アークランドサカモトはなぜLIXILビバを買収するのかと買収スキームについて解説

どうもコージです!
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そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

さて、早速ですがこんなニュースがありました。

アークランドサカモト、関東など新潟県外で店舗網拡大

新潟県のホームセンター大手アークランドサカモトが、住宅設備大手LIXILグループの上場子会社LIXILビバへのTOB(株式公開買い付け)を表明した。「ホームセンタームサシ」は新潟県内での知名度は高いが、これからは店舗網が首都圏方面を中心に全国規模で大幅に広がる。製品の仕入れコスト低減などの早期の効果発揮も課題となりそうだ。

どうやらホームセンター大手であるアークランドサカモトは、LIXILの子会社でホームセンター事業を行っているLIXILビバを買収すると表明したようです。

まずこちらの資料をご覧ください。

元々アークランドサカモトは総資産1056億円に対して、純資産が831億円で自己資本比率78.7%、ネット有利子負債はマイナス143億円(借入より143億円多く資金を持っている)となっておりと非常に良好な財政状況だった事が分かります。
しかし、今回の買収によってネット有利子負債は1492億円(保有している資金より有利子負債が1492億円多い状態)に増え自己資本比率は24.6%まで下落してしまうようで、かなり大きなリスクを取って買収へ動いている事が分かりますね。

今回はなぜそれほど大きなリスクを取って買収へ踏み切ったのか考えていきましょう。

まずは買収スキームから見ていきましょう。

買収スキームとしては
①アークランドサカモトがLIXIL以外の株主から1株2600円総額519億円でLIXILビバの株式を株式市場から買い取る、これによってLIXILビバの株主はLIXILとアークランドサカモトの2社だけになる

②アークランドサカモトがLIXILビバに対して資金提供をする

③LIXILビバはアークランドサカモトから提供された資金を利用してLIXIL保有分の株式全てを、1株2423円の総額566億円で自己株式として取得する

④自己株式にはもちろん議決権など株主としての権利がないので、株主はアークランドサカモトだけになる

このような手法を取って買収するようですね。

さて買収のスキームも分かったところで、なぜ買収するのかについて考えていきましょう。

まず、買収する事で売上が業界5位まで上昇するという事が分かります。
これからの国内市場では、人口減少、ECの増加など市場環境が厳しくなっていくことは間違いないわけです。
そんな中アークランドサカモトは業界11位と難しい位置にいましたから、規模が拡大すれば仕入れ交渉など規模のメリットを活かせますし、アークランドサカモトは人口が伸びて行く大都市圏では知名度が低いので、今後拡大する上ではLIXILビバの知名度というのも需要だったのでしょう。

さらにアークランドサカモトは日本海側中心、LIXILビバは太平洋側を中心に出店していたため店舗が重複してしまっているところが少ないようです。
カニバリゼーションの心配がないという事で、これはこういった小売の買収に関しては非常に重要なポイントです。

アークランドサカモトにとってはLIXILビバは買収先として有望だった事が分かりますね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

買収によるシナジーとして、PB(プライベートブランド)の共有及び新規共同開発体制とありますね。
 個人的にはこれが今回の買収の最大の理由だと考えています。

実はアークランドサカモトはPB比率が10%ほどしかないことが分かります、業界の上位にいるブランドは40%ですから明らかに低いですよね。

今後はさらにECなどが伸びていく事は間違いないでしょうから、単純に仕入れて売るだけではECに喰われて行くだけになってしまいます。

PBの方が当然利益率が高いですから利益を高めるためにも、逆にECの売上を伸ばしていくためにもいいPB商品を開発していく必要があるわけです。
ですからPBでは先を行くLIXILビバの力を利用したいんですね。

もう一つのシナジーとしてITシステム・物流体制の共通化というものも上げています。
これも重要なポイントで、近年では物流コストが上昇していますから売上が増えていても物流コスト増加で減益となっている会社も多いです。
ですから物流を一本化してコスト削減するのは非常に重要です。

さらにITシステムを統合することも非常に重要です、事業規模でどれだけ劣っていようがWeb上では全て横並びで評価されますので、サービスが劣っていては当然買ってもらえません。
PBやECを伸ばしていくには業界上位のホームセンターと同等以上のサービス開発が必要ですから当然コストも大きくなります。
なので2社で分け合えるという事が重要なのですね。

という事でアークランドサカモトがLIXILビバを買収理由は、PBを伸ばしIT投資をしていかないと今後衰退していくだけになってしまうので、これだけ多きくリスクを取ってもLIXILビバが必要だったからと考えられます。

今回はアークランドサカモト(業界11位)がLIXILビバ(業界6位)を買収するという、規模が小さいほうが規模の大きい方を買収するわけです。
こういった買収の時に起きやすいのが、意味が無いのに互いに上下関係を意識した争いをして両者間がなかなか融和せずにシナジーを生めないというパターンです。

今後は買収後に良好な関係を結んでいけるのかに注目です!!

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