航空会社の不調が中小企業にも影響がでる理由

どうもコージです! 私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。 そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回は決算ではなく、航空会社の不調が中小企業の経営にも影響を与える可能性がある話をしようと思います。

早速ですがこんなニュースがありました。

バークシャー、米4大航空会社の株式全て売却-バフェット氏明かす

米資産家で著名投資家のウォーレン・バフェット氏は2日、自身の率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが、保有していたデルタ航空とサウスウエスト航空、アメリカン航空グループ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスの株式を全て手放したことを明らかにした。
  バークシャーは4月に計65億ドル(約6950億円)相当の株式を手放したが、その大半がこれら米4大航空会社のものだった。バフェット氏は過去にUSエアウェイズ(当時)への投資で痛手を負った後、業界への投資を控える意向を示したが、2016年に再び株式保有に動いた経緯がある。

  バフェット氏はライブ配信された年次株主総会で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の経済的影響により、航空事業が根本的に変容したと指摘。航空各社の経営幹部が危機を乗り越えるため首尾良く資金を調達したとして、各社経営陣の仕事ぶりを非難するのは避けた。
  バフェット氏は「これは私のミスだ」と語り、自身が決定を下し、投資で損失を被ったと説明した。バークシャーは4月、デルタ航空とサウスウエスト航空の株式の保有を少なくとも減らしたことを明らかにしていた。

投資の神様とも呼ばれているウォーレン・バフェット氏の経営しているバークシャーは航空会社の株式を全て売却したようで、航空事業が根本的に変容したと話しています。

確かに、オンラインでの会議や商談などが受容される社会になりましたので、今後出張需要などが戻るとは考えにくいでしょうし、新型コロナ以前からSDGs的な流れで航空機の利用を抑えようという話も出ていましたよね。
ソーシャルディスタンス的に言えば、エコノミークラスなどは変更が必要になる可能性もあり、そうなれば搭乗できる人数が減ってしまい収益性が低下してしまう可能性もあります。

また新型コロナの影響によって、全世界的に航空機需要が大きく減少した事により、航空会社の資金繰りは大変厳しい状況にあるところが多いです。
例えば日本国内でも、ANAは1.3兆円にものぼる融資を要請しています。

ではなぜ、資金繰りが厳しくなるのかというとスタッフや設備の維持費などにコストがかかるという事もありますが、大きな要因として航空機のリース料支払いがあります。

航空機はめちゃくちゃ高いわけです、平気で数十億~100億円以上しますからそれを何十機、何百機と一つの航空会社が買う事はなかなか難しいです。
そこで航空機をリース(借りる)するケースが非常に多いわけです。
そうすれば毎期の支払いは、飛行機を運用した収益でまかなえますよね。

ではリース先(貸手)で航空機を買っているのは誰でしょうか?

じつはここに、日本の中小企業の資金が使われています。

中小企業の資金が使われているとはどういうことなのでしょうか?

それは、日本の中小企業の社長が大好きな節税商品に使われているのです。
航空機のオペレーティングリースという、節税商品という名の課税の繰り延べ商品です。

その仕組みは、匿名出資組合という航空機を買ってリースするための組合を設立し、そこに中小企業などが出資します、すると減価償却によって初年度は大赤字を計上する事で税金の支払いを減らせるという仕組みです。

例えば10億円の航空機のリース料は年間1億円の収益で10年契約だったとしても、減価償却初年度8億円だったりするので7億円の赤字を計上できます。

それによって出資企業も、出資割合に比例した赤字を受け取る事になりますのでそれによって税金の支払いが減るという事です。
例えば、利益が1億円の会社が、10%出資していれば7億円の赤字のうち10%の7000万円の赤字を計上できますので利益が3000万円になり税金の支払いが減るという事です。

ただしこれは、本質的に税金の支払いを減らせたわけではありません。
先ほどの例で言えば、初年度の減価償却が8億円になるという事はその後9年間で減価償却は2億円、リース料の受け取りが9億円になりますので7億円の利益が出てしまいますので、トータルでの税金の支払いはプラマイゼロになります。(この辺は航空機の売却などを通じて多少利回りが出るように設計されていたりしますが、面倒なので忘れてください)

つまり、目の前の年度の税金の支払いを減らしているだけで、将来的には税金の支払い額が増えてしまいますので課税を先延ばしにしているだけの商品だという事です、しかも出資額の回収に10年かかるのでキャッシュフロー的にも得していません、出資期間中お金が手元から出ていくという事です。

ですが多くの中小企業の経営者は、節税で得していると思いながらこういった商品に出資していて、その数は相当数います。

そして新型コロナの影響で、あまり経済が強い国ではない航空会社は、航空機のリース料の支払いが難しくなり支払いのリスケ要請を始めているという話があります。

今後も航空業界自体が変革してしまい倒産する企業が出てくると多くの中小企業は出資の回収が出来ずに損失を出してしまうという事です。

航空業界なんて、自分とは関係ない遠い世界の話のように感じられている方も多いかもしれませんが、オペレーティングリースを通じて中小企業の経営に影響が出始める可能性があるのです。

そもそも節税商品とよばれているものの多くは、このようにリスクを抱えながら課税を繰延(先延ばし)しているだけの商品にすぎませんからそもそも価値がないと思っていますが、これだけ不確実性の高まった時代にはさらに価値が下がっているはずですので節税商品は要注意です。

また、航空機のオペレーティングリースは最終的に航空機を売却して資金を回収する仕組みになっているのですが、ここで売却できなかったときのために保険をかけているケースがありますので、もしかすると保険会社にも大きなダメージを与えることになる可能性もあり、そうなると社会的なダメージは深刻でしょうからそこも要注意です。

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