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SATOYAMAイニシアティブによる2030年までのネイチャーポジティブ社会に向けた変革的行動

こんにちは。持続可能なアジア太平洋に関する国際フォーラム(ISAP)で事務局を担当している津高です。今日は12月2日に行われるISAPのテーマ別会合11について見どころを紹介したいと思います。

最近、研究機関の界隈ではネイチャーポジティブという言葉をよく聞くようになりました。人間の諸々の活動によって自然環境が破壊され、生物多様性が失われてきているのは皆さんもご存じのとおりです。この流れを逆転させ、生物多様性をより豊かにしていく方向に持っていくことが、ネイチャーポジティブです。そして、気候変動の1.5度目標(世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃以内に抑える)は2050年までという期限を設けているのに対し、ネイチャーポジティブ、すなわち生物多様性の減少傾向を回復に転じる期限については、「2030年までに」という目標設定が支持を集めています。

あと8年しか残されていないということで、とても、とても高い目標です。

では、私たち人間は直ちに産業を止め、生産・消費の少ない生活をこの先していかなくてはならないのでしょうか。いえ、そもそも考え方としては、自然という基盤のないところでは産業が成り立たなくなるので、その基盤を固めていかなくてはならない、という発想です。つまり、目的はネイチャーポジティブ自体ではなく、自然界と人間社会の共生なのです。

その自然共生社会の実現という目標に向かって牽引するのがSATOYAMAイニシアティブと呼ばれる活動です。環境省と国連大学高等研究所(UNU-IAS)が提唱し、IGESを含めた多様なステークホルダーがその実施に関与してきました。SATOYAMAイニシアティブにおける様々な活動の中で、IGESはSatoyama Development Mechanism (SDM)の事務局として、助成金や専門的助言を通して世界中の里山・里海の保全や再生活動に尽力している団体を支援しています。

このセッションではそれらの実施状況や活動報告が聞けるほか、現場での実践から政策への取り込みに向けた今後の課題なども提示されます。そして、これらの課題は、このセッションのすぐ後に行われるCBD COP15(生物多様性条約第15回締約国会議)で採択される予定の、「ポスト2020生物多様性枠組」という政策文書に密接に関わっています。

全世界が今すぐ総力をあげて取り組むべきネイチャーポジティブですが、日本人にとっても馴染みの深い里山・里海のコンセプトを通して見ることで理解が深まるかもしれません。皆さんにできること考えるためにも、このセッションを視聴してみてはいかがでしょう?


「ISAP Now!」では、地球環境戦略研究機関(IGES)内のISAP事務局担当者が、ISAPのセッションに関する情報を紹介します。(このマガジンの詳細はこちら)。


文責:津高 政志 IGES戦略マネージメントオフィス シニアプログラムコーディネーター(プロフィール

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