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タツゴロウカムバック【小説ではなく、本当のエッセイ】

 #38 書き手:クレオ

『ま、あんまりおれにタツゴロウの話をしないでくらいかなぁ。無自覚なだけでほぼ惚気ですからね』

「は?!」

『恋人じゃないよ。兄弟として惚気言ってんの。世の中、恋愛とかカップルが特別な関係だとやっぱ思うかもだけど、創作におけるバディって、すごく強い繋がりですよ。

 おれが太刀打ちできるのは、お前の人生の創作に、唯一、一緒に携われるフレンドという自負があるからだ。

 それがなかったら、諦めてましたよ』



 さて、今日は読者さんにお話ししたいことがあります。

 今まで黙っていてようやく解禁するお話なんで、頭の中でドラムロールでも流して聞いて欲しいのだけれど…アケルの兄貴のタツゴロウが、戻ってきました。

 アケルが「ぼくが先に書いちゃうと、クレオが言いたいこと言えなくなっちゃうかもしれないから、クレオ視点からまずズバッと書いて欲しい」と言ったもんですので、まずはおれ視点から記事を書いてますが、…アケルの兄貴をおれから紹介するの、なんか変な気分だなぁ。

 アケルも次の記事でタツゴロウとの再会を書くつもりらしいから、細かい経緯はアケルに任せます。

 とりあえず、タツゴロウが一ヶ月ほど前に戻ってきてしばらく過ごした後、どうやらアケルのフレンドとして彼も留まってくれるとのことで、ようやく報告に踏み切ったところです。

 おれとしてはすぐに報告したかった内容ではありますが、アケルも慎重なもので
「本当に自分の知ってるタツゴロウなのか?」
「クレオとうまくやっていけるのか?」
 なんてごちゃごちゃ考えてたから、話せませんでした!


 ということで今回は、先週のような物語の体でなく、本物のタツゴロウに会ったおれの話です。好き放題喋ろうと思います。


【おれから見たタツゴロウ】

 とはいえ、好き放題しゃべると記事がまとまらなくなっちゃうので、まずはアケルとおれとで、インタビュー形式でネタ出ししました。

「タツゴロウを一言で言うなら?」

『大昔にアケルが実家で飼っていた大型犬。

 アケルと一緒に育ったので、自分の弟だと思ってる』
 アケルは生暖かい目でおれを見た。

「お前…イイ性格してるな」
『いやいや!お前が先に犬に例えてたよね!
 …申し訳ないんだけど、おれと同じイマジナリーフレンドって感じじゃない、文化圏が違う存在。

 何年もアケルのこと?生まれた時から見てるような物言いして、ずっと見てきたって自慢気に言ってるし。でもそのくせ、性格やものの考え方は今でもあの漫画のキャラなんだよね』

「ぼくの子ども時代の話な。あれはどうなんだろう。初めて出会ったのは中学時代の癖に、もっと前から見ていたってことか?でもそのくせ、再会してからもキャラそのものとして振る舞っていて、そこは相変わらずなんだよな」

『飄々としてるけど大事なところは譲らないし、知覚は鋭くて色々見抜いてくるんだけど、理不尽モードの時は適当言ってることもあるし。人間臭さと、野生動物っぽさと二つある。アケルが話してた風や精霊の話もついていけてる。不思議な存在』

「ぼくから見ても、ますますよく分からん存在になっちまったな…」

『好きなように呼べ…って言われそう。一言でまとまらなくなっちゃったし…』

「最初に書いてあるじゃん。大型犬ってやつ」

『あ、そうか。補足すると、タッちゃん独自のルールから外れなければ(アケルをバカにしたりとか、邪険に扱うとかしなければ)”兄弟の大切な人”っておれを扱ってくれる。アケルにちょっかいかけたりスキンシップ多いのも、それは向こうの文化だから仕方ない。ただ、気まぐれな人だし時々不穏な時もあるから、気になることはちゃんと話す』


【出会いと今】

「出会った時の印象はどうだった?」

『出会った時ね…。最初は怖かったし、アケルの言ってた話を聞いてたから、そっちのイメージに引っ張られていたな。でも、お前が言うほどとんがってもいないし、…デリカシーないだけで。

