見出し画像

私にとってヴァイオレット・エヴァーガーデンは「働くとは何か」を教えてくれる物語(2020.10.22)

世間は「鬼滅の刃」で大盛り上がりしていますが、私は静かに「ヴィオレット・エヴァーガーデン」(以下、VE)を見に行ってきました。

ネタバレ目的ではないので映画の結末等は伏せますが
(私が書きたいのはVEにおける「仕事」の描き方なので)
完全にネタバレなしとは言えないので、楽しみにしている方は
映画を見た後でお読みくださいませm(__)m


▼”超”にわかファン・・・

ほんの数週間前、私はNetflixでテレビシリーズを10話まで見て号泣
劇場版を見に行きました。新宿ピカデリー。

にわかすぎる。

(ファンの皆さん、このような記事を私のようなにわかが書くことをお許しください)

余談①コロナで小劇場(演劇公演)に行けなかったのもつらかったけど、
映画と映画館がどれだけ大切だったかもわかったよー。
現在「スパイの妻」とか「浅田家!」など
おもしろそうな邦画が堰を切ったように公開されています。
というわけで堰を切ったように私も映画見てます。
行こうと思った時に行かないと公開終了。それが映画だ。
余談②おそらく、多くの人は劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンを見ると泣けてくると思います。私は普段、「泣けるから」という理由では見に行かない(泣けるを売りにするのが好きでない)のですが、この作品は「泣ける」を売りにしていません。我々が見て勝手に泣くだけです。気持ちよく泣かせてもらえます。なお、映画中にどれだけあなたが泣いてもシアター全体すすり泣きなので大丈夫です。もちろん「泣けてくる」以外にも、めちゃくちゃすごい部分がいっぱいありますので、泣かなかったとしても大丈夫です(←語彙力)。自然や街並みの描写がめちゃくちゃ綺麗で、それ見るだけでも一見の価値ありと思います! 音楽も荘厳で美しいです。女の子キャラも見た目に反して全く萌え萌え系ではないので、大人女性が見てもちゃんと楽しめます!


▼ヴァイオレット・エヴァーガーデンとは

京都アニメーションが制作した「アニメ」です。
原作は小説、2018年にテレビシリーズ、
さらにスペシャル、外伝が制作され、
(ぜんぶNetflixで見られます)
2020年に劇場版公開という流れだそうです。

アニメ興味ない人も一度でいい、ここ↓を開いてビジュアルを見てほしい・・・!

劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン公式サイト
http://violet-evergarden.jp/

今のアニメってありえないくらい美麗ですよね、絵が!!

でも絵だけじゃないんだ。
すごいんだ世界観が。


▼どんな話?

戦争が終わり、傷を残しながらも人々が復興を目指す町に、一人の少女(推定14歳)、ヴァイオレット・エヴァーガーデンがやってきます。
彼女は、とある経緯で、民間郵便会社の「代筆屋(タイピスト。この世界ではドールと呼ばれる)」という仕事に就きます。
この世界には、大切な手紙は専門職であるドールに口述筆記(タイプによる代筆)を頼む、という文化がありました。また、教育が十分行き渡っておらず字を書けない人も大勢いたのです。

実は、ヴァイオレットは子供ながら「元軍人」でした。
孤児だった彼女は軍によって「人殺しの戦争兵器」にまさしく調教され、
戦うことの意味も、敵兵を殺すことの意味も、
他人の気持ちも他人からの愛情も知らないまま、
ただひたすら敵を殺す兵器としてのみ生きていました。

そんな彼女を引き取った「少佐」が、
名前のなかった彼女に「ヴァイオレット」という名前を与え、
知識を授け、いつも声を掛け、そばにいてくれました。

しかし、最後にして最大の戦闘で、
ヴァイオレットは育ての親である少佐を失い、
自身も両手を失いました。
彼女は精巧な義手を使って、タイピスト=ドールの仕事をしながら
少佐が最期に言った言葉
「あいしてる」
の意味を追い求め続けます。

最初は、他人の感情も言葉の裏の意味もまったく理解できず、
人を怒らせてばかりいたヴァイオレットですが(相手がなんで怒っているかもわからない)、次第に職場の仲間や手紙の依頼主たちと関わるうちに、
人間らしい感情が芽生えてきて・・・

・・・っていうのがあらすじなんですけど、
こんなこと書いても全然伝わらないよ!!!!!

とりあえず3話見たらわかるんで見てください!!!


