カナダの空港に閉じ込められ、映画『ターミナル』の状況になった件。
皆さんは、スティーブン・スピルバーグ監督作品『ターミナル』のような状況になったことがあるだろうか?
私は、ある。
ここでは、その顛末を語ろうと思う。
この記事の存在意義は、ただ一つだ。
この記事を読むことで、あなたが空港に閉じ込められ、映画『ターミナル』のような状況になったときに対処する手がかりとなるだろう。
前回のおさらい
・シリコンバレーに死ぬほど行きたかったからGWにチケットを取ったよ
・100万円のアメリカ行きチケットがカナダ経由にするだけで30万円になったよ
・行動すると人生は変わるよ
日本出発当日、成田空港にて。
休暇は7日間の予定だったので、日本食はしばらく食べられないだろうと悟った。
日本を出発する前に成田空港で、うどんを食べた。ダシの味が効いていて、美味しい。
これから日本を離れるというのに、なんだか後ろ髪を引かれる思いだ。
国際線ターミナルへ
大型連休中ということもあり、成田空港は混んでいた。
とはいっても混むことは予想はできていたので、事前にオンラインでチェックインを済ませた。
チェックイン窓口は人でごった返していた。長い列に並ぶ人は、休日だというのに疲れている表情だ。
荷物も機内に持ち込めるサイズのキャリーケースしか持たなかった。
たったこれだけで、ロストバゲージ(空港の手続き等で荷物を紛失したりすること)の確率は大幅に減らせるし、荷物を空港のカウンターに預ける必要もなくなる。
必要なものなんて現地で買えばいいのだ。
楽々と、搭乗手続きを済ませる。
「調べないだけで、損をしてしまうのが世の常だ」としみじみ感じながら、国際線の搭乗口に到着する。
日本→カナダ便の飛行機にて
飛行機に搭乗し、座席に座ると、隣座席の西洋系の乗客が話しかけてきた。
まだ国内だと言うのに、まさかの英会話スタートである。
正直に言う。
私の英語力は中学生レベルだが、完全に開き直っている。
それが私の長所だ。
こんなこともあろうかと、Google翻訳アプリをオフラインでも使えるよう設定しておいたのだ。
友人とのグループLINEにメモが残っている。
事なきを得た(得てない)
そして、カナダ行きの飛行機が出発する。
スマートフォンを機内モードにし、Prime Videoでダウンロードしていたスティーブン・スピルバーグ監督の『ターミナル』をのんきに観ていた。
この映画は、私のお気に入りだ。
私は空港という、非日常的な空間が好きだったのだ。
思い返すと、これが分かりやすいほどのフラグだった。
人生初のカナダ
私の乗っている機体は、カナダにあるカルガリー空港に無事到着した。
窓から見た自然が美しい。飛行機旅は良いものだ。
カナダのカルガリー空港に到着
空港に到着すると、内装のセンスがやたらといいことに気付いた。
私は、カナダを一目で気に入った。
回線オタクなので、早速空港のフリーWi-Fiのスピードテストをする。
申し分ない速度だ!! !
テンションが上がった。
カナダはIT先進国かもしれない。
カナダで「アメリカの入国審査」をする
豆知識だが、カナダとアメリカは協定を結んでおり、特例として「カナダ国内」でアメリカへの入国審査ができる。
アメリカの空港で入国審査するより空いているので、入国審査は比較的スムーズだ。
なのでカルガリー空港内で、アメリカの入国審査列に進んだ。
以下は、その時の会話だ。
※ しょうもないが「Have I」と疑問形にするのを忘れた。とっさに話すのは難しい。
別に英語ネイティブではないから、イントネーションとノリでなんとかなると信じたら、実際なんとかなった。
「俺はプログラマーだ!! 世界で最高のシリコンバレーに行きたいんだ!!!」みたいなことを全力で語った。
本心なんだから、仕方ない。
すると入国審査の人も、ノリよく返してくれた。
旅行は、こういうところが楽しい。
カナダ→アメリカの便にて思わぬトラブル
無事、カナダ発・アメリカ行の便に乗るが、外を見ると雪が降っていた。
4月末にしては珍しいが「カナダは寒い国だしな」と気にもとめなかった。
しばらくして、機内でアナウンスが流れる
どうやら、雪の影響で飛行機が遅延するらしい。
ろくにリスニングできなかったので、隣の乗客の方に「これから、どうなるんでしょう?」と聞いた。
「俺だって分からないさ」というようなジェスチャーをされる。「それもそうか」と納得し、お礼を伝えた。
俺はカナダの雪を舐めていた
数十分は経っただろうか。雪の勢いは増すばかりだ。
