エイベックスの決算から考える100名の早期退職募集の理由

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのはエイベックス株式会社です。
音楽事業レーベルとして非常に有名な企業ですよね。

さてこんなニュースがありました。

エイベックス、希望退職 40歳以上対象に100人
2020/11/6付日本経済新聞 朝刊
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エイベックスは5日、音楽事業の一部などで働く40歳以上の社員を対象に、12月中に100人程度の希望退職を募ると発表した。希望退職の募集は初めてで、募集人数は対象者の約2割に相当する。音楽CD販売などが落ち込んでいるうえ、コロナ禍で大規模ライブなどが開催できず、収益が悪化しているためだ。

どうやらエイベックスは音楽事業で働く40歳以上の社員を対象に100名ほどの希望退職の募集を行うようです。

今回はどうしてエイベックスは希望退職の募集を行うのか、今後はどうなっていくのかについて考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

売上高は44%減の342億円、営業利益は6.8億円の赤字→22.2億円の赤字、純利益は17.6億円の赤字→32.8億円の赤字となっており大幅な減収で赤字も拡大という状況になっている事が分かります。
また、前期から赤字という事でエイベックスの事業が厳しい事も分かります。

新型コロナの影響でライブの中止などがありましたのでその影響を受けてしまっていると考えられます。

また、売上が大幅に減少する一方でコストカットも積極的に進めているようで販管費は合計で37.7億円ほど減らしていることが分かります。

しかしそれでは、まかないきれず15億円の赤字となってしまっていますので、今回の早期退職でさらにコストカットを進めたいという事でしょう。

続いてもう少し詳しく業績を見ていきましょう。

エイベックスの事業セグメントは①音楽事業②アニメ・映像事業③デジタル・プラットフォーム事業(dTVの運営など)と3つある事が分かります。

それぞれの事業の業績の推移は
①音楽事業:売上 439億円→184億円(58%減) 利益21億円の赤字→22億円の赤字
②アニメ・映像事業:売上 65億円→48億円(26%減) 利益2億円→1億円
③デジタルプラットフォーム事業:売上 171億円→118億円(31%減) 利益18億円→8億円(53.7%減)
となっており全ての事業で業績が大きく悪化している事が分かります。

エイベックスといえば音楽事業というイメージでしたが、前期の時点ですでに大きな赤字事業だというのは驚きですね。

各事業の業績の推移についてもう少し詳しく見ていきましょう。

まず音楽事業ですがこちらはライブやイベントの開催自粛の影響や音楽パッケージ作品(CDなど)の販売数の減少によって減収となったとしています。

一方でコストカットで営業利益ベースでは21.7億円の赤字→22.1億円の赤字と横ばいを維持したようです。
また、ライブ売上が大きく減少していますが売上総利益率に関しては22.9%→33.7%へと大きく増加しています。
販管費に関してもライブを行わなければ、広告費などを中心にかかるコストが減るのは当然でしょう、となるとそれによって利益が横ばいになるという事は、そもそも音楽事業のライブやイベントは、行っても利益が出ない不採算となっていた可能性があります。

ライブでファンを増やして、パッケージ販売や配信だったりアーティストの人気を出すための未来への投資として行っていたという事が考えられます。

なのでライブやイベントが無くなったとしても短期的な利益面では大きな影響は無いかもしれません。

また音楽事業の売上げを見てみると、音楽パッケージ(CDなど)は44%減で音楽配信も2.6%減となっている事が分かります。

音楽パッケージに関しては市場も縮小していますし、新型コロナでリアルな店舗の活動が止まってしまったと考えられますが、音楽配信に関してはコロナによって市場が好調となった分野の1つですよね。

実際に業界の環境として、音楽ソフト(パッケージ)の需要は20.8%減で、配信に関しては11.0%市場が伸びたとしています。

という事は、エイベックスの音楽パッケージ44%減、音楽配信の2.6%減というのは市場の推移に対して明らかに下回ってしまっています。

所属するアーティストの人気自体が落ちてしまっていると考えられますね。
ライブ事業が不調だったこともアーティストの集客力が減っているという事も理由だと考えられるでしょう。

となると業績の悪化は新型コロナというだけではなく長期化すると考えたほうがよさそうです。

続いてアニメ・映像事業に関してはイベント関連の売上やアニメ・映像パッケージ作品販売数が減少した事により減収減益となったとしています。

アニメのノンパッケージ(ネット配信など)に関しても24.1%と大きく悪化している事が分かります。

ノンパッケージに関しては市場が伸びていたはずですので、こちらも音楽事業と同様でコンテンツの価値自体が減少してしまっていたと考えられます。

そうなるとこの事業も業績の悪化が長期化すると考えたほうがいいでしょう。

続いてデジタルプラットフォーム事業に関してですが、映像配信(dTVなど)、Eコマース、ファンクラブと主要なサブセグメント全てで業績が悪化してしまっている事が分かります。

ファンクラブ会員に関しては前年同期比で7.4万人減少して、82.6万人となっています。
ここからもアーティストの人気が減っている可能性が見えてきますね。

またファンクラブからの収入というのは利益率が高いはずですのでそうなると利益面での悪影響も大きそうです。

またEコマース、映像配信に関してはこちらも新型コロナによって市場自体は伸びています。
それでも業績が悪化しているというのはこちらの事業でもサービスの価値が減少してしまっていると考えられます。

たしかに映像配信で、dTVというのは他の映像配信大手に比べて存在感が非常に薄いですよね。

可処分時間の奪い合いに限界が来ていると言われている中で、今後ユーザーを増やすためにはオリジナルコンテンツは重要です。

しかしネットフリックスやディズニーなどが巨額な投資をしてハイクオリティなオリジナルコンテンツを作っていく中で、dTVのオリジナルコンテンツで可処分時間を奪うのは難しそうですね。

という事でエイベックスは音楽事業では音楽配信、アニメ・映像事業でも配信の売上、デジタルプラットフォーム事業でも映像配信、Eコマースといった市場が伸びている事業で業績が悪化しています。

なのでそもそものエイベックスの提供するサービスの価値自体が全ての事業で減少してしまっていると考えられますので、業績の悪化は新型コロナの影響というだけではないという事で、業績不信は長期化しそうだと予測します。

また、このように業績不信が新型コロナの影響だけではなく、業績回復が期待出来ないという事が早期退職に動く理由だと考えられます。

今後は新たな人気アーティストなどを出せるかに注目です。
しかしテレビの衰退とネット移行で芸能事務所の価値が減少しているように、音楽業界もストリーミングや配信が中心になり、プロモーションもネットで完結できるようになっていく中で、既存の音楽レーベルの価値も減っていく可能性があり、そういった中で人気アーティストを獲得する難易度も上がっていそうです。

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