▼ヴァイオレット・エヴァーガーデンはお仕事物語である。

私がこのアニメすげえなと思ったのは
もちろん設定から脚本から何から色々すごすぎるんだけど、
なかでも特にすげえなと思ったのは(日本語)

・働くことがちゃんと描かれている

これ、「お仕事成長物語」にもなっているんです。

ドールは手紙を代わりに書くのが仕事。
でもただ言われたことをタイプするだけでは、依頼主の本当の希望を満たしていない。
依頼主の言葉の裏の意味、依頼主自身も気づいていないような「本心」を読み取り、文字にしていくこと。
これが絶妙に、「人の心(感情)も、自分の感情すらわからない」ヴァイオレットにとって「訓練」になっていくのだ。

TVシリーズで、ヴァイオレットが過去の罪(戦闘で敵兵を殺したこと)を悔い、自分の存在意義を完全に見失う時があります。

しかしその時、彼女を救ったのは、誰かの「優しい言葉」ではなく、
手紙を配達するという「仕事(行動)」でした。

ヴァイオレットはローランドじいさんに配達の手伝いを頼まれ、
2人で一緒に夜中までかけて、
一軒一軒歩いて、家々のポストに配達します。

この町にはまだ電話が普及していない。戦争で復員していない人もいる。
そんな世界では、玄関の郵便受けに手紙を入れると、
その向こうで家族の歓声が挙がる。

配り切った時、彼女は立ち直りへの何かを掴む。

(しかも配った手紙は、新人が配り切れなくて放棄した「仕事」)

これが仕事だよ!! 仕事の意義だよ!!!!
これが「働く」なんだ!!!!!

これ作った人、脚本書いた人、すごい。。。

安野モヨコの『働きマン!』でもこういうシーンあったな・・・。
心が折れて飛んじゃった外部ライターを、鬼の形相で追っかけるヒロコ。仕事でボロボロになりながら、それでも仕事に救われる夜が。


▼私が一番みじめだった頃(突然の自分語り)

私は今でこそ適当にのらりくらりと生きてて、
「20代のニートも無職もどうってことないよ~」と思えますが
新卒のシューカツに失敗した時が
人生で一番みじめでした。

早大は卒業した。
でも就職できなかった。学生でもない。同期はみんな有名な大手企業や大学院に進んだのに。
東京にはいられない。
他にアテも夢も次に何をすべきかというビジョンも、
何もない。

2ヶ月間、実家で一切何もせず、起きて食べて寝るだけ。
親も「学校では優等生」だったはずの私をどうしていいかわからない。
私も学校を卒業したらレールがないことに、大学4年生でやっと気づいたけど、とにかくそれまで「良い電車、路線」に乗ることしか考えておらず。
路線がない、自分で選ぶ、ということの意味が全くわからず。

社会に出ることをリアルに考えられないまま、卒業し、ただの人になってしまった。

さすがにこのままはまずいと思い、自由に使えるおカネもないので、
たしか新聞広告で見たのかな、求人募集していた県庁のアルバイトに応募しました。

時給云々より、とにかくまともそうな所で、私でもできそうな仕事(←ニートなのに上から目線・・・)。

先輩は2人の女性。
たぶん大学卒業した私より若かったと思う。
高校か短大を出て働いている感じでした。

コピーを取って、決められたボックスに入れたり、
新聞紙を縛って捨てたり、みたいな、本当にめちゃくちゃ単純な作業。

でも私はこの「ふつうの簡単なおしごと」が全然できず、
先輩はかなり呆れていましたが、
なんとか私を受け入れようと、一生懸命指導してくれました。

私自身「こんな誰でもできる仕事」と思ってたけど
やってみたらできなかったので
黙ってもくもくと作業しました・・・。
私、何にもできないんだなあ、とぼんやり思いながら。
将来とかそんな複雑なことは考えることもできず。

ただ決められた時間に役所に行って、何も考えず、
言われた仕事をもくもくとやった。

時は愛知万博(という国の一大イベントがあったのよー遠い目)。
配属は広報の部署で、記者クラブと関わりがあったので、そこで「新聞記者」という人たちを初めて見ました。県庁広報は大変盛り上がっていて、地元紙には毎日万博の記事が出ていました。

私は愛知万博のキャラクター「モリゾー」「キッコロ」の絵を描いて勝手にあちこちに貼って、新聞記者さんとコミュニケーションを取ったりして。

記者さんたちの行動や仕事が面白かったので
四コマ漫画にしたりして(今とやってることが一緒だぞ)。

そうやって、3か月くらいかな、
ふつうのことがどうやらできそうだ、
と思えるようになって。

「私、どうやら、社会というところで、やっていけそうだ」

と自信がついて、次は裁判所の長期アルバイトに(また新聞広告で)応募しました。フルタイムにステップアップ。
受かって退職を伝えたら、上司だった人は喜んでくれました。
役所の人ってほんとに優しい。


