0211.ただ立つ
余計なことを考えず、予定調和にならず
まっさらな状態で舞台に立つにはどうしたらいいのか。
常々感じ、悩んでいたこと。
今日はそれが、なんだかすこしわかった気がした。
この感覚を言語化するのはなんだか惜しい気がするので、ほんのすこしだけ書くことにする。
インプロ。即興劇。
とてもドキドキワクワクする言葉だ。
今回のインプロショーのお誘いをいただいたとき、二つ返事で「出たいです!」と言った。
主催のこうろくさんとはもう5年は会っていなかったのだけど、いつか一緒にお芝居ができたらいいなあと思っていたのでとても嬉しかったのである。
二人で一時間。稽古はなし。
すごい挑戦だ、と思ったけれど不思議と怖くはなく、むしろワクワクが勝っていた。それは「こうろくさんとだったら大丈夫な気がする」と思ったから。(人にそう思わせることができるのは本当にすごいと思う…)
ほんとうに一度も稽古せず本番を迎えたのだけど、なんだかその「稽古しない」という状態がものすごく新鮮で、からだがぶわあっと新しい風に飲み込まれるような感じがした。
セリフを覚えるわけでもない。
デハケも立ち位置も決まってない。
物語は本当にリアルタイムで転がっていく。
一回ずつ交代で機織り機を動かすようなそんな感覚。
ものすごく濃いコミュニケーション。
あっという間の一時間を終えてからハッとした。
ものすごく集中していたけれど、なにも考えていなかったことに気づいたのだ。
ただそこに立って、ひたすら相手を見ていた。その時起こったことにただただ反応していた。そのことに集中していた。衝撃だった。
「このあとどうしよう」とか「ひとりでなんとかしなきゃ」とか、そんなふうに思ったら最後だったと思う。現にその後ちょこっとシーンに参加した時そういうふうに考えてしまった瞬間があって、その後はもうずっとそれに囚われてしまった。反省した。
たぶん、最初のなにもわからない状態で「相手がいるから大丈夫!どうにかなる!」とだけ思えたことがなにより強かったのだ。
でも、この衝撃と囚われを短時間のうちに経験して、自分が最近、なんとなく「面白くするにはどうしたらいいか」に囚われすぎていたことに気づいた。セリフを、感情を、お客さんに届けなければ。意図はなにか?この表情で伝わるか?この音で伝わるか?…そういうことに囚われて自分自身が楽しめていなかったんだなあ
だってほんとうに今回、ただただ楽しかったのだ。
それは他でもなく周りの共演者のみなさんとスタッフのみなさんのおかげだ。素敵な大人しかいなかった。相手を受け入れる力がすごくて…何も言わずとも普通の会話からそれが滲み出ていた。私もこんなふうになりたいな、と心から思った。
今回、衣装として「You are (not) alone」と書かれたパーカーを着てらした方がいらっしゃったのだけど(これをチョイスしているということがなんだかもうすごく素敵だなと思った)その言葉がわたしのほかほかした心の総まとめみたいになった。
あなたはひとりじゃない。
舞台の上でも、そうでなくても。
言葉にせずともそう伝えられるような、そんな役者になりたい。そして私も、ひとりじゃない。このことを忘れないようにしたいと、そう思った。
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