なんの知識が無くても誰でも出来る!決算書の読み方(ビズメイツ編)
さて、今日は決算書の読み方というテーマで書いていこうかと思います。
以前にこんな記事を書きました、最新の情報に記事を更新したのでぜひ読んでみてください。
決算書の読み方はこの記事で詳しく説明してありますので、今回はそれと同じ手順で読んでいこうと思います。
こういった読み方のようなノウハウ的な記事は1度書くだけでは伝わらないと思います、なのでこれから定期的に決算書の読み方というテーマで書いていきます。
取り上げるかは分かりませんが、もしこの企業を取り上げて欲しいというのがあればコメントしてみてください。
さて、今回はVoicyで募集した中からビズメイツ株式会社を取り上げていこうと思います。
それではまずは、先ほどの記事の中で紹介した決算を読む7つのステップについて書いていきます。
この通りやっていけば、何となく決算が読めるよというやつです。
ステップ1.事業セグメントを見て売上と利益を分解し事業内容を把握する
ステップ2.業績の推移を見てみる
ステップ3.業績の推移の理由を考える、疑問点を出す
ステップ4.疑問点について調べてみる
ステップ5.今後の施策を確認する
ステップ6.知っている他の知識と組み合わせて、自分なりに考えてみる
ステップ7.自分なりの総括をする
この手順を踏めば、全然知識とか指標とか知らなくても誰でも決算が読めるよ、という触れ込みでやっています。
それでは早速ビズメイツで実践してみましょう。
ステップ1.事業セグメントを見て売上と利益を分解し事業内容を把握する
企業は主力の事業を事業セグメントという形で分けて、情報を提供している事が多いです。
なので事業セグメントを見てみると、主にどのような事業を行っている企業かが分かります。
ビズメイツでは事業セグメントは2つあります。
①LS事業:Bizmates(オンラインビジネス英会話)、Zipan(オンラインビジネス日本語会話)
②TS事業:GTalent(外国人ITエンジニア転職サポート)、GitTap(グローバルのIT人材採用サイト)
オンラインでのビジネス向けの語学学習事業と、採用関連のサービスを提供しています。
個人向けには語学学習から、転職、その後のスキルアップまで一貫したサービスを提供していて、企業向けにも採用や社員のスキルアップのためのサービスを提供している企業となっています。
ちなみに、どの程度詳細に事業内容を把握するかは目的次第です。
例えばオンライン英会話は低価格でサービスを提供していますが、これはフィリピンなどの物価の安い地域の海外人材を講師とすることで低価格化を実現しています。
家賃などの固定費もかからないですし、ストレスフリーにオンラインで海外と繋ぐことが出来るようになった事で最近可能になったビジネスモデルです。
他の分野へ応用が利きそうなビジネスモデルですから、事業を作りたいなんていう人はビジネスモデルを研究しても良さそうですよね。
何を知りたいのか次第ですが、事業内容やビジネスモデルは色々と調べてみると面白いです。
今回はビジネスモデルは触れませんが、オンライン英会話は競合が多い市場ですから、ビズメイツはどのような特色があるのかだけもう少しだけ詳しく見てみましょう。
サービスの特徴はビジネスに特化したオンラインサービスだという点にあります。
オンライン英会話のサービスは多数ありますが、ビジネス特化というのは珍しいですね。
その結果として対象マーケットは小さくなっているものの、オンライン系の他社サービスと比べると1.8倍の料金を得ることが出来ています。
他社と比べると売上の拡大は難しいものの、収益性の高さが期待できるという事です。
また、オンライン英会話の学習を日本人コンサルタントがアシストするがコーチング事業も行っています。
ビジネス向けである分、本気度が高くその後の仕事(お金)にも繋がりやすい点を考えるとこういった付加サービスは、他社と比べて相性がいいですね。
また、採用関連のTS事業も行っていましたがこれもビジネス向けの語学学習サービスだという事が影響しています。
個人はもちろん仕事に繋げたいから、サービスを利用するわけで転職とは相性がいいです。
さらに社員にビジネス面での語学力を付けさせたい、グローバル人材を必要とする法人顧客との接点が出来ますから、コストを大きくかけずにターゲットの顧客を獲得しやすいです。
ビジネス向け語学学習という事で、対象マーケットは小さいものの、仕事(お金)に直結しやすい分、高単価化や他のサービスへの拡大がしやすい、という事が分かります。
複合的なサービスを通じてどれだけ事業を拡大させられるかが重要な企業だという事ですね。
このように事業セグメントからどのような事業を行っている企業なのかを把握する事が出来ました。
続いて売上と利益を事業セグメントで分解してみましょう。
2023年12月期の事業セグメント別の売上構成と(利益額)は以下の通りです。
LS事業:95.7% (10.5億円)
TS事業:4.3% (▲1.6億円)
採用関連などのTS事業はまだまだ投資段階で赤字で、売上・利益ともに語学学習のLS事業が主力となっています。
今後の大きな成長のためには、TS事業も重要ですが現状はビジネス向けの語学学習の需要に業績は左右されやすいという事ですね。
ステップ2.業績の推移を見てみる
さて、事業セグメントを分解してみた結果、どのような事業を行っていて、何が主力で、どういった需要に企業か業績が左右されやすいのかが分かりました。
このように企業についてざっくりと理解できたら、続いて業績の推移を見てみましょう。
目的に応じて、どのような期間でみても構いません。
ビズメイツは上場間もない企業ですし、見られる情報も限られているので今回は2020年12月期~2023年12月期までの3年ほどの短期間の推移を見てみます。
まず、売上高の推移を見てみると成長が続いています。
とはいえ増収幅は5.5億円→3.9億円→3億円と成長は鈍化しています。
