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楽食探訪&エッセイ

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2021年4月の記事一覧

【エッセイ】ボラボラ島をバイクで走る。

ボラボラ島には、海があるだけだった。でも、その海はまったく濁りがなく、キレイという表現が俗っぽく聞こえるほど、度を超した美しさだった。 僕と彼女、いや妻、家内、女房は、この美しい海の島でどのように過ごすかを考えていた。実は新婚旅行だったので、彼女の呼び方に戸惑いがあった。やはり、ここでは彼女と表現しておこう。その方が小説みたいだから。 ガイドブックでは、ホテルにはレンタルの自転車とバイク、自動車があるとなっている。島のまわりは1本の道路があるだけで、自転車でも2時間あれば

楽食探訪:珍味「からすみ」に挑む。

数十年前から、食べてみたいと思っていたものがある。 何が何でも、というほどではなく、 なんとなくだけれど。 それは、いわゆる珍味と呼ばれるもの。 「からすみ」。 ボラなどの卵巣を塩漬けした後、塩を抜き、 天日干しで乾燥させたもの。 酒呑みにはこたえられないものらしいけど、 それほど酒好きでもない私は、出逢う機会がなかった。 味の想像もできないほど、私の人生とは無縁のものだ。 名前の由来は、形状が中国伝来の墨 「唐墨」に似ていたためだと言う。 ボラだけではなく、

楽食探訪:ある駅弁への熱き想いが……。

昭和50年に誕生したその駅弁は、 八角形の経木の折に入り、 料亭の折詰のような佇まいをしていた。 大阪・新大阪の駅で売られている、 水了軒の「八角弁当」。 私が長年想い続けている駅弁だ。 最初に食べたのは、中学生の頃だと思う。 旅行の折に、と言いたいところだけど、 それほど裕福な家ではなかった。 親父が大阪に出た時に、何の気まぐれなのか、 お土産に買って帰ってくれた。 駅弁を食べた記憶が残っていない私にとって、 それは跳び上がって喜ぶほどの感動だった。 弁当はお

【エッセイ】そうだ! コーヒー牛乳を飲みに、銭湯へ行こう!

「ゆ」と書かれた暖簾。いつもお決まりの下駄箱。暑いねぇ、と言葉をかわす番台。人が使っていると悔しい、“自分の”ロッカー。○○ガラス店と書かれた大きな鏡。お金を入れて使ったことのないマッサージチェア。 なんともワクワクする銭湯の中。浴室の扉を開けると、そこはパラダイス。そう、昭和の香りが、言葉をも古くする。 掛け湯をして、湯舟に浸かると、あ゛ぁ〜と声を漏らさずにはおれぬ。これほどの庶民の幸せがあるだろうか。人がいなければ、泳ぐことも、潜ることもできる。 昔は、背中に般若や

楽食探訪:遠出の価値アリ! 「COCO'S」の朝食バイキング。

その日、ワン公には散歩を諦めてもらい、朝8時に出発。 車で1時間半ほどの場所にあるレストラン 「COCO'S ココス」の朝食バイキングを食べに行った。 10時半までに入店しなければ、 バイキングは食べられない。 たかがチェーン店の朝食、ではない。 投資対効果がお見事な、ファンも多いバイキングだ。 アクセルを多めに踏んだので、9時過ぎに到着。 遅くなると、料理が少なくなるかもしれないので、 良かった、良かった。 席を確保して、いざ! トレーを持って、6つに仕切られ

楽食探訪:本物のわらび餅って?

食べたい、食べたい。ぜひ、食べてみたい。 人には、そう強く願うものがある。 その機会を心待ちにしている時間が楽しかったりする。 でも、それほどの熱い想いもなく、 知らないものだから食べてみたいと、 ぼんやりと考えているものもある。 それは、知識欲と言っても良いだろう。 知りたいという気持ち。 私にとっては、「本わらび餅」という存在がそれなのだ。 子どもの頃、家の近くまで、 リヤカー屋台を引いた「わらび餅屋さん」が来ていた。 確か、おばちゃんだったと思う。 鐘をチ

【エッセイ】静かなる珈琲の薫り。

飛騨高山。過去に二度この地に宿を求めた。そのどちらもが、バイクでのソロツーリングだった。大阪から高速を使わず国道を走り、約8時間掛け、この地に辿り着く。 へとへとになったものの、宿の食事とゆったりとした風呂、そして、町の風情で心までもほぐされた思いだった。話は、この旅のことではなく、三度目の訪問の時にたまたま入った、珈琲店のことである。 店のある場所は、高山でもっとも知られている三町筋と言われる通りで、漆喰の壁や古びた土蔵など、江戸時代の町並みがそのままに残っている。