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営業時代に法務に抱えていた不満を、法務になった今、考え直してみる話

この記事は「裏 法務系 Advent Calendar 2020」の12/2分の記事です。是非、感想を #legalAC , #裏legalAC で教えてください。

さて、ベンチャー企業に入ってからひそかに憧れていた「アドベントカレンダー」に何と参加することができました!!わーい!!

12/2という、まだハードルが下がりきらない頃にエントリーしてしまう素人っぷりですが、頑張って書いていくのでよろしくお願いします。

簡単な自己紹介

LAPRAS株式会社で法務部門の責任者をしています、飯田裕子です。LAPRASでは法務全般にプラスして、WorkingEnvironment、新入社員オンボーディング 、体操のお姉さん等 興味のある仕事を欲張ってやらせてもらっています。

経歴は中央大学法学部で弁護士を目指す→ロー進学を諦めて就職へ→IT企業の営業職へ→司法書士事務所に転職→士業総合コンサルに転職→LAPARS株式会社に転職後、法務部門責任者へ とこんな感じです。

将来的には、誰かの夢のお手伝いを満遍なくできる「ジーニー」のような存在になりたいと思っています。

法務になった今、営業時代に感じた法務への不満を、法務として考えてみよう。

自己紹介でも述べたのですが、私は新卒で法務職に付けず、最初のキャリアはIT企業での営業職でスタートしました。ちなみに、その後転職した法律事務所でもコンサルグループでも、一時期営業をやっていました。

営業をしている時は「法務の仕事」について(主に不満ですが)色々と思うことがあったのですが、それを今法務の目線で見るとまた面白そう!と感じたので、今回は営業時代に法務に思っていた不満を、法務になった今の私の目線で紐解いてみよう思います。

「営業の気持ちがわからない...」「事業サイドと温度感がある...」とお嘆きの法務の方や、「なんで法務って...」とお怒りの事業担当の方、それぞれのの参考になると幸いです。

不満:なんで月末の重要さを分かってくれないんだろう...

営業時代に怒ってたことNo.1です。画面の前で首がもげるほどうなずく営業さん...11月もお疲れ様でした...。

営業時代の私にとって、月末に契約が入って、今月の自分の数字になるかは大事な大事な問題でした。
既存顧客のフォローがメインの部署で、さほどキツいノルマはなかったものの、新人なのでやっぱり少しでも目立ちたい!数字を積んでみたい!!という気持ちはあり、焦りもあります。

そんな中、月初から頑張って訪問して、先輩にたくさんフォローしてもらって、色んな条件を交渉してやっと取れた担当合意。営業事務の方に作ってもらった契約書。
事前レビューも通って、あとは押印して明日の消印で郵送すれば今月の売り上げに入るって!これで目標も初達成!!先輩ご指導ありがとうございます、え?明日はお祝いに飲みに??いえいえ、そんな〜〜。

とまぁ、この状況で翌日朝イチでレビューをお願いしたものの、一日法務の方からレスがない。メールは開封してるみたいだし、今日中にお願いって書いてたし、あれ...??と、さすがに不安になって昼過ぎに法務の人の階に行くと「〇〇さんは終日外出でいないよ」と...。

月内売り上げに入ることの喜びを、何だと思ってるんだー!!

とまぁ今振り返るとそもそものスケジューリングがお粗末な気もしますが、この件に限らず「月内に契約が間に合う」ことへの温度感で法務の人とすれ違ってると感じることは、営業時代は多くありました。

先輩から言われて、月末に法務の階に走って行き、契約書を持って行って「見終わるまでここを動きません!」と言い放ち、本当に契約書がもらえるまで立って見張ったこともあります。(その節は本当にすみませんでした)

それくらい「法務は仕事が遅い」「月末には間に合わせてくれない」「自分が苦労してクローズしたものを、しれっと翌月に回される」と思っており、せっかくの売り上げを大事にしてくれない法務を、あまりよく思っていませんでした。

