』ということ。
でも、一般的な職人のイメージは、『こわそう』『無口そう』『厳しそう』などがあると思う。
最初は僕もそんな風な偏見をもっていた。

今、僕は大工を始めて2年目に入った。
まだまだわからないことだらけでよく親方(父親)に怒られている。
言われたことだけやってても何も身につかない。
自分で考えてこそ身につくものだ。
最初の1年目は右も左もわからない状態で、丸鋸(電動の回転するノコギリ)もほぼ使ったことがなかった。
でもやらなきゃ使えるようにならないと思い勇気を出して使い始めた。
#ミスると簡単に指が切れる!こわい!

そんな風に少しずつ道具たちにも慣れてきて、今は自分で車庫のリノベーションをしている。
#これはいずれ記事にしたい

職人さんの話に戻るが、もちろん最初ははじめましての人ばかりで、『公務員をやめたいい年の男がちゃんとできるのか?』と思われてるんだろうなぁと勝手に想像していた。
体力仕事は10時と3時に"いっぷく"がある。
一緒に現場にいる職人が輪になりお茶やコーヒーを飲む。
意外にみんなおしゃべりだ。
話の内容は、年金のこと、身体のこと、食堂のこと、旅行に行ったことなど様々。
年金の話が出るということは大体年齢の想像がつくと思うが、職人の高齢化も進んでいる。

僕が好きな職人さんで兄弟2人で板金屋さんをやっている人がいる。
年金をもらうような歳で、経験豊富なベテランだ。
ある現場で工事を進めていると窓の外から歌声が聞こえてきた。
外を見るとお兄さんが演歌を歌いながら仕事をしていたのだ。
空の青さと相まってなんとも心地よい風景だった。

難しい雨漏りの仕事もしっかりと原因はどこにあるのか突き止めてくれる。
修理が終わると、『これで雨漏りが止まるのぉ、良かったのぉ』と満面の笑みで伝えてくれるのだ。
こっちも嬉しくなってしまう。

それに僕のような素人みたいな大工にも質問すれば丁寧に教えてくれるし、小馬鹿にするようなことは絶対にしない。
いつも笑顔だ。
#仕事中は真剣な眼差しでめちゃくちゃかっこいい!

でもやはり年齢には勝てない。
この6月で板金屋さんをたたむと言っていた。
とても寂しい気持ちになった。
こんなにやさしくて腕のある職人さんがやめてしまう。
もちろんここだけではなく全国的に職人不足と高齢化が進んでいるのだろう。
だけど本当にもったいないことだなぁと感じる。
その技術を受け継ぐ人がいればいいのだが、そううまくはいかないのだ。

最近は特にこの課題に対して僕ができることはなんだろうと良く考える。
答えは見つかっていない。
でも、職人は辛いし危険が伴うみたいなイメージは少しでも払拭していけたらいいと思っている。

僕の周りにいる職人さんはみんなやさしい心を持っている。
それが伝わってくる。
本当にありがたいことだと思う。
だからまだ大工を続けていられるのかもしれない。
若い世代にもこういうことが伝えていけたらいい。
伝えていかなければいけない。
それが職人の先輩方への恩返しになればいい。

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