日本ハム【2282】肉の企業は相場環境に業績が左右される話と、利益の改善が期待できる理由

主要な指標に採用されている企業を全て取り上げる、という事でやっているこのnote今回取り上げるのは日本ハム株式会社です。

シャウエッセンが大好きです、こんにちは。

事業内容と業績のポイント

さて、それではまずは事業内容から見ていきます。

ご存じの通り日本ハムは肉を中心とした事業を行っており、牛、豚、鶏を自社で生産飼育から加工、流通販売まで行っています。
食肉や、ハム・ソーセージだけでなく、チーズや乳製品なども展開しています。

その他にも、フリーズドライ、冷凍食品、健康食品や、さらには水産事業も展開していおり、食という面で多様な事業を展開しています。

企業のビジョンとしては「たんぱく質を、もっと自由に」というものを掲げており、肉というものにとらわれることなく、たんぱく質を中心に事業を展開しています。

まずは事業セグメントを見ていくと、主要な事業セグメントは
①加工事業本部
②食肉事業本部
③海外事業本部
④その他
と4つあります。

①加工事業本部は、ソーセージのシャウエッセンや冷蔵ピザの石窯工房、チルド食品の中華名菜、焼き肉用のスタミナ苑、その他にもバニラヨーグルトや、チーズ、さば缶なども提供しています。

そしてソーセージや、冷蔵ピザ、中華のチルド食品の市場ではトップシェアになっています。

食肉事業本部では、輸入牛も含め国内外の食肉、の生産から販売までを手掛けていて、日本国内の食肉販売量の1/5を取り扱っています。

海外事業本部では、アジアや欧州、米州、豪州で牛や鶏の飼育や生産、加工食品の製造販売などを行っています。

球団・その他の事業としては、日本ハムファイターズの運営を中心に行っています。

2023年3月期のセグメント別の売上構成を見ていくと
①加工事業本部:30.6%
②食肉事業本部:53.7%
③海外事業本部:14.6%
④その他:1.1%
と食肉事業が中心となっていて、海外事業は14.6%ほどですから国内を中心とする企業だと分かります。

セグメント別の利益を見てみると
①加工事業本部:50.2億円
②食肉事業本部:290.8億円
③海外事業本部:50.3億円の赤字
④その他:4.8億円の赤字
となっており利益面では特に②食肉事業本部が重要な構成となっています。

国内の1/5という大きなシェアを持つ食肉の提供が中心の企業なんですね。

プロ野球チームの運営を行っているその他事業は全体から見ると、規模が小さいので今回は触れませんが、近年の変化が面白いので、今度また別で取り上げてみようかと思います。

さて続いて、2023年3月期の商品別の売上構成を見ていくと
①ハム・ソーセージ:10.3%
②加工食品:18.7%
③食肉:62.9%
④乳製品:2.9%
⑤その他:5.2%
となっており、ハム・ソーセージや加工食品も一定の規模がありますが、やはり食肉が事業の中心になっています。

基本的に業績は、国内の肉関連の商品の動向に大きく左右される企業だという事ですね。

なので今回は国内の肉関連の事業を見ていこうと思います。

それでは続いて、ここ数年の業績の推移を見ていきます。

売上高の推移を見ていくと、コロナの影響で2021年3月期~2022年の3月期は悪化していますが、2023年3月期はコロナ以前を若干上回る水準となっています。

一方で利益の推移を見ていくと、売上は悪化していた2021年3月期~2022年の3月期の利益水準は好調で、一方で売上がコロナ以前の水準となった2023年3月期は大きく悪化しています。

売上と利益の推移は連動していない事が分かります。

ではその要因は何なのか、2021年3月期と2023年3月期の業績についてもう少し詳しく見ていきましょう。

まず、2021年3月期の業績を見ていくと、加工事業本部や食肉事業本部では売上は減少しつつも、利益面が大きく増加しており、それが減収増益の要因だと分かります。

加工事業本部で増益となった要因は、事業の改善活動の影響や内食拡大による数量増の影響もありますが、それに加えて、副材料、燃料費の改善といった外部要因による変化も影響しています。

続いて、食肉事業本部の業績を見ていくと、コロナの影響で外食、インバウンドの需要の大幅な減少があり、売上は減少したものの、内食用需要の増加と、鶏肉や豚肉の相場が堅調に推移した事で増益になったとしています。

つまり2021年3月期は、コロナの影響を受けて売上は減少していましたが、肉の相場価格自体は堅調な一方で、副材料費、燃料費といったコストは抑えられたことで好調となっていたという事です。

続いて2023年3月期の業績を見ていくと国内外での、食肉相場の高騰により9.4%の増収となったものの、原材料価格や電燃料費の大幅な上昇を吸収できずに46.8%減益となったとしています。

加工事業本部では、牛・豚・鶏といった主原料の増加で62億円、羊腸や包材などの増加で51億円、電力・LNGの高騰で30億円といった要因を受けて、価格改定の効果で115億円ほどプラスの影響はあったものの、吸収できずに65.8%の減益となっています。

食肉事業本部では、国産牛でも飼料コストの増加や、鳥インフルエンザの影響を受けて利益面には計24億円のマイナスの影響が出ています。
特に悪化しているのが輸入食肉事業で、輸入鶏肉は3Qでの相場の下落によって、72億円も業績を押し下げたとしています。
高値で輸入した鶏を下落した相場で売却すれば当然悪影響が大きいです。

