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経産省がひた隠す878億円新型コロナ緊急対策支援クールジャパン補助金の事務費

コンテンツグローバル需要創出促進事業:J-LODLive

現在、新型コロナウィルス緊急対策支援のクールジャパン事業「J-LODLive」が開始されています。

この事業は、新型コロナウィルスの影響でライブイベント開催ができなくなった音楽、演劇関係法人の海外展開のプロモーション動画制作に係る経費を最大で50%、最高5000万円まで助成することを目的とした間接補助金事業になります。

経産省からこの補助金分配のための事務局事業を1週間公募、1件の応募を経て請け負っているのが特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)になります。

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事業者の言い値で決まった「事務費」の配分は黒塗り

私たちの社会には、新型コロナ対策支援の様々な間接補助金の支援制度が立ち上がっています。昨今何かと議論になっているのが基金管理に係る「事務費」になります。

同じ経産省事業の「持続化給付金」では、管理事務業務を委託された一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が委託費の97%を電通に再委託していたことで批判が集まりました。

今回のJ-LODLiveをはじめとする経産省のコンテンツ海外展開支援のクールジャパンですが、実は2012年補正予算から微妙に名称を変え続いてきた事業で、これまで投じられた税金は累計で1281億円で、その全てを映像産業振興機構が請け負ってきました。

しかし、このコンテンツ海外展開支援のクールジャパン事業は、過去の総務省のチェックで無駄が多いと改善勧告が出されるなどし、直近の2事業では予算が半減していました。

こういった経費を経たJ-LODLiveですが、これは単年予算事業です。つまり今回の878億円は2021年3月31日まで使うことが許された予算になります。

音楽、舞台関係者が新型コロナ禍で苦しむ中、企業への海外プロモーション用の動画作り支援にどれほどの必要性があるのか?

ほかの間接補助金制度と同じように、878億円もの予算をつけたクールジャパンはの事務費の配分や、管理事務業務の履行体制に問題はないのか?

なお、音楽、舞台関係者の復興支援は文化庁でも行なっており「文化芸術活動の継続支援事業」には508億円の予算がついています。

これらの疑問から、私は経産省に対し情報公開請求を行いました。しかし、結論から申しますと、経産省はこれらの情報を全て黒塗りにする処分を行いました。

ただ一つわかった事実としては、開示された文書の中で梶山弘志経産大臣は「事務費」について、映像産業振興機構の申請書のとおりにする旨の交付決定を下しているので、映像産業振興機構の言い値のとおり「事務費」が承認されたことがこの文書から判明しています。

(9)令和2年度コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金交付決定通知書(写し)(20200508情第1号、令和2年5月8日)(ドラッグされました)

(8)令和2年度コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金交付決定について(起案)(20200508情第1号)(ドラッグされました) 2

(8)令和2年度コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金交付決定について(起案)(20200508情第1号)(ドラッグされました)

(11)件名:ファイル格納先(電子メール、2020年4月20日10:21:21ほか)(ドラッグされました)


情報公開法の裁量権の濫用の疑い

行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)では、行政は請求を受け付けた日から原則30日以内に開示決定を行わないといけないと定められています。ただし、文書の特定に時間が係る場合などは「特例」としてさらに30日開示期限を延長することができます。

今回の経産省は特例を適用したため、文書の取得までに60日と2週間掛かりました。経産省は、決定通知書の中で「事務費」と「履行体制」の黒塗りについて次の理由を述べています。

「当該法人が多大なコストをかけて取得したノウハウを含む情報であり、公にすることにより、競合他社等に容易に模倣され得る等、当該法人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあり、法第5条第2号イに該当するため、不開示とした」

しかし、経産省は、過去に映像産業振興機構が請け負った同型同類のクールジャパン補助金事業において「事務費」の配分を開示しています。

経産省が123億円、総務省が32億円を拠出した「平成24年度補正コンテンツ海外展開等支援事業」(J-LOP)では、155億円の総事業費に対し経産省は4億円の「事務費」を認め交付を決定しています。

ただし、事業開始後、映像産業振興機構は民間事業者への分配金のうち約24億円を「事務費」に流用する変更届を提出し、経産大臣もこの流用を承認したため、最終的な「事務費」は、経産省交付分の22%以上に当たる28億2500万円になりました。

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行政の情報公開運用においては、過去の同類の補助金事業の先例に沿った裁量がなされるべきだと考えます。同じ映像産業振興機構が請け負った同類のクールジャパン 事業において、ある事業では情報を開示する、ある事業では不開示にする、という今回の経産省の不開示処分は、情報公開法の裁量を逸脱、濫用した不当な処分だと思います。

さらに、経産省は「持続化給付金」事業についての国会でのヒアリングにおいて、事務局業務を請け負った一般社団法人サービスデザイン推進協議会の「事務費」約769億円だけでなく、再委託先の電通と再委託契約金749億円という金額と履行体制を開示するに至っています。

また、経産省はホームページに掲載した「持続化給付金事業の執行体制等について」の中で、一般社団法人サービスデザイン推進協議会「事務費」の内訳まで公表しています。

同類の間接補助金事業の情報公開において、ある特定の事業者に対しては情報を開示し、ある特定の事業者に対しては不開示にする、という処分は、先と同様の理由から、情報公開法の裁量を逸脱、濫用した不当な処分であると言えると思います。

黒塗りに裏に潜む「事務費」の無駄遣いの危険性

なぜ映像産業振興機構への「事務費」の黒塗りが問題だと捉えているのかというと、その理由は、過去のクールジャパン事業における不透明かつ不適切な「事務費」の運用にあります。

