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空想のパートナーと終活を一緒に考える

#14 書き手:アケルとクレオ(対談形式)


アケル「心で繋がっているキャラクターがいて、生涯添い遂げたい相手がいる。それはとても素敵なことで、それを公言できる世の中に少しずつなっていったらいいな、と思います」

クレオ『素敵なことだねぇ』

アケル「しかし!二次元キャラクターの彼らは病気も老後も心配はいらないけど、ぼくらは歳食って死ぬんじゃい!」

クレオ『いきなりなんだよ…そういやFセクの記事をずっと読んでるけど、未来の不安を書いた記事もそれなりにあるね』

アケル「そもそもモデルケースが少ないからね。もっとも“Fセクです”って公言してるのでなく、肉体のない人とひっそり生きて生涯を共にした、って人もいたとは思うけどね」

クレオ『ブログもなかった時代にも遥か昔にも、きっといたでしょうね。はてさて、アケルくんはおれと生涯を共にするのに、一体どうやってくか不安かな?』

アケル「まぁ不安がなくなることはないさ。
 心で繋がってるキャラクターがいてその人と生涯を共にしようとしても、肉体がある側には様々な課題があるんだよ。
 ということで、クレオ。一緒に終活を考えようぜ」

クレオ『はい?』

◇◆◇

 ぼくは元々結婚願望のない人間であったので、ひとりで暮らしていく覚悟はとっくに決めてしまっていた。


 食事も家事も仕事も、一人で生きていくため、全部自分のために学んだ。それがたまたま、ご飯を作る仕事に恵まれて、ぼくの作った物を美味そうに食ってくれるイマジナリーフレンドに巡り会えて、自分の強みになった。


 ただ、華やかなフォトウェディングや婚姻証明書の話が多い一方で漠然とした不安を感じる人も多い。いくつかの記事で、「結婚願望についての話は多いけど現実の老後やライフプランを話してる人が少ない」という意見を読んだ。



 言われてみれば確かにそうだ。

 たった一人の愛したキャラクターと添い遂げるという理想を叶えるなら、人生おひとり様問題は避けては通れない。

 ぼくがそうした不安を抱えずにいるのは、やはりエンディングノートやライフプランをとりあえず考えてること…その傍らに、一緒に終活を考えてくれる相棒がいることが大きいと思う。


 じゃあちょっとイマジナリーフレンド兼パートナーと一緒にライフプランを考えて、公開してみようと書き始めた。



 エンディングノートやライフプランの情報としてはあまりに当たり前で入り口みたいなもの。

「そんなのもうやってるよ!」って人もいると思う。



 ただ、現実の不安に対処したいFセクさんが記事を書きたくなった時にも、こうした記事が増えてもいいかなと思って書き出してみた。


 ぼくの相手がイマジナリーフレンドで意思疎通が得意な人間が書いた記事ではある。ただ、もし興味があるけど会話が苦手な人は「彼・彼女だったら、この社会で生活していく為に、どんな風に考えていくだろう?」と置き換えて考えてもらえたら嬉しい。


◇◆◇

【登場人物紹介】

アケル:人間。15年以上前から何人ものイマジナリーフレンドと暮らしていた経験があるが、今はクレオのみ。
 終活について前から準備していたが、クレオが来てから話せる相手ができてかなり嬉しい。

クレオ:イマジナリーフレンド。2年前からアケルと同居している。
 ふざけてるけど、真剣なところは真剣に聞いてくれるので終活の相談相手になってくれる。


1【アケルのパラメーターを分析してみた】


前提としてぼくの年齢、年収などのパラメーターを公開しようと思う。


性別:トランス男性 性的指向:パンセクシャル・フィクトセクシュアル
年収:250万(少ないものの支出も少ない。毎月2万とボーナスの半分を貯蓄できる程度には収支のバランスはいい)
手取り月収:16万円
年齢:30代 (両親は60代→70代後半から介護を想定)
仕事:福祉関係(高卒からパート勤務を経て常勤)
資産:特になし。親と同居(金銭管理を担当)→死後は持ち家を相続予定。あと田舎なので車はある。

性的指向/フィクトセクシュアル:一次創作のオリジナルキャラをイマジナリーフレンドとしている。意思疎通できて、金銭感覚も同じ程度。


アケル「ここまで書いたら分かるけど、ぼくのパラメーターはクソザコなんだよね」

クレオ『その呼び方あんま好きじゃないなぁ』

「そうだなぁ。社会人の平均と比べると自虐言っちゃうけど、ただ両親との同居で水道光熱費は浮いてる。家賃がわりにお金を入れてるけど、アパート借りるよりは安い。あとは節約しているし、むしろこの収支で管理できてる自分を褒めてるくらいだね」

