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原点

Origin(オリジン)とは、原点、起源、発端、源泉、原因、生まれなどが訳として挙げられている。トヨタのオリジンという名前のドアが観音開きの車が2000年ごろ発売されていたが、実は、トヨタの原点、初代クラウンに似せて作ったのは、車好きであれば皆知っている。
ところでここで挙げる原点は、私にとってスピーカークラフトの原点。

子供の頃から遠ざかっていたが、数年前に再会してしまったレコードにハマり、レコードプレーヤーを購入して、真空管アンプという物を知り、その後自作に励み、パワーアンプに飽き足らず、RIAAカーブフォノイコ+プリアンプまで辿り着き、あわよくば、レコードプレーヤーまで自作できないか?なんて考えている。このパワーの源泉は、それら機器を伝わり流れる音の調べに心が釘付けになってしまったからに他ならない。

この音の調べは、結果、スピーカーから音の波として私の耳に感動を与える。
だから、このスピーカーという何十年、いや100年以上かもしれないが、基本的な構造を変えず、でも、メーカーの弛まぬ努力で改良を繰り返し製品化されてきたシステムが、今の私の日々の音楽鑑賞に大きく影響している。

先のブログでもバックローホーンを無垢材で作っていることを記載したが、このスピーカーから流れる調べが気持ちよくて飽きる事を知らない。なので、時間が許す限り、別の作業をしながらでも、30分に一度レコードをひっくり返して聴き続けている。時には、うとうと、いや、熟睡に至っても、ターンテーブルが回り続け針がヒーヒー言わないようにオートリフトアップの機能があるのは助かる。

話は遡ってまだレコードに再会する前の頃。50歳半ばのころ、CDの音源を、半導体プリメインアンプと、私が高校生のころ作ったFOSTEXのFEシリーズ(8㎝ほどの口径)を使った密閉型スピーカー(写真)で聴いていた。そのFOSTEXのユニットを使ったスピーカーの事だが、40年以上前にスピーカー作成のノウハウもない私がユニットをただ合板で囲んで作った密閉型のスピーカーである。市販品の見よう見まねで、木目のシートを貼り、サランネットを作ったという性能度外視のものである。

確かShubert For Two(Gil Shaham)をこのスピーカーで聴いているときだった。
低音は全く出ていないのだが、やけにバイオリンの音が透き通って聴こえ、頭の中でアルファー波が出て、そのまま熟睡して日々の疲れをいやしてくれた覚えがある。40年の時を超えた古ぼけたスピーカーなのに、こんなに人の気持ちを癒してくれるのかと感動したことがある。私の家内も賛同してくれた。

私のスピーカークラフトの原点は、この8㎝ほどのFOSTEXのユニットにある。技術が目まぐるしく進化してゆく時代に同じブランドが何十年も生き続けてゆくことははとても大変なことだと思う。この歳になって聴力は衰えたものの、少しはましになった自分の知力と財力をもって、このFOSTEXのフルレンジを自分の好きなように料理することができることに感謝するこの頃である。