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そこを心という

今の自分をただ否定するためだけに、
僕らは過去を積み上げてきた訳ではない。
望むべき自分の姿を鏡の中に見出だせないまま、
俯き目を逸らしたくなる。
それでも進むあなたの姿を、誰に指さされ笑われようと、
あなただけは決して笑わないでほしい。

心無い言葉を使う誰かは、心にあるから使うのか。
悪意ある言葉を使うのは、そもそも悪意に満ちているからなのか
それとも悪意ある言葉が人の心を染め上げるのか。
いずれにせよ心が醜くなるのは変わらない。
あなただけは決して染まらないでほしい。

振り返れば僕らには物語がある。
言葉にし尽くせない過去がある。
その一片だけを見て、決めつけるのは良くないと
分かっているけれど、それしか方法がないんだ。
だから僕は言葉を尽くそう。
見せたい自分の強い意志を、
見せたくない自分の弱い部分を、
受け止めてくれると信じている。
受け流してくれると信じている。

言葉だけでは何も変わらないと知っている。
言葉だけでは何も救えないと分かっている。
それでも僕は言葉を選んだ。
世界を変える力はない。
誰かを救える力もない。
それでも僕は言葉を選んだ。
あなただってそうだろう。
誰かを傷つける心無い言葉なんて
誰かを悲しませる軽薄な心なんて
僕らは知りたい訳じゃない。
僕らは受け取りたい訳じゃない。

未だに君を夢に見る。
言葉は神聖なものだと言ってくれた君。
行間に物語を見出すことを教えてくれた君。
文章を書くことの面白さを授けてくれた君。
ただ君の思考をなぞってここまで来た。
未だに何を書いても「君なら」なんて考えている。

あなたにもそんな人がいるのなら忘れないでほしい。
辛い記憶は時間が解決するというけれど
幸福な記憶もまた時間が薄めていってしまう。
忘れようとしなくても、いつか忘れていってしまう。
きちんとあなたの血肉として、これからの人生に根付いていく。

今の自分をただ軽視するためだけに、
今の自分をただ悲観するためだけに、
僕らは過去を積み上げてきた訳ではない。
望むべき自己の姿が、たとえ今とかけ離れていたとしても
俯き目を逸らしてしまわないでほしい。
誰に笑われようと、蔑まされようと
諦める理由にはなり得ない。

これはただの僕の押しつけだ。

あなたが望むべきもの。
叶えたいもの。
それが湧き上がる場所。
大切にしなければならない場所。
あなたがあなたでいる理由、
旗を掲げる場所。

そこを心という。

貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。