ちなみに、セグメント別の業績を見ていくと、海外事業本部も非常に大きな業績悪化となっています。

その要因はオーストラリアとウルグアイ市場です。3Qからは相場は下落傾向になったもの、輸出価格も下落して減益になったとしています。

海外事業でも相場の上昇を受けて仕入れのコストが増加し悪影響があり、その後は相場が下落したため、相場高騰時に仕入れた肉の販売を行った事で減益になったという事ですね。



これらの市場では、市場価格が高騰していたのは2022年の4~9月あたりで、それ以降は低い水準で落ち着いていますから、高値で仕入れて安値で販売するような大きな業績の悪化に繋がる可能性は低いです。

2024年3月期では、食肉事業本部の輸入食肉事業にせよ、海外事業にせよ業績は回復する可能性が高いでしょう。

という事で2023年3月期を振り返ってみると、市場環境の悪化を受けて減益となっていたという事が分かります。

つまり、2021年3月期と2023年3月期の業績を見てみると、肉相場や原燃料相場などの市場環境が利益面に大きく影響を与えるという事が分かります。


海外市場は落ち着いていますので、業績の改善が起きるでしょうが、原燃料の推移を見てみるとは高値が続いている状況ですから、国内事業ではさらなる価格改定を進めて業績を改善させていく必要があります。

という事で日本ハムは、国内を主力市場として、食肉を中心に、ハムやソーセージ、加工食品などの提供を行ています。
業績の推移を見てみると売上と利益の推移は連動しておらず、肉の相場や原燃料の相場が業績に大きな影響を与えます。

2023年3月期は、海外相場の大幅な変動による悪影響に加え、国内では高騰する原燃料高の影響を、価格の改定では吸収しきれておらず業績は悪化しています。

海外事業に関しては、直近では相場は落ち着いた状況ですから業績の改善が進む可能性が高そうです
国内では価格改定を進め、どこまで業績を改善できるかが重要な状況です。

直近の業績

それでは続いて直近の業績を見ていきます。
今回見ていくのは2024年3月期の1Qの業績です。

売上高:3222.1億円(6.5%増)
事業利益:121.4億円(32.4%増)
親会社の所有者に帰属する四半期利益:117.5億円(15.4%増)
となっており増収増益で好調となっています。

セグメント別の業績の推移を見ていくと
①加工事業本部:売上4.6%増 事業利益35.2%減
②食肉事業本部:売上8.3%増 事業利益45.1%増
③海外事業本部:売上10.9%減 事業利益3億円→3億円の赤字
④ボールパーク・その他:売上76.0%増 事業利益200.9%増
となっています。
主力事業では食肉事業が非常に好調でボールパーク・その他事業も好調だった事が分かります。

ボールパーク・その他の事業に関しては今回は触れませんが、札幌ドームから移転して収益性が改善している流れは面白いので、当初にも書いたように今後また別で取り上げてみようと思います。

続いて主力事業の①加工事業本部と②食肉事業本部の業績についてもう少し詳しく見ていきましょう。

まずは加工事業本部では価格改定が順調に推移し、売上は増加したものの、ハムやソーセージといった低収益商品の構成上昇に伴い商品ミックスが悪化して減益になったといています。

具体的な要因を見ていくと、価格改定の効果で37億円の増収効果があった一方で、マイナスの影響としては、数量減少が4億円、主原料価格の影響が20億円、包装材や資材など副材料の影響が15億円、電燃料高の影響が3億円などがあり、トータルでは4億円ほどのマイナスの影響があったとしています。

減益とはなってしまい十分ではないものの、収益性の低い商品の売上が増加した影響もあるようですから、一定程度は値上げによる収益の改善が進んでいると考えられます。

続いて、増収増益だった食肉事業本部では、国産・輸入各畜種とも相場高に対し価格転嫁を行い売上が増加したとしています。

事業利益面では、鶏肉では飼料高が継続したものの、相場高やブランドの鶏の販売で利益が増加し、前期大きく悪化していた輸入食肉では仕入れの見直しもあり利益が改善したとしています。

食肉事業本部では、価格転嫁が進み、利益面は改善を見せているという事です。

加工食品事業はまだ十分ではありませんが、全体としては価格改定による改善は進んでいます。

通期予想を見ても、売上は横ばい傾向が続く見通しですが、利益面は28.5%もの増益の傾向が続く見通しです。

通期では価格改定でコスト増を打ち返せる見込みとなっていて、前期のような相場の大きな変動がない海外事業も大きな改善の見込みとなっています。

市場全体としても値上げが進み、消費者もある程度値上げを受け入れる体制が出来ていますから、加工事業や食肉事業では、価格転嫁によってさらに業績は改善していくと考えられます。

という事で日本ハムは原燃料高が続く中で、価格改定を続けており、直近ではある程度値上げで原燃料高を打ち返せており、業績は改善傾向にあります。

相場の大きな変動で大きく業績悪化していた海外事業も、相場が落ち着いた推移を見せる中で改善余地は大きく、今後はさらなる利益面の回復が進むと考えらる状況です。

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