「平成24年度補正コンテンツ海外展開等支援事業」の基金管理業務においては、複数の補助金適正化法ならびに交付要綱に違反に当たる疑いがある行為が発生していました。

第一に、交付要綱では事務局運営を第三者に再委託、もしくは第三者と共同で行う場合には、原則競争入札を行わなければならないと規定されていました。しかし、映像産業振興機構は、こうした入札を経ずに広告代理店を事務局業務に参加させていました。

次に、映像産業振興機構が補助金の使い道にも問題がありました。

前述の通り、映像産業振興機構は4億円で交付決定を受けた「事務費」を7倍以上の28億2500円に変更しています。この時に承認された変更理由は、映像産業振興機構が事業主体となってクールジャパン プロモーションイベントを実行できるようにするもので、20億円もの補助金を流用していました。

間接補助金の事務局業務の目的とは、民間に補助金事業を告知し、分配する役割のはずです。それが、事務局が自分で自分に補助金を給付しイベントを主催するという、本来の補助金の目的から外れるような流用がどういうわけか経産相によって認められ、補助金が交付されていました。

映像産業振興機構は、この流用した補助金をを使い事務局業務に参加させていた広告代理店らと年5回の複合イベント事業を計画したのですが、このイベントは完了する前に頓挫しています。

イベントが頓挫すれば、当然、使われなかった「事務費」が発生することが考えられます。交付要綱では、事業終了時に余った預かり金を国庫に返還するよう規定されています。

しかし、映像産業振興機構は残余額を返還することなく、事業終了間際に8億5000万円もの「事務費」を駆け込み的請求し、使い切ったと報告しています。しかし、支払い請求の詳細を確認すると、法律で認められていない流用区分外の請求を行っています。

繰り返しますが、20億円はプロモーションイベントを主催することのみに流用が認められた補助金です。当然、仮に事業終了間際に8億5000万円を使ったのであれば、この金額に相当するクールジャパンのプロモーションイベントがどこかで開催されていなければなりません。

しかし、映像産業振興機構の事業報告などを確認しても、この期間に大規模イベントを実施した形跡はどこにも見当たりません。どんなイベントを行ったのか映像産業振興機構の事務局に問い合わせたのですが、民間事業であるとの理由を盾に「情報公開の対象外」と回答を拒否しました。

同じ質問を経産省にも問うたのですが、職員は「いちいち覚えていないが、1円たりとも税金の無駄使いはなかったことを確認している」と回答されました。

交付申請書に書かれた虚偽記載

映像産業振興機構が管理事務業務の応募の際に、交付申請書を提出しているのですが、その中に虚偽に当たる記載が確認できます。

映像産業振興機構は、2012年補正から2019年補正まで請け負った同類のコンテンツ海外展開支援の補助金事務局業務を、新規事業入札の際の実績として申請書に記載しています。

その中で、2012年補正のJ-LOPについて「採択された全案件について、事業期間内に、採択から事業検査まで事故なく、遅延なく完了」と記載しています。

しかし、J-LOP事業期間中、映像産業振興機構は給付にかかる公文書を紛失させ、事業者の個人情報等を漏洩させた可能性のある「事故」を起こしていて、公文書には映像産業振興機構が経産省に事故を報告した事実が残っています。

この国では公文書を改竄したり、破棄する行為が重大な問題と捉えられていないのかもしれませんが、公文書の紛失、個人情報の漏洩が「事故」であることは間違いないでしょう。

なにより、映像産業振興機構が「事故」という言葉を用い報告していることからも、「事故なく完了」という申請書の内容は真実ではなく、今回の事業の入札に際し虚偽の申請書を提出していたと言えます。

実績

文書紛失

「事務費」の黒塗りに潜む危険性

持続化給付金で明らかになった経産省のルールがあります。経産省は、間接補助金事業の管理事務にかかる「事務費」を総事業費の10%、もしくは事業者の見積もりの低い方にするというルールを設けているそうです。

このルールを今回の新型コロナウィルス緊急対策支援のクールジャパン事業に適用すると、映像産業振興機構の「事務費」は最大で87億8000万円に及ぶことが考えられます。

過去に不透明なだけでなく、法律や交付要綱の規定から外れた「事務費」の使い方を見せた映像産業振興機構の新規事業において、この部分を黒塗りにされたらどうなるでしょうか?

補助金管理業務において公文書の紛失と個人情報の漏洩という「事故」を発生させておきながら、新規事業で事故の事実を隠し、交付決定を受けていた事業者の「事務費」や「履行体制」が黒塗りにされたらどうなるでしょうか?

今回の878億円の新型コロナ緊急対策支援のクールジャパン事業ですが、7月10日に国会でこの予算を翌年に繰り越すことができる承認を得たと報告されています。

単年事業で交付されたものが、すでにルール変更が行われています。したがって、今回の事業においても過去のクールジャパンと同じように、不可解な事務費の流用や、無駄が多くとも何が何でもついた予算を使い切る、といった事態を招くことだって想定できると思います。

こうした理由からも「事務費」の不透明化には多くの危険が潜んでいます。

情報公開第一条はこう規定しています。

この法律は、国民主権の理念にのっとり、行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により、行政機関の保有する情報の一層の公開を図り、もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに、国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資することを目的とする。

情報公開とは、法律に基づき平等の裁量で開示されるべきものです。

国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に反し、経産省がその時々で異なった裁量を用い、恣意的に国民の的確な理解を妨害し、批判逃れに黒塗りにして良いはずはありません。

今回の黒塗り開示に対しては即時に不服審査請求を行いましたが、民主的な行政の推進を実現するためにも今回の「事務費」の開示は今後も求めていきたいと思います。

下記に今回開示された主要公文書を公開しましたので、ご興味のある方は下記のリンクからダウンロードしていただけます。


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