突然、機内アナウンスが流れ、便が大雪で欠航した。
隣の方がそれをジェスチャーで教えてくれたのだ。めっちゃ優しい。
そして、乗客全員が飛行機から降ろされた。
ちょっと、これは想定外だ。
ちなみにエア・カナダからは、機内で欠航用パンフレットを渡されただけだ。「ドライだけど海外っぽいな」となぜか感心してしまった。
パンフレットを読んでみたら「一日欠航したら、近くのホテルを取りましょう」みたいな「そりゃそうだろう」としか言いようがないことしか書いていなかった。
すぐにTripAdvisorで探すが、大雪で周辺のホテルの予約は埋まっている。
空港に輸送される乗客たち
カナダ→アメリカ便なので、周りを見る限り欧米人がほとんどだ。言葉も通じない。
そして、ここは海外だ。
いくらカナダの治安がいい方だといっても、そこら辺の見ず知らずの人を信じてはいけない。
結構、危機的状況だ。アドレナリンが体内で放出される。
とっさに新人のときに、会社の先輩が教えてくれたことを思い出した。
「なにかトラブルがあったら、なによりも状況を整理することが重要だ」と。
すぐにiPhoneのメモ帳を開き、状況を書き出した。
不足していた情報は、つたない英語で空港の係の人にヒアリングした。
1. これからカナダに入国するための入国審査が必要
2. どうやら便が欠航した以上、カナダへの滞在許可を1日伸ばさなければならないらしい。
3. トランジットの優遇措置は使えない。観光用ではないビザを発行してもらわなければいけない。
ろくに言葉も通じない中、外からも人が入る空港で単独行動するのは危険だと判断し、同じシチュエーションの日本人を見つけようと思った。
乗客数を考える。
状況を考えて、数組程度は日本人が同じ便にいてもおかしくないと概算した。
また、状況を整理する。
1. 同じ状況の日本人を見つけられれば心理的に楽になり、判断力をキープできる。
2. 日本人乗客を見つけるのが重要だ
3. 急がないと機を逃すかもしれない
国際線のターミナルに帰されたあと、まずカナダ国籍の有無で、入国手続きの待機列が別れた。
日本語で片っ端から日本人っぽい人に声をかけて、なんとか日本人の家族(夫婦・子供一人)を見つける。
話を聞くと、日本人の家族は私と同じく英語があまりできない。
それでも、海外旅行が好きで各地を回っているようだ。
そして、こういったトラブルに度々あっているらしい。それもいい経験になるとのこと、言いたいことはわからなくもない。
それでも日本人と雑談していると、一息ついた。聞くと、向こうも突然の事態でどうすればいいのかわからず不安だったらしい。
向こうと意気投合し、これから行きたいところなどをしばらく話した。
緊張のカナダ入国審査
入国審査のため、荷物受け取りの場所で合流しようということになった。
ビザは、自分が難民になった気分で置かれた状況を主張したら通った。
個人的な海外旅行のコツだが、基本的に自分が悪くもないのにペコペコしてはいけない。自分が悪くない状況では、堂々と主張すべきだ。
※ もちろん状況にもよることを付け加えておく
しばらくして、日本人の家族と合流した。
空港内のWi-Fiの接続方法がわからず困っているとのこと、私が空港内のWi-Fiの繋ぎ方を伝える。
私はエア・カナダのサイトから振替の便が翌日の朝になることを確認した。
代わりのホテルの手配などはないことも判明。まあ安い便だし仕方ない。
しかし外は大雪だ。空港から出たら、冗談抜きで凍死しかねない。
明日の朝まで、どこかに泊まらなければならない。
保険会社に相談してみよう作戦
私が「海外旅行の保険会社、それもカナダ支店の窓口に相談すればいいのでは?」と思いつき、家族に提案した。
海外でのトラブルに備えて、常駐の日本人がいるんじゃないかと思ったからだ。
しかし、家族の人が保険会社に電話で聞いてもまったく答えてくれない。
私は、電話のため空港内のWi-FiでSkypeをiPhoneにインストールした。
私が日本で加入していた保険会社のカナダ支店に、Skypeで電話した。担当の人も責任なんて取りたくないだろうから、「もし、あなたが私の立場なら、どうしますか?」という聞き方をした。
保険会社の人は「申し訳ないが、カルガリー空港のことをよく知らないので私でも判断が難しいと思う」と言う。
「それでは多くの人はこういう状況のときどう対応しますか?」と質問。
「普通はこういう場合、ホテルに泊まるのが一般的ですが、ホテルも埋まってます。どうすればいいのか私にもわからない」との回答。