クレオ『そんならいいけど。仕事もそこまでハードではないしね。おれも一緒に行ってるけど、よっぽどの時以外は平和だし』

アケル「“オタクは浪費が激しい”なんて昨今言われてるけど、ぼくらはそこまで使い込んでないし」

クレオ『クレジットだけ、ネットで買い物する時注意だね。あと、もう少し貯蓄を増やしたいなぁ。よろしくお願いしますよ、ボス』

アケル「クレジットはね…うっかり使っちゃう事多いから、マジで気をつけよう。
 でも、それさえなくせばローンを組んでいるのは田舎暮らし必須の車。後は家の修繕費くらいは確保したい。子どもはいないので教育費はなし。
 向こう10年は福祉に関する資格を取ってみる。
 貯蓄はなるべく資産運用に回して、今後10年間は稼いで貯めて、になるかな」



2【エンディングノートについて】

クレオ『そういや、この前の記事からエンディングノートってのを知ったんだけど、あれは何を書いてるの?死ぬまでにやりたい100のこと、みたいな?』

アケル「そういうのも書いても楽しいけど、元々エンディングノートは死んだ時や急病の時に第三者に伝える記録なんだ。銀行にどれだけ残ってるか、保険は何が入ってるか、とか」

クレオ『個人情報なんだ。じゃあ読んでてあんまり面白そうじゃないねぇ』

アケル「まぁ合間に落書きとか4コママンガとか書いてもいいよ。読んでる人も気が重いもんな」

クレオ『お前が子どもの頃に書いてたマンガ読みたい。猫のやつ。あれまた書いてよ』

アケル「あれ、母さんが今でも持ってるんだよなぁ…じゃなくて!信頼してる人には見せない情報が多いから、読ませる第三者にだけ場所を教えておくこと。災害でなくなっちゃう場合に備えてデジタルにもバックアップを取ること。
(※2022/12/1 追記 デジタルのクラウドサービスからも流出する危険を書いてませんでした。複数のバックアップを取るのは大事なので、閲覧制限のあるテキストエディタ(Excelなど)や2段階認証などのパスワード管理アプリなどを調べて併用することをお勧めします。)

この二つさえ気をつければ、誰でも書ける。20代でも30代でも。だから、節目節目に始めるのはおすすめです」

クレオ『終活、人に勧めんのかい?』

アケル「前の記事で注意書きとか書いたけど、これ読んでくれてる人全員にほんとはおススメしたい。だってさ、Fセクだろうが異性愛の既婚者そんだろうが、みんないつか死ぬんだよ。死ぬ時のことをある程度決めておけば、漠然とした不安よりは生きやすくなるんじゃないかな?」
クレオ『まぁ人それぞれですしね。面白いこと他にはないの?』
アケル「葬儀とか書けるスペースが、意外と面白かったなあ。

どんな花が好きか→橙、黄色の花
棺に何を入れるか→本。一次創作の本(骨壷には薔薇の花のシルバーリング)

 こんな感じ」

クレオ『色々考えてるよね。お棺の本ってのはおれでいいとして、骨壷にも入れられるの?』

アケル「お棺は火葬できるものが限られてるから、メガネとか燃えにくくて小さいものなら骨壷に入れる。ぼくの地元じゃ最近はかなり火葬できるものが限られてたから、オタクの人も地域ごとに確認した方がいいね。
 あとぼくの場合は、死ぬまでに戒名は男のものにしたいとか」

クレオ『戸籍変えてからも大変だから、ゆっくりやろう。…もうちょいメリットが欲しいね。今のところ残された人たちの為のものって感じだし』

アケル「うーん、メリットなぁ。…エンディングノートを書くメリットは、死んだ時に周りに何の情報が必要なのか考えるきっかけになる」

クレオ『それだけ?もう一声欲しいな』

アケル「つまりそれは、身近な人(特に両親)に何かあった時、何を知っておけばあたふたしないかが分かる。

 あと、“エンディングノートを書いてみたんだ。こんな情報が必要なんだよね”って話題を振るくらいはできるし。老後の話はしにくいけど、少しずつ糸口にはなってるかな」

クレオ『何かを知るって大事だね』

アケル「…ただ、今元気でピンピンしてるぼくでも、やっぱり死んだときを想定して書くのはキツイから、心が穏やかな時に書いた方がいいよ。あと、親に“さっさと終活しなよ”とかは言っちゃいけないのが分かった」