営業利益の推移を見てみると、こちらも増益は続いていますが2022年12月期→2023年12月期は500万円ほどの増益と横ばいです。
成長は続いていますが、伸び悩み傾向にある事が分かりますね。
また、直近の2024年12月期の1Qの業績は以下の通りです。
売上高:8.2億円(+10.0%)
営業利益:9200万円(+38.7%)
経常利益:8300万円(+60.4%)
純利益:5300万円(+75.7%)
増収で大幅増益で過去最高となっています、利益面は伸び悩んでいましたが直近は大幅増益となっています。
ステップ3.業績の推移の理由を考える、疑問点を出す
業績の推移を見たところで、その理由を考えて疑問点があればそれを出していきましょう。
そもそも売上が拡大していましたが、それはどうして?という単純な点は気になります。
その他にも売上の成長鈍化の理由、利益面が2023年12月期に伸び悩んだ理由、直近では利益面が改善した理由なんていうのも気になります。
このように、恐ろしいほどに何のひねりもない、単純なものでもいいので、疑問点を出してみましょう。
ステップ4.疑問点について調べてみる
それでは、疑問点について実際に調べてみます。
基本的に業績変化の要因は、企業側が説明してくれています。
今回は「決算説明会資料」からその要因を見ていきます。
それではまずは「どうして売上の拡大が続いているの?」
「成長は鈍化しているの?」という単純な点から確認していきます。
この大きな理由はオンライン語学学習市場のマーケット環境にあると考えられます。
語学学習市場は通学がメインです、そういった中で語学学習市場はコロナ禍でマーケットが縮小し、その後は回復傾向にありますがコロナ以前を下回って推移しています。
その一方で、ビズメイツが事業を行っているオンライン語学学習市場は拡大が続いています。
コロナ禍でオンライン化が進んだことや、通信環境が整備された事などが影響しています。
市場拡大を受けてビズメイツも成長が続いていたという事ですね。
ですがそのマーケットの成長は2022年以降は鈍化傾向が見られます。
ビズメイツの売上も同様の時期に鈍化傾向となっていましたから、マーケットの拡大ペースが落ち込んだ事が影響していると考えられるという事です。
市場の動向が業績に影響を与えている事が分かります。
また、直近の成長には法人顧客の成長が大きく影響しています。
円安が続く中で海外市場に注力する法人も増え始めていますから、法人からの拡大が期待される状況になっていると考えられます。
続いて、利益面が2023年3月期に伸び悩んだ要因を見ていきましょう。
その要因は、人件費や減価償却費、賃借料の投資増加によって人件費が増加した事が影響しています。
成長のための積極投資が影響して収益性が悪化しているという事ですね。
ちなみに、経常利益や純利益に関しては減益となっていたのですがそれには上場関連費用が影響しています。
これは一時要因ですから2024年12月期以降の業績は改善しやすい状況だという事が分かります。
業績悪化の要因が一時要因かどうかは重要ですから、しっかりと確認しておきましょう。
さて、最後に直近の利益面が大幅増益となった要因も見ていきます。
直近でも投資を続け販管費は増加していますが、対計画比では販管費は、広告費、採用費、業務委託費などが想定を下回っています。
採用時期や広告時期の変更、業務の内製化などを進めたとしていますので、想定よりは投資の抑制を行っていた事が分かります。
市場の成長が鈍化する中で、一定の収益性改善に取り組んでいる事が考えられます。
となると2023年12月期の利益は伸び悩みましたが、今後の利益面は投資抑制によって堅調な状況が期待できそうです。
ステップ5.今後の施策を確認する
さて、過去の状況が分かったところで、続いて未来を見ていきましょう。
今後、どのような取り組みを進めていこうとしているのかを確認してみます。
ビズメイツが成長戦略としているのは以下の通りです。
①顧客層の拡大
②コーチングマーケットの獲得
③オフライン市場の開拓
④テクノロジー活用
⑤HR領域の事業拡大
先ほど見たようにコーチングなどの付加サービスは、お金に直結し本気度が高いビジネス英会話と相性がいいですから、期待出来そうな取り組みです。
また、影響が大きそうなのは顧客層の拡大です。
市場としてはTOEICだと500点以下の、初心者層が最も規模が大きく潜在的なマーケットは大きいとしています。
ですがビジネス英会話を主力とするビズメイツはこの初心者層の顧客が少ないです、なのでその層の獲得を積極的に進めていくとしています。
その他にオフラインへの展開も掲げています、語学学習市場はオフラインがメインです。
オンライン語学学習市場が全体でも312億円ほどなのに対して、オフラインはビジネスの語学学習マーケットだけで1080億円あります。
大きなマーケットに展開する事で拡大を目指すという事ですね。
そしてHR領域の事業拡大も掲げています、この市場も非常に大きいです。
人材紹介と求人情報提供サービスだけで市場規模は9922億円もあります。
ビジネス語学学習を基点として、マーケットの大きな市場へ事業領域の拡大を進めていこうとしている事が分かります。
ステップ6.知っている他の知識と組み合わせて、自分なりに考えてみる
さて、ここまでで「どのような企業なのか」「どういった業績の推移になっているのか」「どうして変化があったのか」「今後どういった変化を進めていこうとしているのか」が分かりました。
考える前提が整ったという事ですから、ビズメイツの今後について考えていきましょう。
自由に何でもいいので考えてみましょう、自分の専門分野の知識などを組み合わせてみると、他の人には気づけないような事が分かったりするのでお勧めです。
さて、ビズメイツでは直近の成長のためにはビジネス英会話事業の拡大が最も重要です、市場は伸び悩み傾向になっていましたが今後はどうなると考えられるでしょうか?
