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法務しかできないんじゃなくて、色々できる中で法務を選びたいというのは、贅沢だろうか? 〜半年間の事業部兼任チャレンジを経て学んだこと〜

この記事は法務系アドベントカレンダーの12日目の記事です。@kanegoonta さん、今年も企画していただき、ありがとうございます。みなさん大好き足立先生からバトンを受け取って書いております!大丈夫です!バトン受け取ってます!!笑

さて、個人的にアドベントカレンダーでは毎年「今の自分の限界を出し切る」ようなnoteを書いて、それを怖がりながら世に出してみようというチャレンジをしております。いろんな意見で叩か…励まされることで、次の年のはずみにしたいという気持ちがあり、今年も震えながら全力で書いていきたい所存です!

さて、今年は「ビジネス系の職種と法務の兼任」という、自分なりに大きなチャレンジをしたので、そこで学んだことについて書いてみようと思います。今までも人事や総務や労務等、バックオフィス系の職種を兼任したことはあるのですが、初めて「売上」に直結する部署と兼任したことで、色々とお土産を持って帰ってきました。

毎月noteを出しているのですが、このnoteはまだ結論の出ていない迷いとかもふんだんに含んでいるので、いつもよりふにゃふにゃしてますが、そういう回だと思ってご笑覧ください🦈


簡単な自己紹介

最初に簡単に自己紹介させてください。LAPRASで法務部門の責任者をしています、いいだです。新卒で法務に全落ちし、諦めきれずに3回転職して、現職でようやく法務になれてもうすぐ4年になろうとしています。

サメが好きでお調子者な、ひとり法務担当です。毎月「数年前の自分に教えたいこと」というコンセプトで、noteを1本書いています。

兼任のはじめの一歩

私は現職で色々な職種と法務の兼任を経験しており、割と兼任にはポジティブです。元々、少人数組織が好きで、ひとり法務が好きなので、今後のキャリアのためにも「兼務」できる職種なんて、なんぼあっても良いですからねという感じです。法務だけで一人月分の仕事がないサイズのベンチャーにキャリアの軸を置くなら、法務以外の職種もこなせる必要性があるんじゃないかなという思いもあります。

一方で、もちろん他の部署には当然その仕事のプロがいるので、普通に「初心者で、兼任なので片手間ですが、経験積みたいので入れてください」だとただの迷惑になってしまうのが難しいところです。そんな中、今回は企業向けマーケティングのチームが猫の手も借りたいくらい忙しくなっており、私がSNSやnoteや若手向けイベントをやっていることで最低限のマーケティングの素養はあるんじゃないのか?ということで、無事に半年間法務と兼業でさせていただきました。

改めて、その道の初心者かつ法務の私を受け入れてくれたメンバーには感謝しかないです。ありがとうございました。そしてやっぱり、やってみると法務とは全然違う大変さがありました…。

ビジネスサイドに入ってわかる「売上」のシビアさ


ビジネスサイドで仕事をしてみて、法務と一番違うと思ったのは「売上」や「数字」に対するシビアさです。もちろん、法務としても契約書はできるだけ早めに返そうとか、事業側の売り上げに繋がる施策はできるだけ通せるように頑張ろうと思っていましたが、その「切実さ」が全然違いました。

売上に繋がるまでの数字だけを見ると、すごくシンプルに例えると「10人が知ってくれて、5人が興味を持ってくれて、3人が商談に来てくれて、1人が契約してくれる」といった形で、各フェーズで割り算されて最後の売り上げに繋がります。つまり、売り上げをたくさん作るためには、最初の入り口の件数を広げるか、次のフェーズへの移行率を改善する必要があります。つまり、業務の成果が算数でハッキリと分かるのです

そして、数字だと「達成」「未達成」や「改善できた」「できていない」が一目瞭然で、数字で評価されるが故に、数字に対する意識がやっぱりビジネスサイドのメンバーと自分では圧倒的に違うと思いました。さらに、ベンチャー企業では、目標数字が達成されないことが会社の経営に与えるインパクトが大きい。そうなると、日々の全ての活動に「切実さ」があって、和やかにワイワイしていても、トリガーがあるとあの「ピリッとした空気」に一瞬で戻る。この空気感は、きっと中に入らないと味わえないものだったと思います。

私自身は一社目で営業を経験しているのですが、その際は新人だったこともあり、「自分が未達でも会社は潰れない」という油断もあったので、今回体験した「切実さ」とは程遠い環境でした。どんなに和やかにしてても、楽しく働いていても「売り上げを上げる」責任がついてまわる感覚は、言語化が難しいのですが「切実さ」という言葉が一番しっくりきています。