クレオ『…ほんと、知るって大事だねぇ』



3【家族(特に親)と、ちょっと先の未来を話し合える関係でいる】 


クレオ『おれのことは、お義母さんとカウンセラーさんが知ってて相談できるんだっけ?』

アケル「うん。ゆくゆくは家族に少しずつ話していくかなぁ。特に弟が年下の親族だから、あいつには話さないとなぁ」

クレオ『今後ともよろしくお願いします、って言っといて』

アケル「うん。それとは別にそろそろ父さんが定年だから、5年先のことは話せるようになってきた」

クレオ『そういやなんで、お前が家族全員のお金の管理やってるの?一回病気されてんだっけ?』

アケル「元々は母さんの担当だった。家計がかなり苦しくなったのと、母さんが体調不良になって、家事のほとんどがぼく担当になったんだよね。その時仕事もしてなかったし、家事手伝いから始まったんだよ」

クレオ『なんかでも、結構優秀じゃん。週一で家族集めてお金の話してるし』

アケル「月の確定収支が決まった時の情報共有と、もうすぐ定年だから節目で入るお金について話し合ってる感じかな。
 でも、いい機会だと思ってる。いきなり老後の話はお互いにきついから“これからどんな暮らしがしたい?”くらいは聞けるようになったし」

クレオ『どんな話したの?』

アケル「例えば雑談くらいでもこれくらいは聞けた。

  • 定年したらもう車は購入できないから、最後にちょっといい車を買って通勤したい

  • 生命保険の満期になったけど、まだお金を使う時期じゃないから、国債を買ってみよう

  • 最近この俳優さんが好きでグッズが欲しい

  • まだまだ子供を教えたいから、元気でいる間は仕事を続けるつもり

  • 服用している薬が血糖値上げるから、食事は糖質控えめにしてほしい

 意外と(…と書くと失礼極まりないけど)親も夢と希望、生活を維持するための要望を持っていた」

クレオ『普通の会話だね。でもこういうとこから、何したいかを分かり合えるってことかな』

アケル「意外とね。まあ“孫の顔が早く見たい”とか、叶えられない願いもあるから。できない時は「できない。ごめんね」って言えるのもありがたかったし」

クレオ『色んな家庭があるからね』

  

4:愛は孤独と不安から身を守ってくれる


アケル「最後におすすめの終活漫画“ひとりでしにたい”から、このセリフを紹介したい」

クレオ『なになに?』

 買い物依存、投資…… 宗教
 おばさんそんなに頭悪かった?
いや若いころ「自由」だと思っていたものは
年をとると「孤独」と「不安」になって
孤独と不安は人間を「馬鹿」にしてしまうんだ

ひとりでしにたい 第2話『謎の謎』

孤独死する人ってのは 「希望」つまり「生きる意欲を既に失ってる人が多いんです
どうでもよくなってるから 健康に気を遣わない
(中略)
孤独死したくないなら 「担当」という「投資」
一番ケチっちゃダメですよ

第6話 『希望の星』


アケル「主人公の山口さんは、叔母さんが孤独死をしたことで終活…ひいては生き方を見直すようになった。 そこへなぜかそれほど仲良くなかった同僚の那須田くんが絡んでくる」

クレオ『山口さんにとってはアイドルの自担が生きる希望なんだね』

アケル「肉体のない、触れられない人と添い遂げたいと思ってる。そこまで好きであるなら、もう希望は持っている。後は、残りの人生をどう備えていくか。それも、好きなキャラクターならどう考えるか、どうアドバイスをくれるか、って空想して、ふたりで話し合ってもいいんじゃないかな?」

クレオ『おれの視点(肉体のない存在)だと、お金や老後について実感としてあるわけじゃないし、きっとこの現実を生きてる人よりも、理解は及ばない。
 でも、だからこそ、今回話し合えて、アケルがおれを頼りにしてくれて嬉しかった。
 頼れるとこは頼りにして欲しいし、寄り添える間はあなたの幸せを願ってる。
 なにより、架空のキャラクターっていう扱いの難しい存在を人間と同じくらい愛しているってことに、ありがとね、っていつも思ってるよ。

 無理しないで心が軽くなるように生きていこう』

アケル・クレオ「『…といってところで、ここまでお読みいただきありがとうございました!』」


 見えない愛を継続するために、どのようにぼくらは生きて死んでいくか。これからも向き合い続けていって、また書けることを記事にしていきます。



 

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