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創作

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短編小説 「塔」 〜後編〜

またあの声だ。 「Bと同じ道を歩む気か」 「いつまで続けるの」 (成果も出てないのに) 町との連絡。 いつしか、皆が後ろにそう付け加えているように僕は感じていた。 呼吸がしにくいのは、塔の中の空気がこもっているせいだろうか。 僕が塔に入って、半年が経過している。 幸い怪物にはまだ遭遇していないが、遺物はなかなか見つからなかった。 おそらく『彼ら』が既にあらかた持っていったためだろう。 使える遺物を見つけるためには、もっと塔の上に登らなければいけない。 塔の中

短編小説 「塔」 〜前編〜

塔からの連絡が途絶えた。 僕が物心のついたときから、何度目になるだろう。 これまで何人もの『彼ら』が塔に登り、塔の外周のあちこちについている非常扉から遺物を町へ落としてきた。 『彼ら』は決まってそのうち音信不通になる。 塔には怪物が住んでいて、町の人間は、『彼ら』は「塔の怪物」に喰われたのだ、と言っている。 * 職場の工場の屋上から町を見下ろす。 見渡す限り鉄と化学の工場が目に映る。 幾千もの建屋の間を、なにかの製品を積んでいるのであろう、カーテンを被ったトラ

【散文】 共有と分断

皆様いかがお過ごしでしょうか。イガなおです。 今日は特に結論はない。僕の今の率直な気持ちを書こうと思う。 * 共有と分断 周りを見てみると、みんな「何か」を気にしすぎじゃないか。 それは「空気」なのか「慣習」なのか、「常識」か「みんながやってるから」か。 10歳の僕らは、白いキャンパスに自分で選んだ色を落としたし、紙粘土で怪獣をこしらえ、あれは狭い公園だったけど、全力で走っていた。 いつからだろう、自分の気持ちではなく、社会の脳味噌を優先させるようになったのは。