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コンクール曲の合奏中、ゾーンに入った話

マシュマロの文字制限1000字を超えてしまったため、こちらに投稿します。申し訳ない。

中学3年生の時、吹奏楽コンクール曲の合奏にて。

その年の自由曲はフルートから始まる曲で、静かでとても繊細な幕開けの曲でした。コンクールに関わらずですが、やはり曲の冒頭というのは聴衆がそのあとを聴きたいと思うかどうかをとても左右すると思っています。
特にテンポがゆっくりでロングトーンで始まるとなると、音そのものをじっくりと聴かれてしまう。吹く側はとでも緊張しますし、求められる集中力はとてつもないものではないでしょうか。

ちなみに当時、私の母校はコンクールで金賞を頂くのは夢のまた夢という実力でした。自分たちの下手さは自分たちが1番よくわかっているけれど、でもどうしたら上手くなるのかわからないし、それを教えてくれる人もいない。部員のモチベーションも様々で、部活に来ない子が割といて、その子達を何とか来させるために何回も「行こうよ」と誘っては断られ、たまに来たらとても嬉しい、みたいな。上手い子もいましたが、大半はなんとなくでやっていて、下手でも吹奏楽って楽しいな〜というゆるい雰囲気だったような気がします。

そんな私たちでも中学ラストのコンクールは真剣そのもの。

顧問の先生が指揮棒を構え、振り出して、フルートの子達の冒頭を聴く時、他のパートもギューーーーンと集中しているのがわかるんですよね。
自分のパートは吹いてないけれど、バンドの心がまさにひとつになれるかどうか、具体的に言うと集中力をひとつにできるか、が冒頭にかかっている。と、下手な自分でも、何十回も合奏を重ねるうちに無意識的にわかってくる。

でもそこは人間、上手くいかない時もある。
フルートが鳴り始めた時、「あ、これはダメなやつだ」と思ったら、やっぱり先生もすぐに指揮棒を下ろして無言で首を振り、"もう一回"となる。
これ、客観的に見ると単純に音程が合っていないから、というのが理由なんですが、当時の私にはめちゃくちゃ衝撃的な体験でした。
誰もチューナーなど見ていないのに、集中していれば、音程は合うのだと。
くどいのですが、音程を気にするような練習をしてきたバンドじゃ無いんです。でも、その時は、"合っているかどうか"全員がわかっていたのではないかと思います。そしてフルートが合わないまま始まるとそのあと曲が崩れていくのは言わずとも見えている。

「全員と息を合わせる」とよく聞きますが、これは"ゾーン"に入っているかどうかなのではないか?
極限まで集中すれば、へたっぴな私たちでも、レベルが一段、二段も違うところへ来れるのだと。

顧問の指揮と全員の集中力が合い、フルートが美しく調和する時、ああ、うまくゾーンに入れた、と安堵する。

あんな合奏をもう一度してみたいです。



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