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医学部小論文テーマ集⑥・『告知』について

医学部の小論文では、頻出テーマがあります。年度によって新傾向の出題がされることはありますが、まずは頻出テーマに対する論述には問題なく回答できるように、基本的な知識を身に付け、文章を書く練習をしておくことが大切です。

以前、出題されるテーマをまとめた記事を書きましたが、今回からはそれぞれの項目について詳しく解説していきます。

本記事は、『⑥告知』についてです。

病名の告知について


インフォームドコンセントに基づいた医療を行うためには、患者の病名や病状、治療法について説明する必要があります。生命にかかわらない軽度の病気であれば告知することに抵抗はありませんが、不治や重篤な疾病である場合は状況が変わってきます。このような状況でも病名の告知をするべきでしょうか?
近現代では、がんであると判明した場合には、患者には告知せずに家族に告知することが一般的でした。しかし、病名の告知をしなければインフォームドコンセントを得ることはできませんし、余生をどのように過ごすかを決めることもできません。病名が分かっていればこう過ごしたのにというような患者の後悔にもつながってしまいます。
そのため、どのような病気の場合でも、病名を告げることで、患者のQOL(生活の質)を高め、患者の自己決定権を尊重することになるのであれば、告知を行うべきでしょう。ただ、病名の告知というのは、場合によっては精神的苦痛にもなることから、どのような場所で誰と一緒にどのような伝え方で告知をするのかを十分に配慮する必要があります。さらに、告知後も精神的なサポートは欠かせません。

つまり、告知は患者のQOL(生活の質)を高め、患者の自己決定権を尊重する医療を実現するための条件ですが、精神的配慮が大切です。

告知するかどうかの判断


前項で、告知は、『患者のQOL(生活の質)を高め、患者の自己決定権を尊重する医療を実現するための条件』と述べました。つまり、病名告知はこの目的のために行うのですから、病名を告げることでQOL(生活の質)が下がる場合は、病名を告げないという選択肢も考えられますが、この判断は非常に難しいものです。大丈夫だと思って告知しても激しく落ち込み、平穏な日常生活ができなくなる可能性もあります。しかし、このような場合でも家族や医師をはじめとする医療従事者が患者の苦を分かち合い、患者を支えていくことはできます。患者自身も苦悩の中で様々なことを考え、自身の意思に基づいて病気への考え方や過ごし方が整理できてくるかもしれません。
以上のことを考えると、たとえ不治の病であっても、原則として病名や病状を患者に伝えるべきです。それが、患者の自己決定権の尊重につながりますし、状況を家族や医療従事者と共有してより信頼関係を築いて、病気に向き合うことができると思います。

子供への告知


病名の告知はインフォームドコンセントの一環として行われますが、患者に十分な判断力がなく、自己決定権を行使できない場合はどうすればよいでしょうか?
患者が子供で、自己決定が難しい場合には、原則として家族に対して病名が告知されてインフォームドコンセントの手続きが行われます。日本では子供に対しては病名が告げられないことが一般的だそうです。子供の判断力や性格、感じ方は様々なためです。様々な事情を考慮して、子供に対して告知をするのかを判断する必要があります。

本日は以上です。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。

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