光の粒

 きみはおかしい。可笑しい。 白く光り過ぎている。 もしかしたらちょっと不自然かも。 枕元に置くには入眠しずらい明るさの間接照明みたい。白い光の粒とはいつだって未来への希望という意味の暗喩だけど、その白い光の正体は、希望の正体は君だったのか。 果てのない湖のような透明感の最果てから白い光が放たれている。まるで長いトンネルの中でやっと出口を見つけた時の、遠く遠く先から色のない光が、光という光が差し込んでいるようだ。 君はいつだって不自然であり自然だ。なぜならその、薄づきなのに重厚感のある光の肌感。 私はいつ地震が来るのかいつもこわい。つまり私は、他人の不自然であるが自然であるというその揺れに、とても敏感なのだ。だから君は、わたしが君と呼ぶ人はいつだって大きな矛盾を孕んでいる。いや違う。わたしが自らこの手で矛盾らしき概念を君のなかから無理やりにでも見つけ出しているのだ。止まらない振り子のように振り切らず、ただ同じ孤を描き続けるその揺れを、知らぬ間に微かに首を左右に動かしながら追っている時、わたしは既に手遅れなのだ。わたしは既にその人の虜になっているのだ。運命の端っこにも掠らない君が、生きる理由しか持っていないような君が、私がつらいみたくなった時により際立って発光するから、おかしい。運命じゃないのに、運命振ってくる。 私は昔からそこにはなにもない事象、これからもなにも起こらない事象についての物語をただ1人で進め、勝手に紡いでいくのが好きだ。わたしはその意図せぬ能力に何度も勝手に救われてきた。私だけの楽しい文脈、私だけのおもしろい起承転結に、これからもきっとマスクの下で口元を緩めているのだろう。

 わたしは合唱曲をしきりに歌っていたあの頃から、光の粒という暗喩が何故か全くしっくりこない。光の粒ってなんだよ。炊き立ての白米か?それならけっこう希望っぽいけど。

 可笑しいのはいつだって、君のほう。

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