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レコードの寝ぼけた音

地元の近く、と言っても車で小一時間くらいかかるところに若者向けの中古レコード屋さんがあるので、日頃の買い出しの途中に寄ってみる事がある。

最近の若者向けのスタイルのオシャレなお店で、メインで取り揃えているものは、私が聴くようなジャンルのものではない。

実は、そこが狙い目で、だから、私のような60過ぎの親父がつい通ってしまう。

どういうことかというと、店がターゲットにしている客向けの商品はそこそこの値段になる。最低でも1,000円越え!

きっと商品の仕入れでは、バルクで購入してくるので、中には店がターゲットにしていない商品も結構な割合で紛れ込んでいるらしい。

だから、そのターゲットにしていない商品、たとえば、クラシックや、昔の歌謡曲、ポップスなどで今流行っていない曲は、処分に困るようで、1枚100円からの値段で山積み状態。

私は、その山積みの中から、自分の好みのものを探すために、そのお洒落な若者向けの店に入る。

ところで、そんな、100円ほどで買ってきたレコードは、手入れがされてないどころか、多分、数十年お蔵入りになっていたままで、その間一度もレコードプレーヤーにかけられていないのだろう。

ずっと冬眠状態で置かれていたので、購入後、私が目を覚ましてあげて、プレーヤーにかけることになる。すると、正に寝ぼけた音なのである。

少なくとも、何十年前には、所有者が何回かは聴いていたはずなので、その時外界に触れた埃が盤面に溜まって、そのまま、レコード保護袋の中で、熟成?いや、固着してしまっている場合が多い。

そんな状態でレコードプレーヤーでかけると、いきなりプチプチと始まり、その後溝の中の埃を針が拾って寝ぼけた音になったかと思えば、硬く固着した埃の上を、レコード針はジャンプして、数小節先へ飛んでゆく。最近若者の中では、サビだけ聴くために飛ばすっていうのが流行っているようだけど、私の目指すところではないし、一番聴きたいところが、すっ飛ばされると、もう、居ても立っても居られない。

何十年も熟成された埃というものは、結構厄介なもので、レコードクリーナーで拭いただけでは全く取れない。レコクリンなる液体をつけて、カミさんの化粧パフ(本当は専用のクリーニングシートが売っているので、そっちの方がいいと思うのだ、自己責任でパフ、、、)でゴシゴシやるが、それでも取れないことも結構ある。

仕方がないので、次なる手段は、手持ちの一番安い針を装着して、何回もプレーヤーでかけまくる。すると、針先が溝に溜まった埃、塵を掻き出してくれる。これが、耳かきの時に耳くそがとれたときのような快感が結構ある。
(これは、針の寿命を短くすること請け合いなので、高級針では絶対やらないように!)

寝ぼけた音のレコードの埃をかき出すカートリッジ

それでも、ダメなときは、台所へレコードを持ち込み、中性洗剤とスポンジでゴシゴシと洗い流した後、ティッシュで盤面の水を拭き取る。(100円で買ってきたレコードなので、ダメ元で荒療治もいとわない)

と、そんな事を繰り返していると、レコードは覚醒したかのように、時を遡って当時の新品だった時の音を奏でだす。

そこまでやってあげて、やっと100円の命を吹き返す事ができるのである。
そんな面倒くさい事を時間をかけて楽しんだ挙句に、新品同様の音が出るというのは、100円を投資した対価としては、十分すぎる満足感があると思うわけである。

なのでこんなレトロなアナログレコード鑑賞ライフはやめられない!