おはなしを覚えること🕯️異世界で迷子にならぬように
おはなし会でストーリーテリングを初めて聞いたときの感想は、
「無理、無理、私は記憶力ないし、おはなしを覚えるなんて無理」でした。
聞きに行くだけ、の時間が相当長かったです。
そう、ストーリーテリングは「語るものではなく聞きに行くもの」でした。
あるとき、我が子に昔話を聞かせてみよう、と
子どもを布団に入れ、電気を消して、よく知っている話「一寸法師」を語ってみました。(もちろん勉強も準備もせずに)
そうしたら、「えっと」、「それから」・・「どうだったけ?」と語る方も聞く方も全く面白くなくて、最後まで語る前にまぁ眠くなったからお互い寝ちゃった、でした。
よく知っている話なのに、語れない。
後にストーリーテリングの勉強をするようになって、そのことが松岡享子さんの本に書いてありました。
あらすじを知っている「桃太郎」「赤ずきん」その他もろもろのお話でも、
あれどうだったっけ?と語り手がうろ覚えでは聞き手はお話の世界には入れない。
お話の世界は日常とはかけ離れた不思議な世界。
子どもが産まれる桃が「どんぶりこんぶりすっこんごー」と流れてくるし、
歩いていくと犬・猿・雉がおともによってくりし、
小さかった桃太郎が大きな鬼を片っ端からズテーン、ズテーンと投げるし、
「そんなことありゃへんわ」といわれてしまえば昔話は進まない。
どんどん歩いていって、
「一つくだされ、お供しよう」
「一つはやれん、半分やろう」
と、小気味いい繰り返しでお供が増えなきゃ始まらない。
ことばを探りながら話をしては、語り手が落ち着かず、お話が迷子になる。
おぼえる、というより、言葉を自分に入れる、と言った方がしっくりくる?
私は暗記が苦手なので、「丸暗記をしなくていい」というのは救い。
794(なくよウグイス平安京遷都)とか
すいへーりーべー(水素・ヘリウム・リチウム・ベリリウムの元素記号)とか、
丸暗記というと受験勉強の面白くなかった記憶しかない。
丸覚えは苦手だけど、気にいったお話を、何度も何度も口にして言葉が自分に入っていくのは楽しい。
ストーリーテリングの覚えることは、暗記と違うから記憶力のない私でもやってみたくなる。
「なんでここでこんなことするんだろう」
「こいつ馬っ鹿よなぁ」
おぼえながらお話と対話している。
もとの性質なのか、いまだに一字一句間違えずに覚えるのは苦手。
覚えていても子どもの前で語りだすとどこかが抜けてしまう。
それでも、語り手と聞き手が作り出す心地いい空間がおはなし会にはある。
こんなお話の世界があります。
お話を覚えてみませんか?
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