コカ・コーラの決算から考える900人もの早期退職実施の理由と今後の黒字化の可能性

どうもコージです!
私は毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのはコカ・コーラ・ボトラーズジャパンホールディングスです。

コカ・コーラはボトラー制度を取っていてアメリカの本社が作った原液を、日本のボトラーと呼ばれる会社が飲料にして販売するという形態を取っています。

ボトラーはもともとは結構な数があったのですが近年は統合が進んでいて、このコカ・コーラボトラーズジャパンはボトラーの中でも圧倒的な規模を持つ会社です。

さて、こんなニュースがありました。

コカ・コーラが早期退職 年内に900人
2020年10月05日20時12分
 コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは5日、早期退職を実施すると発表した。グループの約900人を想定しており、12月末までに退職する。同社は「新型コロナウイルスの影響ではなく、事業構造改革の一環だ」(広報担当者)と説明している。

 グループ会社に在籍する勤続1年以上の正社員で、組織変更などにより異動となる人が対象。対象者に異動を受け入れるか退職するかを選んでもらう。順次打診を進めており、一部は既に退職しているという。
 退職者には特別退職加算金を支給するほか、再就職を支援する。これに伴う費用として、2020年7~9月期連結決算に計76億円を計上する。

どうやらコカ・コーラは900人もの早期退職を実施するようです。
それも最近増えていた希望退職を募集するという形ではなく、異動を受け入れるか退職するかを選んでもらうという事でまぁリストラですね。

日本企業の多くは内部留保を貯めてきましたから、現時点では余力があるのでリストラではなく希望退職の募集という形の会社が多かったですが、そうではないという事でかなり厳しい状況にいそうです。

今回はそんなコカ・コーラの今後と早期退職を行う理由について考えて行きましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

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売上高は10.8%減の3866億円、営業利益は654億円の赤字→131億円の赤字、純利益は645億円の赤字→64.6億円の赤字と赤字幅は縮小していますが、前期から大きな赤字で今期も赤字継続と厳しい状況にある事が分かります。

続いてこちらの資料をご覧ください。

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コカ・コーラの事業セグメントは①飲料事業②ヘルスケア・スキンケアセグメントと2つある事が分かります。

それぞれの事業の業績の推移は
①飲料事業:売上高4214.0億円→3745.9億円 利益670.5億円の赤字→149.3億円の赤字
②ヘルスケア・スキンケア事業:売上高123.0億円→120.8億円 利益16.0億円→18.2億円

となっており②ヘルスケア・スキンケア事業は事業規模が小さいく大半を①飲料事業飲料事業がしめている事が分かります。

なので今回は飲料事業に絞って見ていきましょう。

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飲料事業がどうして不調だったのかというとアルコール飲料の檸檬堂などの好調を要因として2月までは好調だったようですが、3月以降は新型コロナの影響を受けて業績が悪化したようです。

とくに、学校の休校や在宅勤務の増加によって自動販売機の売上が減少した事と飲食店向けの販売が減少した事が大きいようです。

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その結果、缶やS-PET(小さいペットボトル)の売上げが10%以上減少しL-PET(大きいペットボトル)の売上が3%増となっている事が分かります。

巣籠りによって、自動販売機やコンビニなどで缶や小さいサイズのペットボトルを飲むのでは無く、スーパーで大きいサイズのペットボトルを買って飲む方に移行したという事ですね。

同じ量を飲むのであれば、当然缶や小さいペットボトルで売れたほうが当然売上が大きくなりますのでそれで売上が大きく減少したと考えられます。

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また、カテゴリー別で見ると全体的に売上が減少してしまっているのですが、その中でもスポーツ飲料の減少が他と比べ大きい事が分かります。

これは部活動やジムなのでの運動が自粛されていた影響が大きそうです。

さらに果汁ジュースの売上げも大きく減少している事が分かります。
これに関してはなぜなのかは分かりませんが、果汁ジュースは単価が高く少量の販売が多いので、買い物に行く回数を減らす中で2Lなどの量の多い飲料が優先され、少量の飲料は買い控えがあったのかもしれません。

色々な活動が再開されていってますので、自動販売機の売上などは戻る事である程度売上は回復しそうです。

しかし活動再開も100%ではないですし、テレワーク化などの長期化要因もありますので急回復とはならなそうですね。

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また、今期は売上は減少しつつも赤字幅は縮小していたわけですが、それは前期に減損を618億円ほど計上していた事が要因だと分かります。
つまり一時費用が無くなっただけで利益率が良くなった訳では無いということです。

さらに、その他の費用というのも前期は89.6億円で今期は75.7億円と高額になっている事が分かります。

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では、その他の費用とは何なのかというと前期の分は希望退職による特別退職加算金だと分かります。

実は前期の時点ですでに希望退職の募集をしていたようです。
その際は700人の募集に対して950人の応募があったようですので、社内ではすでに相当苦しいという空気感があったのかもしれません。

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実際に今期の利益のプラス要因として人件費の削減を中心として99億円ほどコストカットを上げていますので、前期の早期退職による人件費の減少も影響していると考えられます。

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しかしそれでも赤字継続と厳しい中で、今後はさらにコスト削減を進めていこうとしている事が分かります。
その一環が早期退職の実施ですね。

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これは8月上旬の決算発表時の資料なのですが、夏の最盛期のビジネスを注視するとしています。

飲料の最盛期はもちろん暑い夏なわけです、となると今回早期退職を行う理由として考えられるのは、新型コロナの影響もあり業績の悪化が続く中で最盛期となる夏の業績が厳しかったという事で耐え切れなくなったという事でしょう。

8月は新型コロナの感染者増加の報道が増えて自粛ムードが高まっていた時期ですので、その時期の売上げ特に先程見たように飲食店向けや自動販売機での販売が厳しかった事は想像できますよね。

最近ではようやく自粛ムードはなくなってきましたが、このように自粛が起きると観光業など分かりやすい業界だけでなく様々な業界で悪影響が出るという事で経済活動を止める事の難しさが分かりますね。

また、先ほどのコスト削減の資料によると残業代の削減や賞与の削減など、早期退職だけでなく人件費を大分削るとしている事が分かります。
そうなると残る社員のモチベーション低下が起きていそうです。

特に前期の希望退職の募集700人に対して950人の応募が集まるという事は、社内の士気は既に下がってしまっていると考えられますので長期的には業績に悪影響があるのではないでしょうか。

とはいえコカ・コーラの強みも相当あると思っていて、極端な話コカ・コーラほどの強いブランドであれば何もしなくても定番商品は売れます。

なのでコストを大幅に削減したとしても、社員の士気が下がっていたとしても一定の売上げは確保できるはずです。

となるとコストカットを進めれば黒字化も見えてくるのではないでしょうか。

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10月5日にコカ・コーラの発表した今期の業績予測では最終的に営業利益は97億円の赤字となる見通しのようです。
現在の赤字が131億円ですから、今後は黒字化して業績が回復する見通しを立てていると分かりますね。

という事でコカ・コーラはそのブランド力の高さから、定番商品は安定して売れるので人件費を中心とした大規模なコストカットによって黒字化していく事を予測します。

ただし社内の士気低下などの問題で長期的には悪影響が出る事も予測します!!

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