不二家の決算から考える大量閉店の理由と今後

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社不二家です、ペコちゃんで有名なお菓子の会社ですね。

不二家の店舗数が2015年末に比べて2020年6月時点で100店以上減っているとのニュースが出た事で大量閉店と話題になっていました。

今回はそんな不二家はどうして大量閉店が進んだのか、今後がどうなっていくのかについて考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は6.7%減の469.8億円、営業利益は44.7%減の2.8億円、純利益は1.5億円の黒字→1.7億円の赤字となっており大幅な減収で、営業利益ベースでは黒字を保ちながらも税引き後の純利益ベースでは赤字転落してしまっている事が分かります、どうやら業績不振となっているようですね。

ではどうして赤字転落してしまったのでしょうか?

税負担が大きく3.3億円ほどあることも赤字となった要因なのですが、それ以外にも減損と臨時休業等関連損失が合計で2億円ほど計上されている事も大きな要因だという事が分かります。

不二家はレストランなどもやっていますし、商業施設への出店もしていますから基本的には新型コロナによる売上の減少と、店舗の休業が赤字転落の理由だと考えられそうです。

不二家の主な事業セグメントは①洋菓子事業(不二家のリアルな店舗運営)②製菓事業(カントリーマームやミルキーやホームパイなどのお菓子を作っている事業)の2つだという事が分かります。

そしてそれぞれの事業セグメント事の業績の推移は
①洋菓子事業:売上高 147億円→130億円 利益 6.9億円の赤字→9.5億円の赤字
②製菓事業:売上高 342億円→324億円 利益 26.7億円→25.4億円
と推移しており両セグメントで減収減益となってしまっている事が分かり、カントリーマームなどを作っている製菓事業が稼ぎ頭だという事も分かります。

リアルなお菓子屋さんの運営をメインにした企業ではないという事ですね。

こちらの資料は各事業の売上高の推移なのですが、長期的なトレンドとして洋菓子事業は減少傾向にあり、菓子事業は増加傾向にある事が分かります。

先ほどの資料にもある通りで洋菓子事業は赤字の不採算事業ですから、それを菓子事業の成長でまかなう形になっているようです。

不二家の閉店が進んでいる背景としては、洋菓子事業は不採算事業となってしまっていますが製菓事業の方が伸びてきて利益も出ているために無理してリアルな店舗運営で規模の拡大を図っていく必要がなく、不採算店舗の整理を進めてきたという事ですね。

また今は新型コロナという理由を付けて、ブランドイメージを落とさずに閉店を進めていく事が出来ますからさらに不採算店舗の整理を進めていく事も考えられます。

続いてもう少し詳しく各事業を見ていきましょう。

実は洋菓子事業の、洋菓子チェーン店舗の運営では新型コロナの影響があった第2四半期に関しては既存店の客数が前年同期を上回るところまで回復していたようです。

緊急事態宣言中は飲食店が休業となっていたところも多かったですし、家にいる時間も増加した事で家で食べる用の持ち帰りスイーツの需要が増加していたと考えられますね。

さらに不二家の不振の要因はコンビニで安くておいしいスイーツが出てきた事だと言われています、新型コロナ下では消費が減っていましたからスイーツくらいちょっと高いものを買いたいという需要も大きかったのかもしれません。

また、新しい販路獲得のために納品店(食品スーパーに製品を納入して販売は納入先が行う店舗)という単純に言えば、フランチャイズ的な卸売り先を増やしているようで不二家洋菓子店の店舗自体は34店舗増の868店舗となったようです。(スーパー内では納入先が不二家として店舗をもって販売しているため店舗数は増加しています)

不採算事業でコストをかけたくないですし、自前で店舗を持つリスクを取らずに卸売で安定的に利益を取りたいという事ですね。

しかしまだまだ赤字の不採算事業ですからこういった納品店の形態を増やす一方で、自前の不採算店舗からは撤退が続く可能性がありそうです。

なので店舗数だけを見ていると実態よりも多く見えている可能性があり、今回大量閉店が話題となりましたが実質的にはもっと店舗数が減っているのかもしれませんね。

続いては製菓事業について見ていきましょう。

グループ全体の製菓事業では減収減益となったものの、不二家単体の菓子に関しては個人向け製品の売れ行きが不調となる一方で、巣ごもりによるファミリー向けの販売は好調に推移したようで、生産性の向上・配荷の促進も行った事から利益面では前期を上回ったとしています。

コスト改善も上手くいっているようですし、カントリーマームやミルキー、ホームパイなどの商品は定番化していますので、業績の大崩れは考えにくいですから今後も安定して利益を稼げそうな事業ですね。

しかしこの菓子事業に関しては安定して利益は出るものの、しばらくの間は新型コロナの影響が響き業績の向上は難しいだろうと考えています。

近所の集まりや、親族の集まり、様々な会議や打ち合わせのなど、お茶菓子を出しながら行われていた集まりが減少していますから、お茶菓子として出されていた定番商品の需要減少はしばらく続くと考えられるからです。

さて、新型コロナによってダメージを受けてしまった不二家ですが財務状況は大丈夫なのでしょうか?

現預金・売掛金といった手元資金が244億円ほどあることが分かります。
さらに換金が行いやすいであろう投資有価証券も62億円ほどあります。

一方短期的な負債である流動負債は134億円程しかなく、負債全てを合計しても175億円ほどです。
さらに負債の中には現金を支払う必要が無いものも含まれていますから、財務的には非常に余裕のある状態だと分かりますね。

しかしこの財務的な余裕が必ずしもプラスに働くかというとそうとも言い切れないのではないでしょうか。
不二家といえば100年以上の歴史のある企業です、こういった歴史のある企業では内部の利害関係が複雑化していて事業の撤退を行う事が難しかったりします。

洋菓子事業は完全に不採算事業となっていますので上手な撤退戦が必要だと考えられますが、長い歴史を支えてきた事業ですので財務的な余力がある中では積極的な撤退戦をしていくのには障害が大きいかもしれません。

むしろ財務的にひっ迫してどうしようもなくなっていたりすると上手く撤退出来たりするんですね。

という事で製菓事業は定番商品も多いですし安定して利益を稼げるが、お茶菓子需要が減り業績の向上は難しそう、不採算な洋菓子事業は撤退がなかなか進まないと考えしばらくは利益が押し下げられた状況が続くことを予測します!!

とはいえ今回の赤字の要因は、新型コロナによる店舗休業の影響が大きかったですし、安定して利益を出せる製菓事業によって今後は黒字回復する可能性は高そうです。

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