「(そんなことはわかっている!! ソニー損保さん!!!)」と思ったが、せっかく調べていただいたので、担当者の方にお礼を伝えた。
悪いが、これ以上聞いても解決しなそうだ。
なんとなくクレジットカードで有名なアメリカン・エキスプレスのWikipediaの記事を思い出した。
カード紛失時、支店の存在する国家であれば、どの国家で発行されたカードであっても、ほぼ翌日に再発行され、宿泊先への持ち届けを行ったり、海外旅行先でのトラブル相談がコレクトコールで出来、渡航先で病気にかかった際の旅行保険など、普段の使い勝手とともに、旅行や出張時のサービスに重点を置いているのが特徴である。競合他社がアメックスのサービスを模倣しても、一部のサービスが追従出来ないことから、「海外旅行に強い」といったイメージが今日まで続いている。
アメックスのコンシエルジュってこういう時に役立つんだろうな(年会費高いけど)
空港の人に相談してみよう作戦
Googleで調べた結果、カルガリー空港は国際線ターミナル内に宿泊するのが安全で快適という個人ブログの記述があった。インターネットは偉大だ。
国際線ターミナルの人に今から入れるか、Google翻訳で空港の人に状況を説明したが、すでにアメリカへの審査窓口が閉鎖しているとのこと。
そして、審査窓口が開くのはAM4:00からということを聞き出した。
国際線ターミナルの人に寝泊まりできる場所を聞いたが、とにかく早口だしそもそも私が英語をうまくリスニングできない。
自分のiPhoneのGoogle翻訳に英語の文章を打ってほしいとお願いしたら、快く打ってくれた。
どうやら国内線側に席があるらしい「ただ今から入れるかは私では分からない」とも教えてくれた。
すぐさま国内線ターミナルに直行し、係員の人にGoogle翻訳で聞く。
見返すと、Googleの翻訳文にもおかしいところもあるが、足りないところは感情で伝えればいいのだ。
これは英語の試験でなく、コミュニケーションなのだから。
「国内線ターミナルも閉鎖するので難しい。空港のソファーで寝るしかないだろう」と親切に教えていただいた。
カナダは、優しい方が多いのかもしれない。
状況はわかったので、朝までに安全な場所を確保しなくてはいけない。
ファーストフードで朝まで粘ろう作戦
空港内のファーストフード店の人に開店時刻を質問。AM3:30まで開いていることを確認した。電源もある。
整理すると「AM3:30-4:00」以外は安全で電源のある場所が確保できる。
ちなみに日本人家族の人はこれから寝るらしい。
家族とはLINEを交換し、いざというとき、お互いに相談できるように言って別れた。
安住の地から追い出される
私は盗難リスクを考え、空港内のファーストフード店に入り、寝ないことにした。どうやら同じことを考える人が多いようで、店内は混雑してきた。
しばらくしてファーストフードの店員さんが、「客が多いから、今日は店締める」と言った。
自由かよ。
私も含め、店内にいた人が、みんな落胆した。
「Oh my god!」って海外の人、本当に言うんだね。
仕方がないから、空港の一人掛けのソファーを見つけて一夜を過ごすことにした。
ふと見渡すと空港内は、同じ状況の人で一杯だ。
床で寝る人もいた。周りの人を見るとキャリーケースに足を載せて寝ている人が殆どだった。
寝ている間に、貴重品を盗まれないための知恵だろう。
郷に入れば郷に従え。
私も真似した。
しかしトラブルにあって、空港で寝泊まりすることになんて思わなかった。
「これ飛行機で観た『ターミナル』のシチュエーションじゃねえか!!」と心のなかで叫ぶと、今の状況が面白くなった。
ちなみに、ソファーで寝転びながら、もう一回『ターミナル』を見たら、主人公の立場に死ぬほど共感できた。
やはりスピルバーグは、天才だ。
天才は、いい仕事をする。
夜が明けて
朝になると、雪はやみ、振替用の便が復活していた。
空港のモニターにWindows10のロック画面が表示されているのを見て、緊張が抜けて笑ってしまった(気になる人は下の写真から探してみよう)
海外は基本的に雑。それもカルチャーだ。
それにしても仕事でのトラブルシューティングの経験が海外でも生きてくるとは、思わなかった。
人生はどんな経験が役立つかわからない、というのは本当なんだなと肌で感じた。
日本人の家族と合流し、意気投合する。
その日は、清々しい朝だった。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?