▼働くのは、自分のため

何が言いたいかっていうと、
ヴァイオレットみたいな壮絶なトラウマじゃなくても、
私みたいな頭でっかちなタイプ、
頭で考えすぎて動く前から悩みすぎてエネルギーが欠乏する奴は、
「ごちゃごちゃ言ってないで何でもいいからとりあえず働け」
という処方箋が、時には有効、ということです。

あの時、もし家が裕福で親が「働かなくてもいいよ」とか言ってたら(そんなこと言わないけど)、私、本当に引きこもりみたいになってたんじゃないかな。
「家事手伝いです」と言い切れるタイプじゃないから。
(家事手伝いが良いとか悪いとかいうことではなく、私は家事手伝いという立場だと苦しんでしまうということです)

VEを見て、それを思い出しました。


ヴァイオレットが一番つらくて苦しんでいる時、
同僚たちは「仕事しなくていいよ、休んで」と気遣った。
それもめちゃくちゃ大事なことだが、
ローランドじいさんは、彼女にあえて「仕事」を任せた。
それは、直感的に、何かをやった方が立ち直れると思ったからだと思う。

人は、誰かに必要とされていると思えた時に、立ち直る力を得る。

うおーーーーー何これーーーーーー「働いた」人にしかわからないこれーーーーーーーーーー!!!

私は、仕事をするなら、「誰かのためになると思える」ことがいい。
そしてそれをするのは徹頭徹尾「自分のため」だ。
相手のためじゃない。自分がただその日生きる理由をつけるためだ。

もちろん事情があって働けない人もいらっしゃるでしょう。
大事なのは「実際に社会の役に立っているか、どれくらい役に立っているか」ではない。
自分が「これでいいのだ」と納得できているかである。
(治療や、とにかく休むことが”仕事”なこともあるだろうし、精一杯生きることが”仕事”な時もあるでしょう)

お金を生むかどうかは指標ではない。
「自分の仕事」があるということは、多くの人にとって幸せなことのはずなのだ。


だから、仕事に押しつぶされそうな人。


仕事<<<<<<<<<<<<<<人生
なので、そこの優先順位はぜったい忘れないでほしい。

(仕事がなくても自分を肯定できて幸せな人は、それはそれで幸いである。私の母はそういうタイプです)

ヴァイオレットの仕事は「敵を殺すこと」だった。ただ命じられるままに自分が考える余地もなく、最短で敵を殲滅するのが「任務」だった。でも「ドール」なら人の幸せに関与することができる・・・!(もちろん悲しいこともたくさん知ることになるのだけど、少なくとも「生きる」方向の仕事ではある)

しかし、この「ドール」という仕事は、代筆でタイプする仕事。
だから、字が書けることが当たり前になり、みんながタイプを持つようになったり、電信電話が普及したりしたら、いずれ失われていく仕事なんですよね。(劇場版を見るとそれも描かれています)

どこか、せつない雰囲気がアニメ全体を覆っているのはそのせいもあるのか・・・。

それでも「今、求められていることをする」ことがどれほど大事なことか!

ヴァイオレットに天職が見つかって良かった!(そこかよ!!!)

最近の私は「ヒマって最高~」と怠けグセがついてしまったが、
なんか心が洗われたよ・・・。
それでも「明日から会社がんばるっ♪」とはならないけど(笑)
たぶん私は働きながら悩むくらいがいいんだろうなあ。

(こんな私にも、今、仕事があり、良くしてくださる人たちに出会えたことに感謝!!)


▼京都アニメーションへ

私はこの10数年、ジブリ(とエヴァンゲリオン関係)以外のアニメはほとんど見ずにきました。
「もう大きくなったからアニメは卒業」という思いがあったんだと思います。大きくなったというのは「年を取った」ということで。「もうアニメは必要ないし、わからない」と思ったんだと思う。
あの事件が起きるまで「京都アニメーション」というスタジオ名も知りませんでした。
あまりあの事件と作品を結び付けてはいけないと思うものの、あの事件がなければもしかしたらVEを知らないままだったと思うので(おそらく映画も見てないと思う)申し訳ないような気持ちもあります。
ただ・・・いい作品を知ることができてよかったです。
作ってくださって、ありがとうございます。


画像1


これからも書き(描き)続けます。見守ってくださいm(__)m