映画「碁盤斬り」の小道具を道具ガチ勢が解説してみた
映画「碁盤斬り」の碁盤と碁石は、まさに江戸時代そのもの。
時代劇にふさわしい道具が使われていて、リアリティーを感じました。
今回は、囲碁の道具オタクが映画に使われた小道具「碁盤と碁石」を解説します。
碁盤「縁起のよさを表す四方小口」
「碁盤斬り」では、主人公・柳田格之進(草彅剛)が囲碁をたしなんでいます。そのため、いろんな碁盤が登場します。
そのなかでも印象的だったのは、萬屋源兵衛(國村隼)との特別な対局で使った四方木口(しほうこぐち)の碁盤です。
「特別な日だから、いい碁盤を」と思った萬屋源兵衛が縁起の良い碁盤を用意するシーンで出てきます。
これは江戸時代の碁盤で、側面4面に切り口(木口)が出ます。
四方すべて口である
↓
災いの逃げ口が四方にある
という縁起のよさから、魔除けの盤として好まれたそうです。
イラストで木目を図解
資料を元にイラストにするとこのような木目になります。
イラストにしてみるとわかりやすいのですが、角が欠けやすく扱いにくいことから、現在はほとんど作られていないそうです。
また、作られなくなったもうひとつの理由として通常より大きな木材が必要なこともあります。
ちなみに、おなじ「四方」でも四方柾だとこのような木目です。
碁石「薄くて色や模様にムラがある」
さらに、碁石がちゃんと薄くて良かったです。以前に記事で書きましたが、江戸時代のはまぐり碁石は薄いです。
古い碁石や碁盤は、小道具担当の方々ががんばって集めたものだそうです。
しかし、白石(ハマグリ碁石)は撮影に苦労したのだとか。
苦労した理由は2つ。
・白石の模様がひとつひとつ違うこと
・白石のかたちもふぞろいなこと
通常は、「芝居のシーン」を先に撮ってから「手元を写すシーン」は後にまわすそうです。
しかし、碁石の見た目が違うと違和感ができてしまいます。
そこで、囲碁を打つ「芝居のシーン」→その碁石を持つ「手元のアップ」と続けて撮らなければならず、撮影効率に影響があったそうです。
さて、なぜ江戸時代のハマグリ碁石に特徴があるのでしょうか?
~白石の模様がひとつひとつ違う~
ハマグリの貝殻からつくられた碁石なので、ひとつひとつ模様が違います。
しま模様の太さ、本数など。
これは天然の素材からつくるためなので、現代でもそうですが、もうひとつの理由は江戸時代ならでは。
~白石のかたちもふぞろい~
実はそもそも、当時は貝殻そのものが宮崎産(高品質なハマグリ碁石の聖地)ではなく、九十九里浜などでとれる薄い貝でした。
碁盤斬りの碁盤は監督や美術さんのこだわりを感じました。
普段さらっと見てしまう映画の小道具ですが、碁石碁盤オタクだったので真剣に見てきました。
縁起のよさを表す四方木口の碁盤。
薄くて色や模様にムラのある碁石。
本当に昔の道具を使っているからこそ、映画に深みが出たのではないでしょうか。
読んでいただき、ありがとうございました。
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