見出し画像

私以外私じゃないの?

私たちは会社の歯車なのか?
――そんなことないよ!壊れても会社は大して困らないし

という小噺がありますが,そういえばベッキーさん,川谷絵音さんもそれぞれにご活躍のようでなによりです.

 本日は経済もビジネスも関係ない雑談です.

 メディアで発言するタレント・コメンテーター・文化人のなかには「〇〇大学教授」や「〇〇大学客員教授」といった肩書の方がたくさんいます.なかには「えっ!?この人も大学の客員教授なの?」という意外な人も.
 個人的過ぎて共感を得られないかもしれませんが,メディア出演時に肩書(大学名)を名乗らない人があまり好きではありません

客員教授のあれこれ

 まずは,有名人で客員教授や客員研究員の場合.有名人の客員教授は,

◆名誉職:授業負担ゼロかたまにテーマ講義で一コマ話すくらい.無給のこともある.
◆非常勤講師の美称:週1~数コマの講義を担当する……担当コマ数に応じて給与が支払われる.偉い先生とか有名人に「講師」だと座りが悪いので客員教授すること有.

※海外や国内他大の専任教員が滞在先で客員教授になるケースももちろんあります(というかそれが本来の客員教授だよね^^)

 大学がタレント・文化人の方を「客員教授」にするのは,メディア出演時に「〇〇大学」と名乗ってもらうためです.あとはパンフレットに名前と顔を乗せるため.要は広報活動なわけです.
 出演時に大学名を出さないのは...…広報活動への参加を求められているのに,その仕事をやらないということ.なんというかすごく無責任に感じるんですよ.断固プロフィールに入れない客員教授引き受けるなよって.

 もっとも,大学によっては「名乗らなくてよいで何とか客員教授になってください」「何もしなくていいので客員になって下さい」といって引き受けてもらっているところもあるそうです.でも...…大学側にはちょっとした下心あるんですよ^^ 長めにプロフィール紹介あるときにはチラッと出してくれないものかなぁって.
 せっかく縁あって客員引き受けてるんだから,自分にとって負担にならない範囲で客員もらってる大学の名前は出していきましょうよ.

専任教員で文化人の場合

 さて次が専任教員の場合.「専任」ってなんぞ!?と思われるかもしれません.そして,ここが大学人事の難しいところです.20年前なら,

◆専任教員=教授・助教授・専任講師(大学によっては助手)で任期の定めがない,いわゆる正社員みたいなもん

と説明すれば十分だったんですが,現在は……

◆任期付専任教員=雇用契約は常勤だけど3~5年の任期がある.肩書に「任期付」とつくわけではないので,外からは区別がつかない.
◆特任教員=任期付専任の一種.官庁や業界団体から出向で数年間大学で教える場合,旧帝大などを定年した後に他大に移籍したケースなどによく使われる.
◆テニュアトラック教員=任期付だけど任期終了時に最終審査を経てテニュアの専任教員になることができる.試用期間付の正社員契約のような制度.テニュアトラックですと言っておきながら実際は単なる任期付とかわらない(テニュアに全然上げない)という酷いところもあるという噂も?

と多種多様.以上のタイプの教員は学生何人につき専任教員何人...…といった文部科学省審査では「専任」として扱われるます.
 一方で大学教員が会話のなかで「専任」という場合は,任期の定めなき(=テニュアの)正規雇用の教授・准教授・専任講師を指すことが多いです.昔の「専任」のイメージね.霞が関の人と話していると時々この手の用語法のすれ違いで誤解が生まれることがある.

 さて話を元に戻しましょう.大学の専任教員でメディアに出ている人……これは肩書ちゃんと目立たせないとだめだよ!

 テロップには「経済学者」じゃなくて「明治大学教授」……できれば「明治大学政治経済学部教授」と書いてもらうべきだ.

 だって,本来ならば24時間365日教育・研究・大学業務……に専念すべき立場なのにテレビとかラジオとか出てやがるんだよ? 
 これらの教育・研究・雑用以外の活動を大学が認め(or黙認)してくださってるのは……これまたメディアでの大学名の露出に広報上の価値があるからだ.その御恩に最大限報いようと考えない人とは,私は,あわないなぁと思う.

