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楽食探訪&エッセイ

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2021年3月の記事一覧

楽食探訪:華もなく、存在感も薄い「回鍋肉」。だけど……。

「餃子の王将」に、夫婦で行った。 注文するものは、いつもだいたい決まっている。 それが食べたいがために行くのだから。 炒飯、五目そば、餃子、鶏の唐揚。 夫婦がともに気に入っているものだ。 時に、一品が酢豚になったり、焼そばになったり、 焼豚やチャンポンになることも。 でも、たまには違うものを食べてみなくちゃ、 と冒険することもある。 そこで今回は、オーダーをすべて変えてみた。 30年以上前に食べた記憶だけが残っている「天津飯」。 割と新しいメニューである「極王

楽食探訪:地元で愛される手打ちうどん店の不思議。

そのお店の存在は知っていた。 手打ちうどんの専門店だけど、 興味を持ったことはなかった。 でも、たまたま地域の人気店をネットで探していると、 そのお店が出てきたのだ。 口コミを見ると、うどんが旨いという評価とともに、 「バラテキ定食」が旨いという感想が並んでいた。 初めて聞く料理だけど、はてさて何だろう? うどんが旨いだけでは、さほど興味は持たないけど、 この「バラテキ」という響きに心が惹かれてしまった。 どうやら、豚のバラ肉を 自家製のタレを絡めて焼いたものらし

【エッセイ】息子は、私たちを育ててくれた。

1993年10月11日。私は電器店の一角で、ビデオカメラを手にしていた。にやけた顔して子どもを撮影しているような親父にはなりたくなかった。正直、バカじゃねえか、とさえ思っていた。ところがどうだ。息子が生まれた次の日に、しっかりとビデオカメラを握りしめていたのだ。あちぁ〜、である。親とはこんなものなのか。そんな自分を認めたくないながらも、せっせと撮影し続ける自分を素直に受け入れていた。 我が息子は「翔馬(しょうま)」と名付けた。嫁が、である。私は女の子が欲しかったので、嫁に任

楽食探訪:じいちゃんばあちゃんのシュークリーム。

世の中には、「ここは何で潰れないんだ?」という 佇まいのお店がある。 古くて、みすぼらしくて、暗くて、 お客さんが来ているところを見たこともない。 以前、テレビで見たことがあるが、 配達やネット販売で稼いでいるから、 店頭では売れなくても良い、 という“からくり”があるお店を紹介していた。 ある日、車で初めて通る道沿いで、 古びたマンションの1階で営業する ケーキ屋さんを見つけた。 店頭がすべてオープンなので、 営業していることはかろうじてわかるが、 お店の人もお客さ

【エッセイ】私のたこ焼き修行。

私は、兵庫県尼崎市生まれ。大阪人ではない。しかし、ヤンキーの街、ディープな下町、という視点から見ると、文化圏はまったくの大阪だと思う。けっして、神戸ではない。「上品」などという言葉を知らずに育ってきた。 食に関しても、大阪と同じ。おばちゃんが一人でやっている、お好み焼き屋。屋台や駄菓子屋で焼いている、たこ焼き。おやじから子どもまで出入りする、汚ったねぇホルモン焼き屋。飾り気のまったくない、うどん屋。 そんな環境で育った私は、生まれた時から、「食」への執着がすごかった。たこ

楽食探訪:侮れない、ファミレスの「たらこスパゲティ」。

人気のある女装芸能人が、 「ジョリーパスタ」の『たらこスパゲティ』は、 すっごく美味しいと言っていた。 「ジョリーパスタ」の話の中で言ったことなので、 社交辞令込みの発言だと思うが、妙に気になる。 というのも、このお店には一度だけ行ったことがあり、 「大したことない」という印象で、 二度と行くことはないと思っていたからだ。 でも、割と辛口な発言をする芸能人なので、 もしかして本当なのかもと、 自身が俗物であることをさらけ出す思いに駆られた。 一度目の来訪では、 「たら

楽食探訪:ありふれた「とんかつ」が嬉しい。

ごくごくたまに、「とんかつ」が食べたくなる。 でも、世の男性諸氏に比べ、嗜好がやや女性寄りの私は、 「とんかつ」を頻繁に食べたいとは思わない。 験を担ぐ時やパワーをつけたい時に食べる、 という習慣もない。 ただ、なんとなく食べたくなるだけ。 なので、わざわざ美味しいお店を探してまで、 行くようなことはない。 手近なお店で、1年に1〜2回食べれば良い。 ところが、田舎に住んでいるため、 「とんかつ」を食べられるお店が近くにはない。 よって、何年も食べないことがある

楽食探訪:トンテキとの格闘を体験す!

無性にトンテキを食べたくなる時がある。 「大阪トンテキ」を経験して以来、 私はトンテキの大ファンになってしまった。 「大阪トンテキ」は、三重県の「四日市とんてき」の パクリ、いや、今風に言えば、インスパイア系だ。 これが、やたらと旨かったのだ。 豚肉を噛んだ時に出る肉汁と旨味。 ほど良い噛みごたえも大切な味わいとなっている。 また、肉にドはまりなソースがたまらない。 そして、アクセントと言うには、 存在感のあり過ぎるキャベツ。 とても細く切られたキャベツを 肉汁

楽食探訪:高級ハンバーガー、2度目の挑戦。

ハンバーガーと言えば、 マクドナルドやロッテリアでしか食べたことはなかった。 ところが、テレビ番組で本格的なハンバーガー とやらを見た時、ハンバーガーというものの定義が、 私の中で2つに分裂してしまった。 私が本物だと信じている、 ファストフード店のハンバーガー。 そして、初めてその存在を知った、セットで千円超えの、 お金持ちだけが食べるハンバーガー。 私から見てのお金持ちは、 中流階級以上という意味なので、 まぁ、一般人でも食べられるものだけど…。 でも、私には高

楽食探訪:ローストビーフ丼への憧れ。

田舎で暮らしていると、 テレビで紹介される飲食店に強い憧れを抱いてしまう。 例え、それがチェーン店でも、 行ってみたい、食べてみたいと思う。 移住すると決めた時に、 そんな欲望は捨ててくるべきなんだけど、 俗物である私には、そう簡単なことではない。 特に食べものに関しては、人二倍好奇心が旺盛なので、 抑え込むことはできない。 よって、時には車で1時間2時間掛けて、 食べに行くことがある。 以前、行列のできているローストビーフ丼のお店を テレビで観た時、あの肉のマウン