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自動筆記の詩を載せてます。
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記事一覧

生の棘

黄色い線の内側に お下がりください 一番線に 死者がまいります というアナウンス 新宿で流…

中央線

3時すぎの中央線で一番遠いところまで行くのは、どこに着くかわかっているからだ。 ゆりかごに…

負けるために起き上がるのだ

今日のあとにまた別の今日が来ることを みんなが知ってしまったから 毎日服を選ぶ手間ができく…

藍染めのズボンを母に

母はジーンズをズボンと呼ぶ そして勝手に洗濯をして せっかくの藍染を台無しにする iPhoneな…

ひとくちめで終わる

ひどい暑さの夏だったから 風鈴も釣り忍も用済みになってしまって 近所の鉢植えの朝顔さえ悪意…

甘えの構造

ものを書くことがとても恥ずかしいことだと思うことと、高貴なことだと思うことは遠いように見…

正岡子規によせて

わたしには奇妙な持病があって それはまた別の持病が呼んだ持病なのだが ときおり、左顔面から胸にかけて半身が痛むのだ 痛いのだからただ痛いと書けばいいのだが そうするとどうも嘘をついている気がして 修辞に逃げたくなる 痛みの部分をマーカーすれば 神経の走り方がそのままわかるような そんな気がしてくるほど痛みは神経をきれいになぞる 痛みとも疼きとも言えない感覚について 言葉よりも歪んだわたしの顔が ナースに多くを伝えるようだ さっきもナースステーションで痛み止めをもらった 好きな

カーネギーみたいに

「公爵夫人は八時に家を出た」このような文章で小説は埋められている。 ヴァレリーはこう残し …

松茸論

ある交通事故にそれが起きなかった可能性が書き込まれていたとわかれば、松茸が毒茸として振る…

窓のことを

ほんとうは釣り人のことを待ち人と呼びたいが ことばがそれを許してくれない そうしないと体が…

ゆびをかぞえる

幼稚な願いだとわかっていても、海を見ると漁師になりたくなる。自分の手を見ると、漁で作った…