法律を学んでいた頃は「完成した芸術品」のように感じていた契約書に対しても、契約書は作っただけじゃ意味ないんだぞ!使わないとただの紙なんだぞ!!! とすら思っていました。

今法務の目線で見てみると

さて、今法務の目線で当時の自分を振り返ると「駆け込みあるなら、早めに頭出ししてよ...」と正直思ってしまいます。

もちろん売り上げがないと会社が回らないことは分かってます。だからといって月末はバックオフィスも全体的にバタバタしてるもの。こっちだっていろんな期限を抱えている”最終営業日”なのです。

先に教えてもらえていれば、他の業務の優先順位を変更したり、他のメンバーに頼ったり、早めに出勤したり等して、なんとか対応が出来たかもしれません。当日に突然持ってきて、返すまで動かない...というのは、本当にただのテロ行為で、その日の予定を全て狂わすことになります。

あと「あなただけの月末じゃない」ということは、昔の自分に分かって欲しいなぁと思います。他にもたくさん案件があると、もちろん全部を期限内に見たい気持ちはあったとしても、法務の中で優先順位を付けないといけません。今の私も、会社経営への影響度、見終わるまでにかかる時間、契約金額等を加味して、場合によっては取捨選択をしています。

もちろん、そもそもの仕事が遅いとか、営業と法務との信頼関係ができていないとか、法務側にも問題があるケースももありますが、それでも「新人として成果を早く出したい!」という一営業の勝手な都合の押し付けは、当時の法務担当者が「知ったこっちゃないよ...」という気持ちになっても仕方ないよなぁ と今は思います。

この経験が法務に役立っていること:契約書は使う人のためにある

ただ、この経験があったので、今の私は出来るだけ駆け込みに対応できるように「臨戦態勢」で迎えるようにしています。

一人法務なので、できるだけ月末は休まないようにスケジュール調整したり、重めのMTGはお願いして月初に回してもらったり、セールス関連のslackチャンネルをウォッチしたり、営業メンバーとも連携をとったり...。
できる準備は全てして、営業メンバーと同じチームの気持ちで、一件でも多く売り上げを迎えられるように、月末を過ごしたいと思っています。

契約書は作っただけじゃ意味ないんだぞ!使わないとただの紙なんだぞ!!!」と昔思っていたことは割と的を射ており、どんなに綺麗な契約書があっても「使う」ことができないと法務の仕事も報われないので。契約をとってくるプロを全力で後方支援するプロでいよう!と思えるのは、きっと営業時代の苦い経験があったからだと思います。

ちなみにここから単なる自慢ですが、弊社のセールスチームは「今月にどうしても入れて欲しいのがある」「ごめん駆け込みになるかも」「お客さんはここが気になってそう」等、顧客にも私にも丁寧にコミュニケーションをとってくれるので、法務担当としてとっても助かっています。無理も聞きたくなる、最高のチームです。

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不満:法務同士の伝言ゲーム終わらないんだけど!

さて、もう一つ私が営業時代に思っていたこととして、法務同士の契約書の”修正合戦”がありました。

担当者ベースで内容を合意できていて、あとは契約するだけなのに、その「だけ」に時間のかかることかかること...。なんで双方そんなにこだわっているのか、法務から言われたことを伝言したら「そういうニュアンスじゃない」って言われるのか、気付いたらもう2週間くらい経ってるんだけど...。

というような場面があり、法務のせいで相手方との契約のスピードが落ち、ずっとメール文で「弊社法務から指摘があり〜」と書きながらも、「伝言だからってそんな気軽に交渉させないでよ...」と思っていました。

今法務の目線で見てみると

さて、今法務の目線で当時の自分を振り返ると「もう少し、自分が締結する契約に、興味を持ってくれたら嬉しいな...」という気持ちが半分、「とはいえあれはちょっと時間かかりすぎだよね...」という気持ちが半分です。

前半の「もう少し興味持ってくれたら嬉しいな...」というのは、契約書はもちろん法務的に指摘する箇所もありますが、事業サイドの利益の観点から指摘することも多くあり、せめて事業の部分(もっと狭くいうと、年間の売り上げ目標に関係する部分)は営業が理解していないと、結果として自分たちの不利益になることもあるからです。

