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「持続化給付金」管理事務費と「経産省ルール」の矛盾

補助事業の事務管理費上限10% ルール

6月8日に、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売上が半減した中小企業などを支援する「持続化給付金」事業について、経産省から事業を受託した一般社団法人サービスデザイン推進協議会と電通が会見を行いました。

この会見で事業の利益率を問われた電通の副社長は以下のように回答しました。

経済産業省のルールで管理費は10%か電通の一般管理費率の低い方で計上するようにと指導されている。我々の一般管理費率は10%を超えているので、今回はルールに則り10%とした。

つまり、経産省の補助事業において、事業を受託する補助事業者が計上できる「管理事務費」は上限10% と「経産省が指導している」ルールになっていることになります。

しかし、おの「上限10% ルール」は、過去の同様の経産省間接補助事業において適用されていません。

20%の管理事務費が承認されたクールジャパン 海外展開補助事業

『日本の映画産業を殺すクールジャパンマネー』で扱った「コンテンツ海外展開等促進事業」は、経産省と総務省の共同基金で、日本のコンテンツの海外展開にかかるプロモーションやローカライズ費用の50%を助成する制度でした。

事業の総額は155億円で、このうち経産省交付分が123億円、総務省交付分が32億円となっています。そしてこの事業の管理事務を請け負ったのが特定非営利活動法人映像産業振興機構(VIPO)になります。

交付決定時の内容は民間事業者に分配する補助事業費が151億円、管理事務費が4億円でした。ですので、一見すると管理費率は2.6%と経産省のルール通り管理事務が行わている事業のように見えます。

しかし、経産省は交付決定後に自分たちの「上限10% ルール」を不可解に変更しています。

映像産業振興機構は、経産省交付分の補助金23億4106万円を、自分たちの管理事務費に流用する変更届を提出しました。この変更届は、当時の茂木敏充経産大臣に承認されています。

こうして、経産省のルール変更手続きにより、映像産業振興機構は交付決定時に認められていなかった総額28億2500万円の管理事務費を手にしました。この数字は155億円の事業費全体に対する管理費率では18%強ですが、経産省交付分の123億円に限っていえば通常の「上限10%ルール」の倍の管理費率になります。

この区分変更の大部分にあたる20億円は映像産業振興機構がイベント事業を行えるための「広報費」となっています。

間接補助事業の本質とは補助金を届けることになります。しかし、本来の本質から逸れる税金の使い方に対し、経産省は目的の詳細を尋ねることなく20億円の流用を認めています。

もし、経産省が管理事務費率を10% 以下にするよう徹底指導していたのであれば、ルール上法外な流用変更届は即座に却下されるべきものでしょう。

つまり、つい数年前までは「経産省の10%ルール」など存在していなかったことになります。

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一貫性のない経産省のルール変更に潜む危険

こうしたことから、経産省と補助事業者の間で語られる「経産省のルールに則って」という説明はさほど信用できないと思います。

「経産省ルール」とは、あくまでも自分たちにとって都合のいいルールを自分たちで作っているに過ぎず、そのルールは時に適宜に自分たちに都合のいい「ルール変更」が可能です。

ちなみにクールジャパン 事業の流用区分変更は国民に公表されていませんでした。

経産省ルールの一貫性のなさから鑑みても、今回の「持続化給付金」の管理事務費においても、国民の関心が向かなければ、交付決定後に密かに「10% 」を超える管理費の流用変更が行われる可能性がなかったとも言い切れないと思います。




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