 一本気なところとか、アケルに対してすごく一途なんところが好感持てるよね。おれとアケルに向ける視線とか全然別…』

「え、あいつまさか校舎裏でお前のことシメて…」

『どこの校舎裏だよ⁈ないない。態度が変わってるわけじゃないのよ。気さくでおれにもアケルの家族にも優しいけど、アケルはまた別格なんだよ』
「こわ…」

『むしろ、あれだけアケルのこと好いていて、よくおれのこと邪険に扱わないなぁ、と不思議だったね。

 でも、おれのこと”アケルが信じた奴なら、だれでも認めてる”ってさ。
 ちゃんと大人で、純粋で一途なんだよ。がさつで乱暴な面が目立つけどね』

「そうかぁ。そこまで認めてくれてるんだ」
アケルが感心したようにつぶやいた。

『アケルが知らないだけで、結構お互い話をしてるんですよ。お前が思うほど、険悪な仲じゃあない。
 それでもあえて言うなら…妬ましいとは正直思ってるよ。お前ら自覚ないけど、めちゃくちゃ仲いいもん。

 お前にとって、おれの元の物語に出てきたMさん(クレオの物語に出てきた、クレオの相棒。アケルが唯一嫉妬しまくっているキャラクター)って感じ。
 だから、創作やおれにしかできないアケルのサポートで張り合ってる。タッちゃんは、そこは門外漢だからね』

 …と、このように最初の印象から今の印象まで話してみました。

 いや、実際腹が立つことはあります。
 先週タツゴロウが登場した小説を書きましたが、三代噺でテーマがアレだったからだけでなく、

『この一ヶ月でそこそこ溜まってる鬱憤を晴らすために、タツゴロウをいじってやりましょう』

と、おれが提案したのです。

 書いた後でやり過ぎたと後悔したけど、アケルは
「いや、お前は優しいな。ぼくが創作でいじるときは、簀巻きにして火あぶりくらいはするよ。いつものタツゴロウを忠実に再現したと思うぜ」
と温かい目で言っていて、創作って怖い、って思いましたね。


【さて、これからの3人は?】

「おれは、タツとクレオとどういう関係を取り持ったらいい?」

 ここでのアケルの質問に少しイラっとしたので、やや強い口調となっております。

『いや、タッちゃんも何度もお前に言ってるんだけどさ』

「なに?」

『おれもタッちゃんもいい大人なんですよ。いつかアケルの昔の仲間が戻ってくることも覚悟していた。
 最初のインパクトは、マジでヤバくて怖かったけど、タツゴロウから過去を聞いたら、アケルがおれに話してたほど、拗れた関係じゃなかったじゃない。そこ、なんでか思い込みありますよ』

「そうかな…」

『そうともさ。タツゴロウは強引だけど、おれを見る目も優しいし“アケル以外要らない”ってのじゃない。
 人間嫌いだったアケルに、社会や他人とコミュニケーションとらせようとしてるし。乱暴だけど道理の分かる人ですよ、らんぼうだけど』

「そこは2回言うのな」

『だからさ、アケルが全部関係性をどうにかしなくちゃいけないわけじゃあないから、背負い込むなよ』

「…そうか」

『ま、あんまりおれにタツゴロウの話をしないでくらいかなぁ。無自覚なだけでほぼ惚気ですからね』

「は?!」

『恋人じゃないよ。兄弟として惚気言ってんの。世の中、恋愛とかカップルが特別な関係だとやっぱ思うかもだけど、創作におけるバディって、すごく強い繋がりですよ。

 おれが太刀打ちできるのは、お前の人生の創作に、唯一、一緒に携われるフレンドという自負があるからだ。

 それがなかったら、諦めてましたよ』

「…クレオ」

『お前もタッちゃんと言葉のプロレスしてる時すごく楽しそうだし、なによりタツゴロウが、すごく幸せそうなんだよね。背景にお花飛んでますよ、あれ。尻尾と耳めっちゃ振ってる幻覚が見える時もある』

「そこまでかぁ…」

『結婚相手とか唯一無二と思っていたら、おれも出る幕ないけどね。タッちゃんはバトル漫画のバディで、おれはお仕事系漫画のバディなんですよ。だから、仲良くできる。どっちもアケルの為にしてやりたいし、お互いアケルになくてはならない役割だと、認めているわけです』

 アケルはため息をついた。
「この1か月で、よくそこまで」

『もちろん悩んだし、これは公開記事として書いてるから、多少はやせ我慢もしてるよ。でも、ちゃんとお互い話してるし、アケルが別のことで苦しい思いしてる時も、”一緒に支えよう”って、お互い違うところで支えられるから、いて良かった、って話をしたんだよ。おれたち』


