ひとくちめで終わる

ひどい暑さの夏だったから
風鈴も釣り忍も用済みになってしまって
近所の鉢植えの朝顔さえ悪意に微笑んでいるように見えた

わたしはこの夏ですっかり即物的になってしまった
風鈴も釣り忍も用済みになってしまって
いずれわたしの辞書から言葉ごと消えてしまうだろう

もうすっかり秋だからこんなことを書けるのだ
それを卑怯と罵られても
仕方のない気はするが
親に借りてもらった部屋を吹き抜ける秋の風が
目に見えないことが悔しくて
泣きそうになってしまうのは季節のせいなのか
歳時記を見ると秋の風の傍題に色無き風とある

わたしはまちがっていなかったようだ

一年はしだいに厚みをおびていく
秋は四季の中で
いちばんおいしいところ
それでも
最後の食事に梨より西瓜のほうを選びたい

#詩

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?