シャープの決算から考える下方修正の起こる可能性

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのはシャープ株式会社です。
日本の家電メーカーの大手企業で、近年では業績不振から台湾企業の鴻海の子会社となってしまった企業ですね。

家電量販店は新型コロナが追い風となった業界の1つです、巣籠りによって家電の見直しが行われたり10万円の給付金によって家電を買った方も多かったようです。

そんな中で好調となっている可能性もあるシャープの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

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売上高は1.9%増の1兆1421億円、営業利益は25.3%減の275億円、純利益は17.8%減の225億円となっており増収減益となっている事が分かります。

コロナ禍でも家電量販店の売り上げなどは伸びていましたのでシャープの売上も増加したと考えられます。
しかしその一方で減益という形になってしまったようです。

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ではどうして減益となってしまったのかというと、営業利益の悪化要因としては、基本的には新型コロナの影響による一時的要因で100億円の悪影響があったためのようで新型コロナの影響を除くと62億円の増益だとしています。

また、売価のダウンで93億円ほど悪影響がありそれをコストダウンの59億円と販売増加による76億円でまかなっているようですので、シャープ製品では低価格化と原価の削減が進んでいるようです。

家電量販店の業績の伸びと比較すると売上の伸びが小さいようでしたが、それには、製品の低価格化が関係しているのかもしれません。

それではもう少し詳しく業績を見ていきましょう。

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まずシャープの事業セグメントは①スマートライフ(白物家電など)②8Kエコシステム(テレビや複合機など)③ICT(モバイル端末など情報通信系)と3つある事が分かります。

それぞれの事業の直近の第2四半期の業績の推移は
①スマートライフ:売上2259億円(3.4%減) 利益161億円(30.3%増)
②8Kエコシステム:売上3446億円(10.5%増) 利益50億円(54%減)
③ICT:売上821億円(1.1%減) 利益32億円(13.4%減)

となっており①スマートライフでは減収増益、8Kエコシステムでは増収減益となかなかややこしい状況になっているようです。

続いてはどうして各事業がこのように推移したのか見ていきましょう。

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スマートライフ事業では売上が減少しているにもかかわらず利益は大きく伸びていたわけですが、それには各事業の原価力の向上と白物家電の高付加価値化があったとしています。

今期に関しては10万円の給付がありましたのでそれによって、ちょっと高めの高付加価値、の白物家電などが売れていた可能性がありそうです。
となるとそれが無くなる、今後に関しては高付加価値商品が売れていくかは分かりませんし、給付金によって未来の需要を先取りしているだけの可能性もあります。

となると、今後の売上げに関しては減少していく可能性が高そうですし単価に関しても下落していきそうですので利益率の悪化が考えられます。
しかし原価力が向上している部分に関しては企業努力の賜物でしょうから、ある程度の売上の減少と単価の下落があったとしても利益面ではある程度堅調な業績が続きそうです。

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続いて8Kエコシステムに関してはテレビの売上高が増加し、PC・タブレット向けやスマホ向けのパネルも伸長したようです。
一方で車載向けディスプレイやMFP(複合機)では売上が減少したようです。

テレビに関しては売上の増加の他に原価力の向上もあったという事で、他の白物家電同様に売上は今後落ち着いていくかもしれませんが原価力の向上によって、利益面では堅調に推移しそうです。

また、車載向けに関しては北米の自動車売上が回復してきているというニュースもありましたので、今後は業績の回復が起きると見て間違いないでしょう。

ただし長期的に見れば、自動運転とともに自動車の稼働率が上がり必要な自動車の台数が減っていくと言われていますので、徐々に業績は悪化していく可能性が高そうです。

複合機に関してはプリントボリュームの減少によっても減益となったようです、複合機のビジネスモデルはいわゆる替え刃モデルというやつで、本体をリースなどで安く提供して、インクなどの消耗品の販売で儲けるというものなので印刷量が減ってしまうと業績が悪化してしまうという訳です。

オフィスで働く方もどんどん戻ってきていますので、業績の回復が進むのは間違いなそうですが、テレワークの常態化やペーパレス化が進んでいく事も間違いなので元の水準までの回復はしそうにありませんし、長期的にみても市場が縮小していく訳ですから以前の水準から考えると複合機の業績の悪化は続きそうです。

また、テレビなどは好調にもかかわらず大きな減益となっている事からも分かるように車載向けや複合機の事業規模が大きく、業績に与える影響が大きいと考えられます。

となるとこの8Kエコシステム事業では、短期的には車載向けも複合機も需要が回復し業績は好調に推移ですが、長期目線で見ると市場縮小による業績の悪化は進みそうです。

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またICT(モバイル端末など)ではスマホのモデルミックス(売るモデルの価格帯)の変化を減益の要因と上げている事が分かります。

通信業界を見てみても格安Simなどで通信料の単価も下がっていますが、実はそれとともに端末の単価も下落が続いています。

特に最近はスマホ料金の値下げが話題になる事も多く、スマホ代は下げたほうがいいというイメージになってきている可能性もありそうです。
少し前は高くても新型のiPhoneを持っているとかっこいいといったように、ある程度スマホにはコストをかける事も容認する空気感でしたが、今後は世間の空気感的にも、「まだ高いスマホ代払ってるの?」的な感じで低価格化が進みそうですね。

とはいえアップルぐらいのコアなファンを抱えていれば高単価でも売れるのでしょうが、シャープのAQUOSなどでは高単価でモバイル端末を売るというのは難しくなっていきそうです。

なのでICT事業に関しても単価の下落によって業績が大きく伸びるというのは難しそうですね。

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また今後の見通しとしては前回予想を据え置き売上は前年比で3.5%増、営業利益では55.4%増、純利益では2.4倍となるような業績回復を見込んでいるようで、下期には大きな業績の伸びを見込んでいるようです。

確かに車載向けや複合機など、現在と比べれば業績が回復していきそうな事業も多いので下期には業績が伸びると見て間違いないでしょう。

しかし今回の決算では新型コロナの影響があるとはいえ増収減益だったように、売価の低下から利益率の悪化が起きていたわけです。

今回はそれを販売数の増加でまかなえていましたが、それには10万円の給付金の影響が大きい可能性がありますし、先ほど見たようにスマートライフ事業やICT事業では単価の下落と利益率の悪化起きる可能性もあります。

となると利益面でそれほど大きく伸びるかという点には疑問符が付きますので、個人的には今後は利益面での下方修正が起きるのでは無いかと考えています。

という事でスマートライフ事業では、原価力の向上により堅調に利益を出せそうだが、給付金の影響が無くなる事で売上や単価の下落による利益率の悪化が起きそう
8Kエコシステム事業では、車載向けや複合機では業績の回復が起きるので好調に推移しそうだが長期的には市場が縮小し業績も悪化しそう
ICT事業では単価の下落によって大きく業績が伸びる事はなさそうだと考え、8Kエコシステム事業など明らかに業績が伸びる事業があるので、下期の業績は伸びるが会社見通しには届かないことを予測します!!

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