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ピンヒールははかない 佐久間裕美子

今この本を読み終えて、まだ心がひりひりしている。

昨日のリトリート施設に置いてあった雑誌BRUTUSに佐久間さんのライフスタイルが紹介されていた。ブルックリンの自宅と友人夫婦が所有する山小屋を行き来する生活していると話されていて、カッコイイなぁと思ったのもあり、昨日帰りに本屋によって、この本を買い求めた。

ニューヨークで暮らす佐久間さん自身の、また周りにいるミュージシャンやアーティストなど様々な女友達が、恋愛や結婚や離婚、妊娠や出産、キャリアについて悩みながらも、向き合いながら前を向いて生きていく様子が、とてもリアルに描かれている。共感するところが多くて、うんうんと何度うなづいたことか。

私は、アメリカに2年大学院に行ったので、外国人である日本人がアメリカで食べていくことがどれだけ大変かよく分かっている。ビザの問題が一番大きくて、特に私がアメリカにいた2017-2019年はトランプ政権であったためにAmerican Firstのもと、アメリカ人を最優先に雇用するという風潮も強く、国際機関でない限りは働き場所を見つけるのが難しく、H1Bビザ(専門職ビザ)のスポンサーをしてくれる企業を見つけることはたやすくなかった。そういうこともあり、私は易々とアメリカを後にして、でも日本以外の組織で働きたかったので、アメリカに本社を置く組織の日本支部で働くという決断をした。でも、日本に帰ってきてからこういう事情を知らない日本人の友達から「なんでアメリカで働かなかったの?」と言われると、彼らの無知さにイラっとしたりした。そして、私のように30歳を過ぎて女性で留学してキャリアシフトを試みることも、アメリカでは自然だったのに、日本に帰ってくると、30過ぎて独身で留学ってどういうこと?みたいな感じで受け止められることも多く、自分の中では留学にチャレンジしたことはとても大きなことだったのに、日本社会の中では評価されず冷ややかに受け止められたことに、正直とても残念な思いをした。

話を少し本に戻そう。本の中に「シングリズム」という言葉があり、はっとさせられた。これは、シングルが受ける差別という言葉だ。アメリカは人種差別や、経済格差、度々起こる銃乱射事件など、社会の抱える問題は根深い。それでも、私がアメリカって良いなーと思うところに、その問題をきちんと客観的に言語化して、変化を起こそうとする力があるというところ。

日本では、結婚しない若者が増えているということは話題に挙がったとしても、シングルの受ける差別という話は目立ってはいないとは思う。私がアメリカから帰ってきて、日本で再び社会人として再出発したときに、30代女性でシングルであるというだけで、なんて肩身の狭い思いをしないといけないんだろうと思った。30代女性は結婚して出産して子育てをするのが当たり前というか、そうあるべきみたいな圧力をすごく感じて、それにコロナによる影響もあって人と話をする機会がめっきり減り、人生で最も孤独を感じることになった。自分が正しいと思って時間と労力をかけて選んできた道に対して、本当に正しかったのだろうか?という疑いの目を持ってしまう自分がいることが、何よりも悲しかった。

佐久間さんの本の中でも、そうした負の感情や、インセキュアな自分(自分に自信が持てない状況)とどう折り合いをつけて生きていくのかということが描かれている。

「 Thanks GOD. I am perfectly imperfect」 自分は不完全、でもそれでいい。きっとそういうことだ。カギは自分と他人を比べないこと、自分がどう他人の目にうつっているかを過剰に気にしないこと…..結局自分と付き合わなきゃいけないのは、自分なんだから………

仕事の立場上は、自信を持つことは大事でも、仕事以外の自分になると、自信を失うことは誰になってあるとは思う。その感情を否定するのではなくって受け止めて、うまく付き合っていくことが、きっと成長することなんだろうなと、Keith Jarrettの静かなピアノを聞きながら、思うのでした。






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