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あなたから買わない理由

とある小売業でバイヤーをしている。

多くの取引先から提案を受け
商談して商品を採用する。
そんな中で最近感じた
取引先営業さんのNG行動というか
バイヤーの心に刺さらない行動の
事例をいくつか紹介したいと思う。

あくまでこれはぼく個人の見解であり
もちろんこのやり方でもうまくいく場合も
多いかもしれないが
まだ経験の少ない営業をされている人などは
参考にしていただけるとありがたい。

自社都合を優先した提案

そんなの当たり前と思うだろうが
思いの外こういった提案や
発言をしてしまう人は多い。

超大手企業の営業であっても
むしろ大手だから余計になのかもしれないが
こちらの都合よりも自社の都合で動く人たち。

この人たちの厄介なことは
社内である程度評価をされていて
自分の営業スタイルに
自信をもっていたりもする。

こちらの要望に応えられていないことに
気づいていないから
本当はもっと伸びしろがあっても
せいぜい現状維持の取引量に
留まってしまっているが
そんなことにも気がついていない。

商品を採用する権限は
こちら側にあるはずなのに
”A商品が不採用ならB商品は
この価格では提案できません”
とか、平気で言ってしまう。

そんな後出しジャンケンを
さらっと言ってしまうのだから驚く。

こんなことを言ってしまうのは
大抵は大手企業の営業マン。

中小の取引先であれば
そもそもそんなことを言ってしまっては
ただただ相手にされず
その後の取引の見込みもなくなる。

冷静に考えれば
そんな人いないだろうと思うだろうが
長年の大手企業同士のシェア争いが
染み付いてしまった彼らには
何よりも競合大手から
シェアを奪うことを優先してしまい
営業としてもっとも大切にしなければならない
取引先のベネフィットをないがしろにする。

そして、昨年からのコロナ禍においては
各社利益を厳しく追求されているものだから
とにかく目先の利益の確保に走る。

シェア拡大と利益の確保の相反することを
あたりまえのように求められるものだから
上記のような反応になってしまったのだろう。

バイヤーの仕事というのは商品単品だけでなく
取引先の売上シェアのコントロールなども行う。

長い目でみて、有益な取組みをしてくれるのか
というのは、実はこういう苦しいときの
取組み姿勢に現れるものだ。

そしてこれは、お互いに言えることなので
こちらも同じように不誠実な対応をしないよう
傲慢にならないよう心がけている。

今後、コロナが終息したとして
またシェア争い優位の状況がきたときに
掌を返して取組み姿勢を示したところで
この苦しい時期に支えてくれた取引先を
優先するのは企業として当然の対応なのである。

ストーリーを無視した提案

消費者の消費行動は常に変化をしている。

小売業では
世の中のトレンドや自社の売場で
どんな変化が起こっているのか
トレンドと売場のギャップが生まれていないか
を常に把握しておく必要がある。

取引先との商談の中では
小売の最先端であるコンビニ業界の動向や
新商品発売の背景など
さまざまなところにアンテナを立てておくことで
変化の兆しを見逃さないようにしている。

ローカルネタはその後のトレンドの種
だったりすることもあるが
地域密着型の企業でもない限り
全体最適を見る本部担当では
変化に気づくことはかなり難しい。

例えば都内でも山手線内のエリアでは
他の地域の2倍も3倍も売れる商品があるとする。

元々インバウンド需要を狙った商品だったが
このコロナ禍でもこの山手線内だけは
売上が落ちなかったという。

メーカー側も予想外の結果で
詳しく分析してみると
新大久保など在日外国人の
多く住むエリアであることがわかった。

つまり、商品のターゲティングは狙い通りで
ただ海外からきた外国人観光客でなく
日本に住む外国人の購入による伸びであった。

この背景を聞けば
バイヤーであれば自社の売場でも
試してみたくならないはずがない。

この例は実際にぼくが受けた提案であり、
この提案を受けて商品も採用した。

その翌年
同じ商品の販売エリア拡大の提案を受けた。
山手線内エリアの利用者層と
似た利用者層のエリアへ販売エリアを拡大
しましょう、と。

当初の提案から1年経過しているとはいえ
前提が全く変わってしまった提案に思わず
「なんで?」とツッコミを入れずにはいられなかった。

当初提案の背景が“在日外国人”である以上
それを踏まえた追加提案でなければならないのは
誰が見ても明らか。
営業担当だけでなく、その上司や支店長までもが
その違和感に気づいていないということに驚いた。