法務で例えるなら相当面倒な株主総会を終えた後、ややこしいかつ失敗できない登記を申請して登記完了を待っている間に完了予定日付近になった感覚(補正に怯える感じ)に近い気もします。ふとした瞬間に、ぬるっとした不安が湧き上がってくる、あの感覚…(嫌な思い出の扉をそっと閉める)。それが毎年、毎月、毎日繰り返される日常というのは、結構私には耐え難いなと思いました。

最初は「どうせなら数字目標も貰おう!」と意気込んでたのですが、割と早々に断念しました。素人が覚悟なく気軽に飛び込んで良い領域じゃない。もちろん、自分にそういう業務の能力や適性や経験がないからそう感じるのかもしれませんが、売り上げに繋がる仕事をしているメンバー全員、すごいな…どういうメンタルしてるんだ…という気持ちになりました。尊敬の念なんて通り越して畏敬の念です。いや、すごい。

法務をやっていると「契約書くらい読んでから回してくれ〜」と思うことがありますが、このシビアな戦いの最前線に放り込まれてみたことで、「え、契約書読んでくれた!?あなた、戦いながら後方支援にも配慮してくれるの!?好き!!」という感じのテンションに変わりました。もちろん、社内のルールとして設定したものは守ってほしいですが、少数精鋭で前戦で戦うメンバーへの尊敬は忘れないようにしたいという思いは強くなりました。

浮き彫りになる、自分の「事業」への解像度の低さ

ビジネスサイドと兼任を始めて、自分の事業への解像度の低さも改めて分かりました。恥ずかしながら「フィールドセールス」「インサイドセールス」「営業企画」「マーケティング」等がそれぞれどういう役割なのかも今までは分かっておらず、ぬるっと「売上に繋がる仕事の人たち=営業関係」位の解像度でした。また、「目標の売上」を達成するために、どのチームがどういった目標を追っていて、レビュー依頼が来ているこの施策や契約はどの部分に効いてきて…みたいなものは、今まで全く法務として考えられていませんでした。

もちろん、法務としては肩入れせずにフラットな目で見ることが大事だし、いくら切実なものでも危ないものは「できない」と言う必要もあります。一方で、法務が考えている以上に「切実な」背景があるものもあり、それを法務がカジュアルに却下してしまうことの怖さについては、改めて自覚しようと思いました。会社の命運がかかっているぞと震えながら法務回答するくらいが、ちょうど良いのかもしれません

また、事業部に入って驚いたのが、予想以上の「正解のなさ」です。例えば、最初の入口を広げる方法にも無数の選択肢があり、次のフェーズへの移行率を改善する施策にも無数の選択肢があり、その中から"確からしい"ものを抽出して、究極は順に「試していく」ことで成果を得ることは、私からすると驚きでした。ビジネスサイドの人からすると、なんだそんなの当然だろと思うかもしれませんが、法務はやはり「法律」と言う拠り所があるので、そこは本当に仕事のやり方が根本から違うなと感じました。

元々「ロジカルシンキング」とかの重要性が正直ピンと来ていなかったんですが、本当に無数の選択肢がある状態で、より"確からしい"ものを選び出すためだと分かると、急にとても有用なツールに思えてきました。もちろん、ある程度ビジネスの「型」とか「正攻法」みたいなものはあって、私には見えていない部分も当然あると思いますが、それでも上手くいくかどうかは「やってみて」初めて分かる部分があるのが、ビジネスサイドの仕事の独特さだと感じました。

裏を返せば、私は法務で何か選択肢を出す際には「有限」だと感じているんだなというのも発見でした。私にとって法務の検討は、ある程度「XX法のガイドラインとこの本を読んで、最後この先生にリファレンスとれば答えとして十分出せる」みたいな筋道があり、「答えが出せないのは自分の勉強不足」だと思っている節があります。

もちろん、法整備が追いついていない分野とかはもう少し不確定性が高いですが、それでもビジネス職の不確定さが体感50%くらいだとすると、に比べると、法務の不確定さはちゃんとやれば10%以下くらいで、それはやっぱり「法律」と言う拠り所があることによるものが大きいんだなと思いました。

シンプルに、私が初めての仕事内容だったので、不確定さが大きく見えているという側面もあると思います。法務の不確定さだって、法務に専門性がない人がやればもっと高いだろうし。ただ、この件を飲み会でいろんなビジネスサイドのメンバーと話したら「そういうものだよ」とか「だから楽しいんだよ」と返ってきたので、専門性のあるメンバーでも不確定さと同居していそうだと思っています。

不確実性の高いものに対して挑んでいくのがビジネスサイドであるということは、今まで全然理解できていなかったですし、「事業」や「売上」というものに対する解像度が兼任によって劇的に上がりました。今後、法務として契約書を作ったり、事業の相談に乗る際には、「後方支援なのに、そんなとこまで理解してるの!?好き!」と言ってもらえるように頑張ろうと思います。

おまけ:法務以外でも使える、ビジネススキルとは?

