AOKIホールディングスの決算から考える今後も全事業が厳しい話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社AOKIホールディングスです、紳士服の量販店であるAOKIやカラオケのコートダジュールの運営やブライダル事業を行ったり、最近ではネットカフェの快活クラブが急拡大している会社です。

さてこんなニュースがありました。

AOKIHD、初の最終赤字へ 21年3月期53億円
企業決算
2020/9/23 20:30
AOKIホールディングスは23日、2021年3月期の連結最終損益が53億円の赤字(前期は4億4700万円の黒字)になりそうだと発表した。これまでは未定としていた。1989年に東証2部に上場して以来、年間で初めて最終赤字となる。新型コロナウイルス感染防止のための店舗休業や短縮営業が響く。年間配当は23円(前期は46円)とする。

売上高は前期比16%減の1513億円、営業損益は20億円の赤字(前期は66億円の黒字)となる見通し。4~9月期は120億円を超える営業損失を見込むが、徐々に客足が回復すると見込んでいる。紳士服の値引き販売も増えており採算が悪化している。

結婚式の延期や中止が相次ぎ、ブライダル事業も苦戦。カラオケ店や複合カフェなども、新型コロナ感染を避けるため客数が落ち込んでいる。

あわせて、5~8月に代表取締役で30%減らすなどした役員報酬の減額を9月~21年3月まで続けるとも発表した。手元資金の確保を優先する。

どうやらAOKIは、新型コロナによる店舗休業や時短営業の影響もあり上場来初の最終赤字となる見通しを発表したようです。

紳士服、ブライダル、カラオケ、ネカフェと全て新型コロナの影響を受けていると考えられえる業態ですので、相当厳しい状況にいるようです。
そんなAOKIの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

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売上高は39.5%減の262億円、営業利益は2.2億円の黒字→75.6億円の赤字、純利益は2.8億円の赤字→64.2億円の赤字と大幅な減収減益となっている事が分かります。

やはり相当苦しそうな状況ですね、もう少し詳しく内訳を見ていきましょう。

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AOKIの事業セグメントは①ファッション②ブライダル③エンターテイメント(コートダジュールや快活クラブ)④不動産とある事が分かります。

それぞれの事業の業績の推移は
①ファッション:売上高241億円→165億円 利益3.9億円の赤字→29.4億円の赤字
②ブライダル:売上高55.8億円→25.3億円 利益3500万円の赤字→13.2億円の赤字
③エンターテイメント:売上高132億円→90億円 利益4.6億円の黒字→35.2億円の赤字
④不動産:売上高3.0億円→2.9億円 利益1.2億円の黒字→1.9億円の黒字
となっており小規模な不動産事業以外では業績が大きく悪化している事が分かります。

また、AOKIは前期の時点でファッション事業ではすでに利益を出せておらず人気の出ていた快活クラブなどのエンターテイメント事業に依存していたことが分かります。

ただしスーツなどの需要を考えればわかる通りで新年度前の3月に大きく売れる反動で、4~6月は需要が少ない時期だという事もあり通期ではファッションもまだまだ黒字の事業ではあります。

とはいえスーツは市場規模の縮小が続いていますし、新型コロナでテレワーク化が進んだことによって縮小のペースも早まったでしょうから、ファッション事業は厳しい状況が続きそうな事は間違いありません。

続いてはどうして各事業の業績の推移の理由を見ていきましょう。

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まず①ファッション事業ですが、こちらは店舗の休業や外出自粛の影響が大きかったようです。
続いて②ブライダルに関しても、結婚式の中止や延期の影響が多かったようです。

正直ブライダル系は結構きついはずで、コロナにかなり敏感な人は一定数いますから、本人たちが結婚式したいと思っていても「あの人呼んで嫌な思いする人(コロナに敏感な人)じゃないかな」とか考えながら結婚式をしたくはないはずです。

となると身内の小さい結婚式が増えるはずで、ブライダル事業としては利益が減ると考えられます。

③エンターテイメントに関しても休業と外出自粛の影響が大きかったようです。

まあ想像通りで、事業内容自体が新型コロナの影響を受けやすいものになっていたというのが業績の大幅な悪化となった要因のようです。

また小規模ではあるものの増益となっていた④不動産事業に関しては閉店店舗の賃貸を推し進めた事が影響していたようです。

先ほど見た通りで、ファッション事業は前期の時点で赤字でしたし今後は不採算店舗を閉鎖して賃貸に回していくケースが増えていきそうですね。

続いてこちらの資料をご覧ください

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業績が大幅に悪化しているAOKIですが、売上総利益率を計算してみると39.7%→23.0%へと大場に悪化している事が分かります。

売上の減少だけではなく利益率まで悪化していたことが大幅に業績悪化した大きな要因だという事です。

ではどうしてこれだけ売上総利益率が悪化してしまったのでしょうか?

