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楽食探訪:何年もスルーしていたラーメン屋。

そのラーメン屋の存在は知っていた。
と言っても、ラーメン屋だとわかったのは、
お店を認識してから1〜2年後のこと。

車でお店の前を通ることが多かったのだけれど、
店名からはラーメン屋であることが
まったくわからなかった。

変な名前なのだ。

言葉の意味もわからないし、想像さえできない。

ネットで調べればすぐにわかるのだろうが、
そんな手間を掛けるほどの興味も湧かなかった。

お店の造りもラーメン屋には見えない。

ところが、何度も前を通っていたためか、
突然気になり、ネットで調べてみた。

そこで、ラーメン屋だとわかったのだ。

うそぉ〜! という衝撃。

でも、わかったところで、意味不明な名前なので、
行きたいとも、覗いてみようとも思わなかった。

店名のセンスから、
きっと美味しくないだろうと、決めつけていた。

すぐに潰れるだろうと思っていた。

でも、それから何年経っても潰れなかった。

そうなると、だんだん気になってくる。

潰れないということは、美味しいのかも。
ファンが多いのかも。
いや、年金を貰っているじいちゃんが
細々とやっているだけかも。

などと、想像が膨らんでいった。

気になる。
行くか?

まずは、ネットの口コミサイトを見てみよう。

評価は平均的だった。

メニューを見てみると、
私の好きな塩味があるじゃないか。

これは珍しい。
和歌山は、しょうゆ豚骨王国なので、
あまり塩味を見掛けない。

これが決定打となった。

嫁はんとともに、意を決する。

開店後すぐに入ったので、私たちは一番乗り。

内装には、渋い色合いの木が使われており、
アジアンチックだ。

とてもラフな造りだけれど、それが味わいとなっている。

私たちは、壁に向かったカウンターに座った。

そこで気づいたのだけれど、
どうやら内装は店主の手づくりのようだった。

よく見ると、かなり粗い作業をしている。
まぁ、それも面白さとなっている。

私たちは、目的通り「店名のついた塩ラーメン」2つと
「炒飯」「チャーシューご飯」を注文した。

待つ間、店内を観察してみたが、
ところどころにアジアン雑貨が飾られ、
なかなか落ち着ける空間になっている。

なぜ、ラーメン屋でアジアなのだろう。

ラーメンの起源はそうでも、
このお店のメニューはとても日本的。

ラーメンとご飯類がやって来た。

おぉ〜、こ、これは……普通。

そう、非常にありふれた、どこか懐かしい五目そば。

まず、スープをすする。

旨い。
あっさりした味わいだけど、
野菜の甘味や豚肉の旨味が出ている。

麺を食べてみる。

固くもなく、軟らかくもなく、ほどよい歯ごたえ。

野菜もシャキシャキ感が残っていながら、
スープとよく絡む。

これは、旨いじゃないか。

人に講釈を垂れるほどの大きな特徴はないけど、
心が穏やかになる、優しい味だ。

もう何年も食べていない、ごくごく普通の五目そばの味。
寒い時期になると、ふと食べたくなる、馴染みの味。

何でいままでこのお店に来なかったのか。
悔やまれる。

これは、常連になってしまうだろう。

一緒に頼んだ、「炒飯」と「チャーシューご飯」は、
ありふれた味だけど、やはり安心する。

長年営業し続けている理由がわかった。

食べ続けても、飽きない味なのだ。

初めて行っても、なぜか懐かしい味。

食べることの幸福感を味わわせてくれるお店。

それにしても、店名が悪い。

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