独り言
屋上の交差点。
声と声。
広い空と、白い雲。
寝転がる僕ら。
遠い春の日。
「今日は随分飲み過ぎたなあ、なんて呟く程度に僕はつまらない人間になってしまった。路地裏でうずくまっている彼女と、看板に寄りかかった中年の男性とのその間を我がもの顔でカラスの群れが歩くんだ」
「過去が未来の炎の先でぼんやり滲んだ。だって積み上げてきたものがよくわからないままに、今の僕なんだったいうのなら一体過去の僕は何をやらかしたっていうんだ」
「こんなに死にたくなるのは燃えるような衝動があったからなんだ。
こんなに虚しくなるのは満ち足りた日々があったからなんだ。
こんなに悲しくなるのは笑い合える誰かがいたからなんだ。
今の僕がこんな人間なのも、もうそれらがどこにもいないからなんだ」
「なんて、そうやって誰かのせいにするのは何度目だい?」
「こうして死のうと思うのは燃えるような衝動が今はもう無いからなんだ。こうして虚しいと思うのは満ち足りたいと望むからだ。
こうして悲しいと思うのは愛されたいと願うからだ」
「何度も繰り返していけばそのうち慣れていくなんて、一体誰がいったんだろう。僕は何度も死のうと思って、その度失敗して、恐怖心だけがむくむくと育つんだ」
「それはきっと本心では死にたくない。死にたくないって強く思っているからなんだ。薄々わかってはいたんだけれどね。それがわかってしまってからは本当に辛かった。だって死にたくないっていう気持ちと、生きていたいっていう気持ちはイコールじゃないんだ。
死ぬのは怖い。
でも生きているのは辛い。
泣きだしてしまいたかったけれど何だか泣くことだって上手く出来なかったんだ」
「なんて、そうやって自虐するのは何度目だい?」
「何度目だって構うものか。何度憂いても、嘆いても結局もう僕は自分で死を選ぶことは怖くなってしまったんだから」
「ああ、でも」
「君には生きて欲しかったな」
思考の交差点。
言葉と言葉。
天蓋の夜と、星の魂。
見上げる僕一人。
遠い春の日。
貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。