高橋明也・冨田章・山下裕二『初老耽美派 よろめき美術鑑賞術』(毎日新聞出版)
作品楽しむ極意ゆるく
初老耽美派は、還暦を過ぎた美術史家3人が酔った勢いのまま冗談半分で結成したユニットである。鼎談形式で語られる本書は序盤から初老トークが炸裂する。やれ腰が痛いだの、老眼で見づらいだの、トイレが近いだの初老談議は尽きない。
私たちが考える理想の美術鑑賞は、万全の体調で好きなだけ作品と向き合うというものだろうが、実際は自身の体調や美術館の物理的な環境に左右されることが多い。むしろ美術鑑賞はそういった身体的・物理的制約に条件づけられていることを本書は再認識さ