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「あなたたちはもう私たちの家族です」

日本の子どもたち6人を連れて行ったバリ島スタディーツアーの最終日、施設長から参加者の子たちへ届けられた言葉。この言葉がすごく嬉しくて、嬉しくて、帰国から10日間ほど経つのに、旅の余韻に浸っています。

1年ぶりの再会に涙

今回お世話になったバリ島の施設は、僕が昨年訪問させていただいた場所。ここで過ごした3週間は、とてもシンプルなものでした。ゆったりとした時間の中で現地の子どもたちと共に食事をとり、遊び、学ぶ。子どもたちが僕を特別視せずに一人の家族として受け入れてくれたような気がして、ここにまた戻ってきたいと心から思いました。 “I’ll come back here with Japanese students.” と、さよならをしてから1年以上の間、現地の子どもたちから「いつ戻ってくるの?」という連絡が途絶えたことはありませんでした。

だから現地の施設に到着して、僕の姿を見つけると泣いて抱きついてきた男の子もいました。彼は1年間何度も僕とメッセージのやり取りをし、時にはビデオコールもしました。だから彼も嬉し涙、僕も嬉し涙のもらい泣きです。

一年ぶりに再会した瞬間に泣き出してしまった。僕も嬉しかった。

この施設には、11つの家があり、現地の子どもたちは一つの家に5、6人ずつ生活をしています。参加者の子どもたちは毎日異なる家で食事をとること、そして昼食と夕食の間に料理やブレスレット作りなどのアクティビティーに参加することは決まっているのですが、他は予定がありません。何をしても自由で、現地の子どもたちとサッカーをやったり、家の前で話したり、日本から持ってきた折り紙で遊んでもいい。もちろん、疲れているならば二度寝や昼寝もしても構いません。最初は「自由時間がありすぎて困る」と言っていた子どもたちも、現地の子と仲良くなると、最終日には「もっと自由な時間が欲しかった」「もっと話したかった」と言っていました。

初日の昼食。あまりにも大歓迎されて、思わずニヤついてしまう。

子どもたちの目の色が変わる瞬間

ツアーを主催していると、その旅の中「子どもたちの目の色が変わる瞬間」に出会うことがあります。この旅では、現地の子がココナッツを採ってくれた瞬間でした。

みんなでサッカーをやった後に、喉の渇きを潤すために、現地の子が木に登り始めました。木の高さは10メートルほどで、木は地面と垂直に生えていて、落ちたら大怪我をしてしまいます。しかし、彼らは施設のスタッフに許可をとることもなく、10メートルほどの木に易々と登り、7つのココナッツの実を採ってくれました。ココナッツを割ってもらい、飲んだ瞬間に参加者の子どもたちの顔が変わりました。その美味しさはもちろん「自由にフルーツを採っていいんだ」「ここでは何をしてもいいんだ」と解放された気持ちになったのです。

そこから、各自の中で「やりたい」という気持ちが生まれ、自由な時間を求めるようになりました。好きなことを好きなようにする彼らの表情は小さい子どものようです。話すのが好きな子は施設内を歩き回り、現地の子に声をかけ嬉しそうに話しています。話すのが得意ではない子は現地の子と共に黙々と折り紙を折っています。ココナッツに夢中になってしまった子は、施設内を歩き回り、良いココナッツを見つけたら自分で木に登って採り、木に打ちつけて割って飲む。気がついたら彼は現地の子から「ココナッツボーイ」と名付けられていました。

施設を徘徊しながら良いココナッツを見つけた「ココナッツボーイ」

学ぶことは「優しさ」を身につけること

スタディーツアーに参加したら何かが劇的に変わるわけではありません。もちろん、慣れない土地で親なしで過ごして自信がつくことはあるようですが、性格が急に変わったり、大きな成長があることはないし、それに期待してはいけません。しかし、今回参加した子の保護者の方が写真や動画を見て「幼稚園の時の笑顔のようです」「小さい時はよくあんな顔をしていました」と言ってくれたのは印象的でした。その子がかつてそうだったような、優しく、純粋な姿に戻っていく力がこのバリ島のツアーにはあったようです。

現地の子と触れ合い、助け合い、支え合う経験が参加者の子を優しくさせる。

「優しさ」とは何か

ツアーに参加すると、自分の弱点を見せざるを得ない場面があります。泳げない、英語を話せない、サッカーが上手くできない、片付けができない、そして体調を崩して迷惑をかけることもある。自分の「できること」「できないこと」「得意なこと」「苦手なこと」をさらけ出すと、誰しもが完璧な人間ではないことがわかってきます。ツアー期間中に自分の苦手なことを得意にすることは難しいので、互いに助け合い、支え合って、ツアーを乗り越えなければいけません。そのような過程を全員で体験していくことで、人に優しくなるのだと思います。

優しさは「哀れに思い、施す」ような一方的な行為ではなく、「手を差し伸べて共に歩む」相互補完的な行為を通して生まれる想いです。手を繋ぎ共に歩みを進めることで、自分が困ったときに繋がっている誰かが自分を助けてくれるかもしれない。ツアーに参加した子達は、参加した日本人同士だけではなく、現地の子にも手を差し伸べられ、共に歩む経験を旅の中でしていました。

ツアーが終わって1週間経っても、「遊ぼう」と集まってしまう参加者たち

そんな飯塚直輝主催のスタディーツアーですが、次回は2025年春休み中です。ツアー詳細は9月の半ばごろにアップいたしますので、SNS、note.をチェックしてみてください。

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