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それはAOKIの事業内容を考えてもらうと分かりますが、リアルな店舗が多く固定費が大きいからだと分かります。
これだけ業績が悪化しながらも、エンターテイメント事業では人件費は前期比で97.1%賃借料は95.8%とほとんど変化していないことが分かります。

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またこちらの資料からも分かる通りで快活クラブの出店はまだまだ進めていますから、それに伴い減価償却費に関しては増加している事が分かりますね。

ネットカフェやカラオケなどは、営業していればかかるコストにはそれほど大きな影響がありません、例えばカラオケで30室中5室が稼働している状況と25室が稼働している状況でもコストに大きな変化がない事は想像できますよね。

逆に稼働率を上げれば上げるほど利益率も上がっていくビジネスですから、今後は客足がどれくらい回復してくるかが重要だという事ですね。

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しかし快活クラブの客足は6月時点では戻ってきていないことが分かります、他の業界を見ても7月8月で6月と比べ客足が大きく戻った業界はありませんので厳しい状況が続いていると考えたほうがよさそうです。

そして個人的には快活クラブのようなネットカフェ系は中長期的にもきついと思っています。

快活CLUBなどは個室化やブースを広くしていく事で、宿泊客を増やして収益を上げていましたが、GoToトラベルや外国人観光客の減少によってホテルが安く泊まれるようになっているため、ネットカフェの宿泊需要が減っていくと考えられるからです。

国内旅行の需要は戻り始めていますが、外国人観光客はいないため、まだまだホテルは以前より安くて都内でも3.4000円のネカフェとほとんど変わらない価格水準のビジネスホテルが普通にあります、外国人観光客はしばらく戻ってきそうに無いのでこの状況はしばらく続きそうです。

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また、ファッションに関しては6月には客数は前期比で13.9%増まで伸びたものの客単価が17.1%減と単価の下落が業績の悪化にも結び付いている事が分かります。

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ではどうして単価が落ち込んでしまったのかといえば、スーツやコートなどの重衣料が前期比57.3%となっており他のジャンルの前期比7割程度より明らかに落ち込みが大きい事が原因だと分かります。

AOKIは顧客としては年齢層が高くECなどとは相性が悪いでしょうから、緊急事態宣言後に普段着として使われているその他のジャンルの購入のために客足が戻ったものの、テレワーク化などでスーツの需要が減った事と、経済の停滞を意識してスーツなど高価なものにはコストを割きたくないという事もあったと考えられますね。

高収益の重衣料がまだまだ戻りそうにないという事からも、業績の悪化が続きそうです。

続いてこちらの資料をご覧下さい。

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また先ほども見た通りでAOKIは、今後も厳しい可能性のある快活CLUBの出店を進めており26店舗増加している事が分かります。

業績悪化の中でこれだけ出店していますが財務状況はどうなっているのでしょうか。

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現預金や売掛金といった手元資金は411億円ほどあり、流動資産は736億円ほどある事が分かります。

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一方流動負債は468億円ですので、資金的には余裕がある事が分かります。

しかし業績不振と積極的な出店によって短期借入金は140億円増加し、長期借入金も90億円ほど増加している事が分かります。

今は好立地の店舗を借りることができる時期でもありますので、そういった所への出店で上手く利益を出しいけるのであれば問題は無さそうですが、そうでなければ借入の負担が大きくなっていくでしょうからその点は注意が必要そうです。

という事で、AOKIのファッション事業は季節的な要因もあるとはいえ前期から赤字でしたし、今後も市場自体が縮小していくので厳しそうだという事と、ブライダル事業に関しても身内のみの結婚式が増えて業績悪化が続きそうだという事、さらにエンターテイメント事業では快活クラブは宿泊需要の減少が影響して業績の悪化が続き、出店による借り入れ負担が大きくなっていくと考え、長期的な業績の悪化を予測します!!

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