変態の純愛

ゴールデンカムイが好きな人はみんな変態

だと何かで見ました。そうでしょうね。私はゴールデンカムイ好きです。
でもみんな変態を心だか脳内だかで飼っていませんか。

ちなみに痴漢行為をする人は変態の風上にも置けないしょうもない犯罪者です。


ある日何故か友人がこれ面白いよと言って貸してくれたのがガルシアマルケスの「百年の孤独」。

めちゃくちゃ長くて同じ名前の人ばっかり出てきて、だからその友人は手書きの相関図的な表を書いていてそれも本に挟んであったな。ラブレターみたいなものかも知れんと一瞬ドキッとしたけれど役に立つ相関図でした。

百年の孤独、めちゃくちゃ面白かった。何これ誰これ書いたの？！と思い調べてみれば、えぇこの人ノーベル賞取ってるんだ。ノーベル賞取った人の本読んで面白いと思った私すごい！
で調子に乗って大江健三郎の本を読んでみたら最初っからさっぱりわからず途中でやめてしまいました。ノーベル文学賞の基準て何？

百年の孤独が面白すぎたので、「コレラの時代の愛」を読んだんです。これがまた面白い。変態の話としか思えない。

主人公はさえない貧しい青年。お金持ちの美しいお嬢様に恋をして。って言う話なんですが、そんな話はあるあるなのにそれをじっくり煮込んでいろいろなスパイスをぎっしり詰め込んでまた煮詰めに煮詰めるとこんな物語になってしまうんだ！

19世紀コレラが流行った時代のコロンビアの話です。コロンビアには行った事がないし、しかも19世紀と言われてもと思ったのだけど街並みから建物の感じや着ているもの、当時の文化的な事など細かく書いてあるので想像しやすかったかな。そういうエピソードの分また長いです。

物語の始まりは2人ともかなり歳を取ってから。お嬢様だったヒロインの夫が不慮の事故で亡くなり(逃げたオウムを捕まえようとしてはしごから落ちて死ぬって言う変なエピソード)夫の葬儀の直後に、さえない青年だった主人公がヒロインのとこに行って、この時をずっと待っていた。君を愛しているって言いに行くところから始まります。

はぁ？今夫死んだとこなのに？
案の定ヒロインにはぁ？こんな時に！お前が死ねぐらいの事を言われる主人公。それでも全く諦めません。

だって俺50年間彼女を愛し続けていて、永遠に愛するって決めてるし。勝手に。

この時点でキモい。で遡って2人の馴れ初めから50年間の物語が始まる。長いよ。ほんとに。

17歳の主人公と14歳のヒロイン。若い2人はラブレターのやり取りでめちゃくちゃ盛り上がります。でもヒロインは恋に恋をしてる10代女子。ある日突然、やっぱこいつキモいなと思ってしまうんです。

で簡単にフラれてしまった主人公はほとんどストーカーみたいになるのですが、ここからが変態の真骨頂。力ずくでとかそんなんじゃない。勝手に永遠の愛を誓って、付かず離れず彼女の動向をずっと見守るわけです。

郵便局勤めの主人公は郵便局で働いているのをいい事にヒロイン宛の手紙を勝手に見たり。

そうしながらも年上の女に結構無理やり童貞を奪われて以降、とにかくいろんな手を使っていろんな女とやりまくります。その数500人以上。でしかもいちいちノートに細かく記録していく。

ああ気持ち悪い！そして50年間の話ですから、歯が抜けたり、ハゲて来たりとそんな事もしっかり書かれています。総入れ歯になっても若い子と半ば無理やりやったり。しょうもないおっさんですよ。

いろいろあって51年後とうとうこの2人が結ばれる時が来るんです。長かった。やっとここまで来た。いざ70代のヒロインが裸になると、主人公は垂れ下がった皮膚や出っぱったお腹を見てなんかカエルみたいと思ったりします。はぁ？失礼な！

でもそう！永遠の愛を誓った(勝手に)女性ととうとうこの時がきた！
でもやっぱり70代のおじい。

It’s dead.
死んでる。勃たん。
って言うの。声に出して笑った。

まぁまだ続きがあって次はトロフィーのように(!)見せびらかして本懐を遂げるんだけれど、その頃にはもうこのおっさんが気持ち悪くなくなってる。

一体これはどういう物語なんだろう。もちろんこんな下ネタだけの小説じゃないですよ。だって世界傑作文学100に入っているそうですし。

とにかくこの主人公の人生を丸裸にして本人に起こった事だけでなく周りで起こった事、その周りの人のエピソードやら何から何まできっちり書いてある事で小説という事を忘れてしまわせるって事がすごいんでしょうね。しまいにはこんな親戚のおっさんいなかったっけぐらいの気持ちになる。魔術的リアリズムと言われてるそうです。

また老いて行く過程が丁寧に書かれているのも良いと思いました。禿げだして慌てる感じ、それがどうでもよくなって行く感じとか。

誰もが心の中で内緒で飼っている変態を前面に出して生きている主人公に最初は嫌悪感を覚えますが、そのうち自分の中の変態が同期してしまう。
わからんでもないと言う気持ちになって来る。

まぁ私みたいな語彙足らずに1番しっくり来るのが「変態の純愛物語」。

ガルシアマルケスが草葉の陰で嘆いてるでしょうね。ごめんね。