自助グループについて

#2023創作大賞

私は27歳の時にADHDの診断を受けてから、お薬や認知行動療法やSSTなどを試してみました。結論から言うと、支援者や医師が勧める発達障害の対処法は、私にとってはどれも効果ナシでした。どれも「生き辛さ」そのものが軽減する訳ではないからです。まえがきにも書きましたが、途方に暮れていた時に出会ったのが「自助グループ」でした。

※類似の呼称として「セルフヘルプグループ」「自助会」「当事者会」などの表現がありますが、本書では自助グループに統一します。

発達障害の自助グループは、当時まだまだ数が少なかったので、ボランティアで主催することにしました。最初は2人からスタート。6か月は二人だけで毎月一回喫茶店でお茶しながら、自分たちの近況をお喋りしました。とても楽しかったことを覚えています。今まで家族や友人に自分の発達特性を話しても理解してもらえませんでした。しかし、当事者同士なら「あるある」だらけで、笑い話になるのです。生まれて初めて共感してもらえたことが、私の生きる希望になりました。これが自助グループの最大の効果と言われている「分かち合いと勇気づけ」です。
また、自分以外の当事者の話を見聞きすることで、自己客観視が出来るようになります。お手本になる人もいれば、反面教師として自戒しなければと思う人もいるからです。多くの人の失敗パターンや成功事例を取り入れることができたので、私の生き辛さは一気に軽減していきました。

その後、メンバーは順調に増えていき、地域のフリーペーパーに記事として掲載されました。この記事を見て一気に私たちの自助グループの参加者は20人を越えるようになりました。しかし、人数が増えると問題も発生します。当時、私たちのグループは当事者もその家族もごちゃ混ぜにしていたので、立場の違う人同士では「分かち合い」がしにくくなっていました。最終的には、家族の話を聞いていた当事者が、自分の過去を思い出して、参加者を責めるような発言をするようになりました。これがキッカケとなり、私たちのグループは、家族と当事者の会を分けることにしました。それ以降は、揉め事が起こる前に、参加者が20人を越えると強制的に翌月から会を分化させるルールになりました。これによって、現在は39グループ(2023年6月時点)の小さなグループに分かれて、それぞれが独立して活動しています。39グループの総称が現在の「さかいハッタツ友の会」です。2022年実績で年間298回開催(オンライン含む)、年間ののべ参加者2000人以上。これは発達障害の自助グループにおいて日本最大規模です。まだまだ拡大を続けています。

私は自分自身の生き辛さを一人では解決できなかった人です。自助グループがなければ診断を受けることも出来ず、生き辛さに対処することでも出来ず、いまだにトンネルをさまよい続けていたことでしょう。世の中には発達障害であっても社会的に成功している人や、みずからの力で対処した人も沢山います。私にはそんな能力はありませんでした。自助グループでピア(仲間)に出会えたから、いま生きていることができると痛感しています。だから、全国に自助グループを広める活動をボランティアでしています。私と同じように、自助グループによって救われる仲間が少なからず居ると考えるからです。私のように一人ではどうしようもないけれど、仲間がいれば自力で立ち上がれる人が居るからです。ただ、自助グループの運営には課題もあります。本書では、それらの課題について、さかいハッタツ友の会がどのように対処しているかを紹介します。

自助グループとは?
さまざまな見解があるかとは思いまずが、本書では以下のように定義します。
・自助グループ:当事者または家族、支援者、企業担当者それぞれが集まって共感や分かち合いを行う会
・当事者会:自助グループの中で、当事者たちが集まる会。この会の運営者を「ピアリーダー」と呼ぶ。
・家族会:自助グループの中で、主にその家族が集まる会。この会の運営者を「ピアサポーター」と呼び。
・その他、支援者が集まる「支援者会」や企業の担当者が集まる「会社会」などがある。

自助グループの効果や役割
本書では、自助グループの段階に応じた効果や役割を記す。

〇第一段階:設立~2年程度
10人程度の小規模なピアによる「分かち合いと勇気づけ」
「勇気づけ」とは他者からの声掛けではなく、参加者本人の中に芽生える「生きていけるかも」という希望を指す。

〇第二段階:3年程度経過
グループの存在している地域の社会資源や支援機関の「生の情報(評判や内情)」の交換。
その他、発達障害に関わる医学情報やライフハックなどの共有。

〇第三段階:5年程度経過
支援機関や医療機関等との連携および協働

〇第四段階:10年前後経過
複数グループで運営することで、多様なニース(属性や開催地域、開催時間帯や曜日)に対応する。

〇第五段階:20年以上
全国組織として当事者全体の意見の吸い上げ、および各所(マスコミや行政機関など)への発信や働きかけを行う。

留意点
1,各段階は単純にグループの継続年数によって進捗する。

2,グループの段階に応じて、それぞれ担う任務が異なるということ。
手前段階のグループが、これらを経ずに「後段階」に関わろうとすると、力不足で主宰者が消耗する。主宰者の消耗はグループの消滅に直結するので、注意が必要。

3,後段階に進捗したとしても、第一段階の「分かち合いと勇気づけ」をおろそかにすると、グループは崩壊する。

4,後段階に進捗するために特別な事はしなくてよい。「プラントハプスタンス(計画的偶発性)」によって、年数と共に進展していく。

5,恣意的に組織化することはNG。あくまで個人で出来る範囲に留めることが重要。

自助グループの特徴は、これら段階に応じて役割を専門家や有資格者でなくても担うことが出来ること。
むしろ、専門家や支援者が出来ないことをカバーすることが出来る。
ゆえに、自助グループは単なる当事者の集まりに留まらず、社会や地域にとっての「社会資源」ととらえることが出来る。
もちろん、自助グループは万能ではない。しかしながら、大人の発達障害について研究が進んでいない現時点において、質的にも量的にも最も実効性のある対処法であることは間違いない。

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発達障害の自助グループ設立マニュアル
ihi1484 #note https://note.com/ihi1484/n/nf4ac356282b4

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