さて、ここまで全然役に立ってなさそうな感じなのですが、実は猫の手くらいには役に立つ場面もありました。いわゆる「職種特有」のハードスキルはほぼ0になっても、「個人の性質」であるソフトスキルは役に立ちますし、「法務をやっていたからできる」こともありました

例えば、シンプルに日本語の読み書きが早い&論理的で誤解の少ない文章を作れるというソフトスキルは、普通に記事制作のライティングに役に立ちました。ひとり法務で色々な依頼の納期管理をしているノウハウが、制作管理やSNSへの投稿への管理という観点で役に立ったり、ひとりであるが故にルーティーン業務をできるだけ「型化」するやり方も、猫の手も欲しい状況の部署だったこともあり、割と重宝するスキルだったと思います。

また、「法務でだけ役立つもの」って意外と少なくて、コミュニケーションスキルとか社内の人脈とか情報収集方法とか気配りとかは「どんな仕事でも役立つもの」なんだということも、改めてわかりました。社内のサービスやビジネスを横断的に知っているため、他のチームの情報をいち早くキャッチしてきたり、助けを求めるべき相手を知っていたりということは、ある意味一番役に立ったのではないかと思います。言葉で伝えるだけではなく、体験としてそこが得られたのも大きかったと思います。

この半年は、法務の目線としては「うわ〜ビジネスのこと全然分かってなかったわ」という感覚でとても反省の多い半年間でしたが、ビジネスサイドの新入社員の目線としては「企画は無理だけど、誰かが作った企画を回すくらいのスキルはあるんだな」という感覚で少し自信のついた半年間でもありました。

そして改めて、私は「法務」という仕事が一番好きだということも再確認しました。法務になりたくて転職を繰り返したのに、失敗すると「法務向いていないかもしれない」と身勝手に落ち込むこともあるのですが、私はやっぱり骨の髄まで法務の人間なんだなと思いました。残念ながら、リソースに限りがあるのでこれ以上の兼任継続は難しくなってしまったのですが、まだ言語化できていない内容も含めて本当に学びの多い半年でした。

改めて、サポートしてくれた社内のメンバーには心から感謝しております。

法務しかできないんじゃなくて、色々できる中で法務を選びたい


今の会社がホラクラシー組織なのを良いことに、私は法務を軸にしつつも、ずっと色んな職種との兼任を続けています。経験の浅い深いはありつつも、"体験"したことのある職種だけ並べると、片手では足りないくらいあります。

冒頭にも書いた通り、「小規模組織で法務をやるため」の生存戦略として兼任している部分もあり、他にできる仕事が増えることも嬉しいですし、他の仕事を経験しているから持てる「視点」は、法務に帰ってきた時の自分を、どんどん強くしてくれる感覚もあります。

一方で最近気づいたのはそれ以上に「法務しかできないんじゃなくて、色々できる中で法務を選びたい」という気持ちが自分の中にあることです。「法務しかできないから法務をやっている」のではなくて、「何やらせてもできる人間が、法務をやっている」方がかっこいいと思うのは、流石に贅沢でしょうか?笑

法務は勉強の蓄積の職種なので、20代後半でようやく法務になれた私には、ちょびっと不利なレースだったりします。でも、色々な職種で経験する中での学びを「法務」に全部持って帰って来れたら、この不利さが少しは和らいだり、違う視点で飛び抜けたりできないかなという思いもあります。この道は、小規模なベンチャーにいて、資格や肩書きもなくて、他職種から法務になった自分だから歩ける道なんじゃないかな。そうだといいな。

あとシンプルに「あの人、なんでもできるんじゃない?」って人が、最後に選び取る職種が「法務」だったら、なんか自分が「法務」を選んだことが誇らしくなるなって。勝手なイメージですが、そういう人って結構ビジネスサイドの花形部署にいるイメージがあるので、法務にもそういう人がいたっていいじゃないという気持ちもあります。(そういう人になれるかは自分次第…)

「法務しかできないんじゃなくて、色々できる中で法務を選ぶ」その辺りが私の法務4年目のテーマになる気がしており、今年はこんなnoteにしてみました。またここから1年、試行錯誤していこうと思います。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

法務のアドベントカレンダーは、まだまだ続きます。明日は高畑先生のエントリーです!
肩の荷が降りたので、ここから2週間はじっくりと他の方のエントリーを眺めて楽しもうと思います。

皆さんに、素敵なクリスマスと素敵な年末が訪れますように🎄🎍🦈✨

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