 だからcozy upのエンディングではいつも「ニッポン放送飯田浩司,明治大学飯田泰之,新行市佳でおとどけしました~」なのです(新行さんまで明大教員みたいになっちゃってすまぬ^^)

中二病ケース

 タレント・文化人系とは全く別の理由で大学名を名乗らない方もいます.私が番組スタッフとの打ち合わせて出くわしたのは,

「私は〇〇学者で,▲▲大学は勤務先にすぎません」

みたいなことを御ホザきになっている人.知らんがな.番組が呼んだのは「有名大学教授の人」なんだよ.あんたが何者かとか知らねーわ.大抵の場合,あんたじゃなくても他に手ごろな有名大学教員がいればそれでいいんだよ.(と憤りつつ収録後どこに飲みにいくか考えてた)

 もちろん,このようなメディアの専門知軽視の風潮はよいことではない.しかし,現状でオファーを受けて幾ばくかのおあしを頂戴できるのは・・・・「経済学者 何の何某」ましてや肩書無しの「何の何某」だからじゃなくて「有名大学教授」だからなんです.そのあたりを自己認識できていない人はもう少し大人になった方がいい.
 ついでに,せっかく大学名や教授の肩書が自分の発言の説得力を高めてくれてるんだから……素直に利用しときなって!

 ご多分に漏れず,「明治大学教授で経済学者の飯田泰之さん」の説得力もそのかなりの部分は「明治大学」「教授」に,あとは「経済学者」あたりに宿っています(ゆえに説得力がない場合も大学と職階と経済学のせいなので私は無関係ですんで私を責めないでください).

 ただし,この風潮にも弊害があって……東大・京大あたりの名誉教授だとメディアが現職である「国際信州学院大学教授」とかではなく「東京大学名誉教授」を使いたがる.でも現勤務大学としては,高視聴率番組出るときとか大学名名乗ってほしいと思うんだよなぁ.雑誌のプロフィールトップについて某経済学界の大物は「名誉教授」ではなく「〇〇大教授」にしてください……と指定されるとのこと.個人的に尊敬してます.

大学だけじゃない

 実はこの手の話,大学業界以外でもよく聞くんだよね.県庁やその関連機関,あとは大手企業勤務(や元職)で地域再生について活動されている人とかでよく見かける.

 わざわざ会社と違う名刺を作ったり……「私は電〇の力で仕事をしているのではないですよ」アピールをしてくる人.「〇通であること以上に△△さんであることが重要」というキーマンももちろんいます.でも,そうじゃない人の方が多い.
 何なら一通り「私は県庁の力で仕事をしているのではないですよ」とアピールしてきた後にする話の半分が県庁時代にで自分が手掛けた仕事の自慢話だったりする.

 最近流行の大企業出身者を地元企業に迎える/観光DMOの理事長に迎える……というのも成功例ばかりではありません.立派で仕事ができるように見える人も,実際には勤め先が素晴らしいバックアップ体制や権威・取引ネットワークをもっているからにすぎない可能性もあります.
 少しだけ擁護しとくと,組織の資源を最大限上手に使いこなすというのはビジネスパーソンとして素晴らしい能力なんです.しかし,植物はどんな土壌でも綺麗な花を咲かせるとは限らない.

 大組織にいると,ついつい「自分の実力」と「肩書の力」がないまぜになってしまいます.そんな時は……

自分の実力の
半分は肩書のおかげ
半分くらいは相手の勘違いのおかげ

くらいに思っておくと良いと思います.かっこ悪いおじさんにならないためにも,30代以上のみんな気をつけていこーぜ!!
 そして,「この人はデキる」と感じたときも少しだけ冷めた目で...…そのパフォーマンスのうち肩書に依拠する部分がどのくらいあるかを見極めなければなりません.

宣伝

 6/6(火)と6/24(土)に生配信企画をやります.メンバーシップ・メルマガどちらかの会員なら視聴できるよ! また,過去の放送のアーカイブも見られるので……初月無料だし,ちょっと覗いてみませんか?


ここから先は

0字

サポートに限らずリアクションは執筆の励みになります.今後もコンテンツ充実に努めてまいります.