顔文字を使う最後の人

-- 400字小説 --

 「昭和の表現」「白黒」。オレはSNSにあふれる顔文字への批判を眺めながら「絶対に顔文字をやめないぞ\(^o^)/」と投稿した。それに対して、また、絵文字信者から「場所取りすぎ、ギガの無駄」と心無いレスがあった。

 顔文字が廃れるとは思わなかった。オレがSNSを始めた数十年前、ネットのやりとりといえば顔文字だった。しかし、カラフルで表現できるものの多い絵文字が次第に主流になり、顔文字は旧時代の遺物に成り下がった。

 決定的だったのは標準化の名の下にスマホで顔文字が禁止されたことだ。顔文字を打つと勝手に絵文字に変換されてしまう。顔文字を受け入れるSNSも減り、使う人は激減。いまやSNSで顔文字を使っているのはオレだけになった。

 今日は唯一残っていたSNSが顔文字の投稿を禁止する日だ。顔文字、最後の日。オレは最後に投稿した。「さよなら顔文字(;_;) 愛しているよ😍」。絵文字を使ってしまった。

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