販売エリアの拡大を提案するのであれば
時代の変化とともに消費者の購買行動の変化が見られ、
当初提案時と状況が変わってきていることを背景に

例えば 
・在日外国人が住むエリアが広がってきている
・外国人から派生して日本人にもブームがきている

などの裏付けは最低限必要だろう。

結局、自社の商品がどういう意図で
取り扱われているのかを理解していないから
こういう提案になってしまう。

逆に言うと
こういった一蓮の流れを理解して
試してみたいと思わせることができれば
意外とバイヤーなんてチョロいもんだ。

何でもかんでも意見を聞くな

ひと昔まえの営業という仕事では
もしかしたら主流の考え方だったのかもしれない。

しかし、今現在でもそんな営業をしている人は
割と沢山いる。

正直、むず痒くなるような
おべんちゃらを言われても
こちらとしてはむしろ居心地が悪いだけだし
そんな商談は早く切り上げたいのが本音だ。

PB商品を作る場合などこの最たる例で
謂わゆるOEMを受託するような企業の場合は
とにかく相手の言う通りにつくる。

いくらOEM受託だとしても
そんなことをしていたら
自社の強みを顧客に伝えることなど出来ず
競合との差別化にもならないのだから
ただ値段を買い叩かれるだけだと思うのだが
まだまだそれでも成立っているらしい。

あなたの会社の得意分野や強みは
あなたが一番知っているはず。


その得意や強みを営業先の得意や強みと
どう重ね合わせられるかを考え、
提案するのが営業担当の仕事だ。

なんでも御用聞きをして
使い勝手よくレスポンスが早ければ
取引が継続するなんて時代は
とっくの昔に終わっているのだが
そこを変われない人は
まだまだ多いのでははないだろうか。

そしてバイヤー側も新陳代謝が進み
ぼく自身もそうだが
30代ぐらいの年齢の人間は
そういった煩わしい、分不相応な対応されても
居心地が悪いだけでなんの価値も感じない。

御用聞き営業でもそれなりに回っていた時代から
いよいよそんな営業では立ち行かなくなる時代が
すぐ目の前に来ているのではないだろうか。

バイヤーの攻略法

企業の考え方にも寄るのだろうが
バイヤーという職種は各企業の中で
それなりに責任の重い職種だと思う。

なんせ、自分の選んだ商品が全く売れなかったり
売り場の方針とかけ離れてたり
ブランディングの方向性とズレていたりしていては
他部署の努力や先人のこれまでの蓄積が
台無しになってしまうのだから
それなりの責任感を持ってMDをしている。

当然ながらMDの方向性を社内に説明することや
実施した内容についてのレビューなどは
定期的に行わなければならない。

バイヤーの権限を使って
自分が好きなものばかりを品揃えしたり
取引先営業の好き嫌いで商品を選定したりなどは
経営陣はもちろん、売場担当者に
説明がつかないことをすることなんてもってのほか。

そんなバイヤーにハマる営業をするには
あたりまえだがバイヤーの方針を理解し
顧客側の売上や利益を最大限拡大するための
提案をすることだ。

あたりまえのことではあるが
自社商品の品揃えや販促費予算、注力商品など
各社の事情がここに絡んでくるので
結局は自社をいかに説得できるかという問題となる。

当然、各社の考え方や商品にもよるが
その顧客がそれほど重要度が高くない顧客の場合
なかなか要望に応えられないこともあるだろうし
特に販促費などの捻出は難しいだろう。

何より、顧客ファーストが過ぎると
自社内での評価が下がってしまうことにも
なりかねない。

だが、そんな中でも成果を出す
営業担当というのも存在する。

単に個人同士の相性という部分も否定はしないが
徹底的に顧客の方針を理解し
自社にできる範囲の最大限の提案を
していれば、バイヤーには必ず伝わるものである。

バイヤーと営業担当は敵ではなく味方。
共に目標に向かって試行錯誤を
するチームだと捉えられれば
必ずあなたの営業は受け入れられるだろう。

バイヤーというのは実は結構社内では孤独で
同じ方向を向いてくれる同志を求めていたりもする。

常に有益な提案をしてくれる企業とは
長く付き合っていきたいし
シェアを伸ばすことで売上や利益拡大に
繋げる可能性が高まる。

結局は、お互いの利害が一致することが
もちろん一番大切なことであり
バイヤー側としても優位な立場にいるようで
実は取引先からそっぽ向かれてしまっては
何もできなくなってしまうのだから
双方にメリットのある形で収束をさせるのが
真っ当な企業のバイヤーだろう。

逆になんの方針もなく
なんとなく気分や競合の動向
または価格だけで商品を選ぶような
バイヤーであれば、旧来型の営業で
対応するのが望ましいかもしれないが
そんなバイヤーが商品を選んでいる企業に
明るい未来はないだろうから
無理にハマる必要はないだろう。

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