例えばですが、何か返金規定がある場合に「全額」なのか「半額」なのか「違約金も含めて契約金額の2倍」なのか。そして、それらの返金はそのような場合に発生し、どれくらい起こる可能性があるのか。

それによっては、1000万円の契約でも、頻繁に全額返金が起こるような条件がついていれば、返金数を見越して別の契約を取ってくることになるかもしれません。金額の2倍の違約金は他の受注で得た売り上げをも吹き飛ばすかもしれません。

そこを法務が頑張って、修正しようと頑張っているのに、「またかよ...」というリアクションをされるのはちょっと辛いなぁという気持ちになります。

後半の「とはいえあれはちょっと時間かかりすぎだよね...」という部分は、やはり自社の雛形をもっとブラッシュアップしておくとか、契約書作成前に顧客の温度感や顧客企業の法務の噂を調べておくとか?、法務にもまだ出来ることがあると感じるからです。

例えば、修正事項が多い時に、クリティカルではない部分についても同じ温度感で修正依頼をしていないか?自社の雛形をただ押し付けて理由の説明を省き、結果としてお互いの解釈がずれていないか?契約できなかった場合のリスクまで事業チームと握れているか? そこまで考えて双方の法務が動けば、少なくとも営業が呆れるくらいの伝言ゲームは発生しない。というのが法務をやってみての自分の体感値です。

この経験が法務に役立っていること:契約書を締結するのは、営業と法務の共同作業

正直、この経験をどう生かすかは、最近まであまりピンときていませんでした。そう、最近ピンとくる出来事があったのです。

それが、契約の途中で「顧客が追記を希望している業務は、法律上は弊社で対応して問題ないが、果たしてその業務をこの顧客に提供し続けることをお約束出来るか?」という部分について営業担当に確認した時でした。

そこで、営業の担当者から「これは担当同士の見落としで、顧客との事前の擦り合わせが済んでいたものが先方法務に伝わっていなくて、契約書に修正依頼がきてしまった」という話を聞いた時に、スッと落ちてきたものがありました。

そう、雛形はあくまで雛形であり、本来は契約書の修正は会社同士が合意した内容を契約書に反映させていく作業です。その作業には「合意形成」のプロの営業担当と「契約書に反映する」プロの法務の双方の協力が必要であり、どちらも「自分の仕事」として取り組むのが理想なんだと思いました。

契約書を締結するのは、営業と法務の共同作業である。だから、私は営業から顧客の状況をヒアリングするところから契約書修正を始めるべきだし、営業メンバーは合意の内容や顧客の温度感を伝えることを、自分の仕事だと思ってやってもらう。

そうやって一緒に顧客と向き合って、契約内容を詰めて、契約締結していく経験ができたら、昔の私のような営業さんも、もう少し契約書のことを「自分事」として捉えて一緒に頑張れるんじゃないかと思っています。

終わりに

今回営業時代を振り返り、当時の不満を考え直してみて、やはり「立場が違えば見えるものは違う」ということを改めて感じました。

実は法務をメインに業務を行うようになったタイミングで、法務以外のサービス的な視点を忘れるのが怖いな...と思って、色々と調べた時期がありました。その中で、「バックオフィスこそ自分の顧客を定義しよう」という記事を読んで、慌ててトライしたことがあります。

今、法務には「弊社のメンバー、メンバーの先にいるお客さん、そして弊社法人」の三種類の顧客がいると定義して、私は全員の顧客満足度を上げるために仕事をしています。そうすることで、少しでも営業の要素も含む、サービス目線を忘れないようにしたいと思っています。

ちなみに今のところ、忙しくなるたびに思い出すことで、顧客を定義した効果は感じているので、おすすめです!

さて、ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
今年のアドベントカレンダーはまだ経験ベースですが、来年は知識ベースで書けるように、これから一年さらに進化していきたいと思います。

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