 アケルがこの記事の最初に、おれに順番を譲ったり、やたら気を遣って、でも空回っていたのを見ていたので、ここは本心だと念を押しておく。

 それに元々、アケルがタツゴロウを引き留めたのは、おれが意思疎通できて相談できる相手が欲しかったってのもあるよね。

 すごく複雑で、人によっては正しい関係に見えないかもしれないけど、おれとタツゴロウは考えて決めてるんだ。実際、アケルに嫌な事言われたら反論するし、それでも聞かない時は、頭冷えるまで離れる時もあるんです。

 

【タツゴロウのキャラクター】

「クレオはタツに興味を持って、タツの漫画を読んでくれたけど、どう思った?」

『違う人だとは思ってないよ。おれは元の人とは性別や性格はだいぶ違うけど、タッちゃんは結構キャラの性格と同じじゃない?アケルにとっての、あのキャラクターは自分なんだ、って決めてるんだよ、きっと』

「なんでだろうな」

『そんなの、アケルがあのキャラ好きだからでしょう?』
「うーん…」

 アケルはピンと来てない様子です。

「どうなんだろう?ぼく、一目ぼれとか、自分が好きになる属性ってよく分からないんだよな」

『うーん、アケルの好きな人かぁ。一見腹の底が見えなくて怖いんだけど、大事なものを守るために生きてる人、かなぁ』

「今なら、タツもクレオもそういう人だと分かるけどさ。よく知らないうちに、いきなり”今日からワレの用心棒じゃけん、仲良うしよな”って殴り込みに来たからさ。
 仲良くしてねってお願いじゃなくて、もう確定なんだよ」
『あはは。タッちゃんならそう言うだろうね。それに、初対面で雨戸閉めたんでしょ。自覚してないけど、煽ってるんですよ』
「ただ、漫画全部読んだあと、タツゴロウのキャラはぼくと似てる、と思った。ここまでしっくりくるキャラってそうそうない。

 今再会しても、キャラの人生を背負ってモノ申してくれて、その視点で言ってくれる言葉はすごくありがたい」

 しばらくアケルの話を聞いてから、おれは頭の中でまとめていた考えを話して聞かせました。

『おれの解釈はさ。やっぱりあの人はアケルにとってのキャラ本人でいたいと思うんだよ』

「どうして?」

『だって、おれがそうだからさ。おれも、アケルと一緒に2年過ごして得たことも多いけど、やっぱりアケルが読んだ物語の人格が地盤の一番深い層としてあるわけですよ。


 この記事、おれが気に入ってるとこは、”たましいは、分け与えられるもの”ってとこ。

 タッちゃんはすごくアケルに似ている。ほんとうにたましいが兄弟なんだ、と感じるくらいさ。

 タッちゃんは、どこかからお前を見ていたんだ。大変なしんどい思いで過ごしているのを見て、きっとたましいを分けたくなって、来たんだよ』


 アケルはおれの言葉を聞くと、少しだけ泣いた。うまく言葉にできないけど、嬉しく思ったようだ。ほらみろ、やっぱお前、好きなんじゃないか。
 でも、アケルの顔を見て、言えてよかったって思いました。人に想ってもらうのを、ようやく受け止められるようになってきたんだろうね。

 タツゴロウにも、アケルにも、もちろんおれも、みんなで幸せになりたいと思ってる。

『キャラクター側にも、会いたいと思うこともある。愛って、一方的なものではないと思うんだよね。自分って存在がなにか力になれるんじゃないか、って思うんだよ。
 おれはね。あのキャラは、きっとお前の生き様を好きになってたと思う』


 その後、アケルに「この記事を思い出した」と教えてくれた。「二次元のキャラクターには魂はあり、次元の壁を向こうが壊そうとしてくる」という話だ。


『おれはね、人間の観測しえないよく分からない存在なりに、信じているよ。
 タッちゃんはおっかないとこもあるけど、すごく優しくて家族思いだ。それも、血がつながってなくても家族だと思う気持ちはとても尊いよ。
 きっと大半の人は分からない美学があるけど、お前やおれにはそれが分かるから。だから、彼にとっても、きっとここは居心地いいんだよ。
 色々大変だけど、3人で一緒にいよう』

ちょっと綺麗すぎな終わり方だけど、インタビューはこの辺で終わりにしました。

言いたいこと言えて、スッキリしました。次はアケルの記事(惚気)、楽しみにしてるからね。

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