まずは市場予測を調べてみます。
グローバルでの予測ではありますが、グローバルインフォメーションによると、オンライン語学学習市場は2023~2028年の年間平均成長率は19.73%になると予測しています。
市場の成長は期待できるという事ですね。
また、現在はインバウンドが拡大していますし、外国人労働者も増加しています。
さらに政治的にもリスキリングに対する支援が進んでいます。
海外の方と触れ合う機会も増えて、学習の支援も期待される状況だという事です。
そして大きな円安も進んでいます、日本が安い国であるという印象も広がり外貨獲得のための意識は高まっているでしょう。
そういった環境を考えても、今後のオンラインの語学学習市場は成長が期待できそうですね。
市場の拡大と共にビズメイツも成長が期待されます。
とはいえ、ビジネス英会話を必要とするような、海外に出ていく、海外で働く、オンランで海外向けに働くというモチベーションがある人は、実際どれだけ増えるのでしょうか?
例えば日本のパスポート取得率は17%と低いです、長期休暇が取りにくい労働環境もあり、海外にいった事が無い、学生時代はいった事があるけど、社会人になってからは海外にいった事が無いという方が非常に多いですよね。
そのような方が大半の中で、海外向けに働こうという人が今後大きく増えるかというと、そうではないだろうと個人的には考えています。
また、今後の取り組みとして初心者層への拡大を上げていましたが、それも同様でその層が海外向けに働こうというモチベーションがどれだけあるかというと不透明感は強いです。
初心者層とビジネス英会話は相性が悪いですから、この取り組みは容易ではなさそうです。
一定の市況の後押しは期待されますので、成長が続くと考えられますが大きな成長を見せられるのかというと、難しいのではないかと個人的には考えています。
また、今後の取り組みとしてオフライン英会話への参入やHR領域の拡大も掲げていました。
この取り組みがどうなるのかも考えてみると、これらのサービスは強い競合企業が多いです。
ビジネス英会話の事業で顧客と接点を持てるという強みがありますから、一定の需要は期待されますが、競争が激しい市場で大きな成長が可能かというとそうではないでしょう。
また、コーチングの事業に関しても、相性はよく一定の成長が期待できるものの単価が大きく上昇しますから、オフラインの高単価のサービスと比較される事になります。
そう考えると、大きな成長が期待できる事業かは不透明感があります。
ビジネス英会話のマーケットは特色があり、コーチング事業やHR事業など、事業領域の拡大をしやすく拡大が続く事が期待できますが、一定の成長は期待出来るものの、大きな成長となると難しい状況にいると考えられます。
ステップ7.自分なりの総括をする
今後について考えてみたところで最後に総括して、全体像を振り返ってみましょう。
ビズメイツはオンラインのビジネス語学学習を中心にサービスを提供しています。
ビジネス向けだという事があり、高単価を実現しており、事業領域の拡大もしやすくなっています。
近年の業績は拡大が続いていますが、市場の拡大ペースが鈍化する中で成長は鈍化しています。
利益面は2023年12月期にコスト増加で伸び悩みましたが、直近の2024年12月期の1Qでは投資の抑制もあり大幅増益となっています。
市場の拡大が鈍化する中で一定の収益性改善に動いている事が考えられます、さらに2023年12月期は上場費用という一時要因もありました。
なので今後は利益面は好調が期待できそうです。
また、今後は市場拡大と共にビズメイツの成長も期待されますが、実際に海外向けに働くというモチベーションがある人材が実際どれだけいるのかというと、そんなに多くないだろうという点と、今後の取り組みは一定の成果は残せそうなもののの、大きな成長は難しそうな点を考えると、大きな成長を見せられるかは難しさがありそうです。
一定の成長は続くものの、大きな成長は難しいと考えます。
こんな感じでざっくりと総括をしたら終了です。
「こんなもんでいいなら何となく決算書を読めそう!」と思ってもらえれば幸いです。
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