見出し画像

平将門公聖地巡礼ツーリング・茨城県坂東市編


登場人物紹介
井苅和斗志(いがりかずとし)…自称右翼にして元自衛官。鬱病とアルコール依存症で休職中の会社員
青江真央(あおえまお)…自称革命家。かつては「革命少女」と呼ばれていた。井苅の事を「師匠」と慕っている。派遣社員

催行日時…2024(令和6)年6月19日(水) 0413時~1157時

⏪️平将門公聖地巡礼ツーリング・東京都編からの続き

神田山延命院/胴塚(坂東市神田山) 0810時~

常磐道を下り守谷SAで休憩の後、谷和原ICから国道294号へ。
「平日のこの時間帯は混雑するんだよなあ」と井苅は言いつつ渋滞している常総市街地方面とは逆の新守谷大通りへ。
「この先の県道58号~258号線を行けば混雑はそれ程でもないんだよ」
この街道沿いには一言主神社と言う大きな神社があるのですが、今回は将門公の聖地巡礼がメインなのでまた時を改めて…
道なりにしばらく走ると「延命院(胴塚)」との案内板が左に立っています。

「へえ、これが将門公の胴塚ですかあ」
「そう、ここに胴が埋葬されたとの伝承があるそうだ」
「こちらはちゃんと塚が残ってるんですね。もしかしてこれ古墳じゃ…?」
妙なところで鋭い青江である。
「そうなんだよね、大手町の将門塚はもう崩されちゃったけどあそこも古墳だったらしいし」
「なんかこう、古代のロマンと言いますか、将門公のえにしと言いますか、歴史をかんじますねえ」
なんとも尤もらしいことを言っている様でいったい青江は何を言いたいのだろうか。
それを汲み取るのも師匠としての務めでもあるので井苅は、
「そう、中世の人たちは古墳を聖地として認識してたって事みたいだね。
それが将門公を慕う民衆の想いと重なって…」
「なるほどなるほどさすが師匠です。これで首と胴が繋がりました」

胴塚に生える榧(かや)の巨木

北山稲荷大明神/戦歿の地(坂東市辺田) 0840時~

北山稲荷大明神 コンビニと回転寿司の裏手に参道があります
参道を進むと鳥居や社や石碑があります
倒れたままの石灯籠
大きな石碑と修繕された社

「ややや、師匠ここはいったい何なんですかあ!?」
青江が驚くのも無理もない。井苅だって内心驚いている
「何なんですかって、ここが将門公が矢に打ち抜かれて亡くなったとされる戦歿の地だ」
「そ・う・じゃ・な・く・て・ええ…」
いや、言われなくても青江の心中はよくわかる。
そこらかしこに手作りの立て看板や貼り紙や注意書き、おまけに三ヶ月前に井苅が訪れた時には無かった幟旗まで。
小さな社の壁面は木製ボードで補強され屋根にはブルーシートが掛けられている。
「もしかしてここって怪奇スポット…?」
たしかにそうも言えなくもない異世界的かつ異空間的雰囲気をを醸している。
なるほど、異空間繋がりで築土神社と対ってわけですね、師匠?」
「……」
様々な掲示板やSNSなどに書き込まれていた話を総合すると、どうやら地権者の許可を取って「管理者」さんが独力で北山稲荷を「復活」させたらしいのだ。
「俺が初めて坂東市を訪れた時はさ、このあたり一面の藪でいったいどこが入口でどこに神社があるのかわからなくて参詣は断念したんだ」
「ほう」
「それが数年前『きれいに整地されて参詣できるようになった』との書き込みがあってだな、それでようやくたどり着けるようになったんだが…」
恐らく管理者さんは孤軍奮闘でここまでやり遂げたのだろう。
いや、しかし、それが今や裏目に出て青江の主張する有り様と化している…。
「ただならぬ何かをかんじますねえ、やはり戦歿地って将門公のおんね…」
「滅多なことを言うな!」
井苅は青江の言葉を制する。
「ごめんなさい」
「ともかく将門公の御霊に…」
ふたりは小さな社や立ち並ぶ石碑のひとつひとつに合掌してまわった。

国王神社(坂東市岩井) 0915時~

国王神社鳥居前

「本日最後の巡礼地、ここが将門公の祀られている国王神社だ」
「なるほど、これで神田明神と対で結ばれて巡礼も大円団ってことですねえ」
「……」
参道には色とりどりの幟旗が並び、奉納した者の名が記されている。
「ほれ、この赤いのぼりは俺が奉納した…」
「名前消えちゃってますね」
「……」
幟旗が掲げられてからもう一年以上経っている。
「水性ペンでかいたかなあ?」
「……」

「茅葺きってこんなに時間と手間が掛かるものなのかねえ…」
今年に入ってようやく始まった本殿の屋根の葺き替え作業は井苅が三ヶ月前に訪れた時とあまり変化が無いように思われた。
「そうなんですよう、きっと大変でめんどうな作業なんですう」
「うーむ…」
「まあいいじゃないすか、師匠のお賽銭や幟旗の代金があの茅の何本かになっているわけですしい…」
「何本かって…」
井苅は苦笑しつつも賽銭箱に紙幣を入れると手を合わせた。
『将門公、いつもありがとうございます』

(了)
(令和6.06.22記)


備忘録2024.06.19(水)【平将門公】聖地巡礼ツーリング






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?