なぜ人はゲームにハマるのか?
ゲーム性とは何か
『なぜ人はゲームにハマるのか? 開発現場から得た「ゲーム性」の本質』という本を読みました。
本書の最初に「ゲームの定義」が紹介されており、ゲーム研究の先駆者であるイェスパー・ユールという人が定義した「ゲームの条件6項目」が紹介されています。
その6項目は簡単に言うと、
「ルール」「ハンデ」「スコア」「努力」「感情」「現実への影響」です。
ルール:いかにプレイするかについて明確な法則があるか
ハンデ:格闘ゲームなどにおけるハンディキャップ設定
スコア:ポイント、得点にあたるもの
努力:プレイヤーが時間を投じて技能を高めることで、プレイ結果に変化が生じるかどうか
感情:ゲームの勝敗にプレイヤーが一喜一憂できるかどうか
現実への影響:例えば、じゃんけんに勝った方がケーキを食べられる、みたいなこと
上記の定義に「テトリス」が当てはまるか考える
ルール:テトリスのルールは単純明快です。
ハンデ:時間経過によってブロックの落ちる速度が上昇するのは、上手なプレイヤーに対するハンデと一応言えなくもないです。
スコア:ほとんどのテトリスにはポイントがあり、消したブロックに応じてポイントが加算される仕組みになっていると思います。
努力:本人の努力によってプレイスイルを高めることが可能です。
感情:世界中で愛されるロングセラーゲームですから、楽しいと思う人はたくさんいるでしょう。
現実への影響:例えばテトリスに夢中になり過ぎて夜更かししてしまった、とかはあるかもしれませんが、テトリスでどれくらいブロックを消せたかどうかが現実世界に影響を与えることは基本ありません。
勝敗が現実に影響を与えないゲームは「時間の無駄」?
テトリスに限らずほとんどのゲームは、プレイの結果や勝敗が現実の人生に直接影響を与えることはありません(先述のように、勝った方がケーキを食べられる、等の約束をしていれば別ですが)。
ゲームは「時間の無駄」と他者から批判されることがあります。それは「現実の人生に何の影響も与えない」というゲームの性質が関係しているのかもしれません。
しかし、勝敗が現実に影響を与えれば良いというわけではない
ということは、勝敗が現実に影響を与えるゲームなら、無駄な行為だと嫌味を言われることはないのでしょうか?
どうもそう簡単な話ではないようです。
勝敗が現実に影響を与えるゲームの代表的なものは、パチンコや競馬などのギャンブルです。
他には、スポンサーが付いて賞金が出るeスポーツもあります。
eスポーツは、イェスパー・ユールが定義したゲーム6項目に全て当てはまるという意味では、最もゲームに近いと言えます。
しかし、eスポーツは競技であり、人によっては仕事であるため、逆に遊びの性質からは遠のいているように思えます。
現実に影響を与えるかどうかは多分あんまり関係ない
6番の「現実への影響」は個人的に疑問があり、3番の「スコア」と5番の「感情」の延長だと私は思います。
例えばパチンコの場合、2万勝ったとか5万負けたとか、財布の中身が変化するから面白いのでしょうか?
パチンコの後の財布の中身を眺めることを楽しんでいるのでしょうか?
おそらく違うはずです。
おそらく、何万負けたとか勝ったといった、現実のお金そのものは割とどうでもいいのだと思います。
金額はあくまでスコア的なものでしかない。
パチンコをやる人は、台を打っている時の臨場感だったり、当たりの流れが来てる時の高揚感だったり、脳汁がいっぱい出る感覚だったり、負けた時の虚無すら楽しんでるのだと思います。虚無は楽しんでないかもしれませんが
ゲームを定義することは非常に難しい
プレイヤーの努力が全く影響しない、運のみに依存したものはゲームと呼べるでしょうか?
例えばすごろくなどがそうですが、これは多くの人がゲームと認めると思います。
では選択肢が数パターンしかないような、非常にシンプルな作りのノベルゲームはゲームと言えるでしょうか?
「どうぶつの森シリーズ」はゲームと定義できるでしょうか?
ゲームだけどゲームじゃないような、何だかよく分からなくなってきます。
ゲームと非ゲームの境界は曖昧で、ゲームを定義することは容易ではありません。
本書は心理学の本ではない
私が今回読んだ本は、人がゲームにはまる心理を紐解いた心理学の本、ではありません。
じゃあどういう本なのかというと、大学教授(映像学部)である著者がプレイしたゲームを広く浅く紹介し、それが何で面白いと感じたかを著者なりに分析した本、という感じになります。
ゲームが面白いものであることはわざわざ説明されなくてもみんな知っているので、本書を読むと「一体何が言いたいんだろう?」という気持ちになります。
タイトルに釣られて買うと、求めていたものと違ったという感想を抱く可能性が高いです。
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