【飯田線各駅訪問】46 田本駅
険しさに圧倒させられる
毎年更新されている全国秘境駅ランキング。一時は駅までの外部到達路の存在しない駅を除けばトップにたったこともある田本駅だが、近年はランクを当初より大きく下げている。地図で見ると集落までの距離は短く、その道中も四国にあるほぼ同レベルの秘境駅・坪尻駅のような荒れた道ではない。その上、飯田線の駅だということもあるが通過する普通列車は決して多くはなく、「列車到達難易度」もそこまで高得点はつかなさそうだ。
そんな田本駅が何故、ランキングを全国3位というところまで上り詰めたのか。ランキングを定める牛山氏が当駅へ訪問したところ、インパクトが強く一度は高い順位につけてみたものの、実際にはそこまで山奥ではないことが災いして徐々に他の駅に抜かれていった…というのが、私の勝手な予想であった。
そんな中、私の中でも知らず知らずのうちに、この田本駅は大して秘境ではないと思うようになっていたのかもしれない。それだから、今回の訪問においても期待はしていなかったのだ。
列車が止まりドアが開いたのだが、いきなり目の前に壁がいきなりある。行き場がないのではとさえ思わせる狭い空間に降り立つと、列車は徐々に速度を上げ山々にその音を驫かせながら消えていった。
断崖絶壁が駅の背後を固め、本来は無人の地に佇む開放感を味わえるはずが逆に閉塞感に満たされている。ホームから線路を挟んだ反対側は天竜川へと急な崖が続いており、よくぞこのような場所に線路を通し駅を造ったと感心してしまった。駅の上方の展望台からはこの地形を一望できるが、あまりの険しさに言葉を失った。
この圧迫感は他の駅にはない独特なものである。地形の険しさで付近の人家を誤魔化していると言うのも嘘ではないが、路線内の小和田などとはまた違う種類の秘境駅だ。
そんな駅の滞在時間は僅か7分ほどで、乗車する列車が来てしまった。その後に他にもいくつかの駅を訪問したが、なんだか何処も物足りない。他の駅が今ひとつに見えてしまったのは残念だといえば残念だが、これは田本駅の悪戯による嬉しい誤算だ。それだからこそ、ここへの再訪は必至である。その時はもっと時間が欲しい。
なお、私はこの駅が地元客に利用されているところを何度か目撃したことがある。秘境駅として有名な当駅だが、実際にはのどかな日常が繰り広げられているようである。
訪問日:
2024年03月17日
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