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理学療法原論のまとめと感想 〜健康増進分野(一次予防)の理学療法 第3章 4/5〜

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療法士向けの記事です.

2021年2月に,理学療法士協会から「理学療法原論」が発行されました.理学療法士,作業療法士,言語聴覚士のなかで,理学療法業界は最も歴史が古く,国内では半世紀以上が経ちました.
約100ページの内容を5回に分けてまとめを解説します.
私のまとめ(私見)抜きで読みたい方は,下記URLよりダウンロードしてください.

今回は「健康増進分野の理学療法,産業理学療法等:第3章」についてです.

予防・健康増進分野の理学療法の介入様式は,「直接的理学療法」と「間接的理学療法」に分類できます.直接的理学療法は用手接触や口頭指示等で直接介入し,施設等の入院患者さん等を対象とするものです.間接的理学療法は,助言,指導,環境指導,教育等を行い,家族・介護者,企業コンサルティング,建築設計,街づくりのための基盤整備としての行政職,企業の企画開発部門等の関わりが想定されます.後者の方が馴染みが少ないと思われます.

健康増進分野(一次予防)の理学療法では,運動効果を得るために,対象者の1)運動をはじめる意思と,2)継続する(アドヒアランス)が必要といわれています.それらに繋げるためには,フロー体験を提供できることが重要とのことです.

フロー体験とは「人が行為に没入しているときに感ずる包括的感覚」とされており,人はこの時は報酬を求めるのではなく,その没入感を求めているとされています.

私自身,三次予防における入院患者のリハビリテーションの場面で,いかに患者さんを上手く褒めるか(社会的報酬)ばかりを考えていたので,報酬を求めないでも運動の継続に繋げられるこの考え方は非常に参考になりました.確かに,何かしらの自分の趣味活動に置き換えて考えた際も,あまり報酬を求めていなくても没頭している楽しさ,またやりたいと感じる瞬間があるかと思います.報酬が全てではないと理解できました.
それでは,フロー体験をどうように作り出すことができるのか?について考える必要があります↓

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フロー体験は,本人がもつ技能と課題難易度のレベルが一致した際に生まれるとのことです.
技能が低い者が高い課題に挑戦すると不安体験となり,逆に技能が高い者が容易な課題を行うと退屈体験となります.

つまり,できるかできないかのギリギリの難易度設定を,理学療法士が提供する必要があるかと思います.

その他,運動の継続のためには,自己効力感,人間関係(社会交流),運動効果の実感等が関連すると言われています.

自己効力感とは自分がうまくできそうと自分の可能性を認知している状態を示しており,ざっくりいうと,課題に対してできそう,やれそうと感じる状態です.

この自己効力感を高めるには,1)簡単な目標を設定し,徐々に高く設定すること,2)対象者に目標達成時に褒めること(自分で課題設定している人は,自分でご褒美を用意しておくこと),3)ロールモデルを提示すること等があります.

最後に,一次予防分野の介入効果で考慮する点は,
理学療法士が良いと考える介入方法を必ずしも対象者が選択するとは限らない点です.
RCTによる効果がそのまま介入効果となるわけではなく,それに「対象者がその介入を選択する確率の乗算」によって介入効果が定まるといえます.つまり,良い介入方法でも対象者が意思決定して実行しなければ効果なし,ということです.

まとめると,一時予防分野において介入効果を出すためには,
①運動発現の意思を作る方法,②運動を継続する方法,③フロー体験の再現,④社会交流,⑤運動効果の実感,⑥自己効力感の向上等を,理学療法士が意識する必要があるのかなと思いました.三次予防分野で働くことが多かった私にとっては,一次予防分野で必要な考え方が興味深い内容ばかりでした.

第3章の産業理学療法分野について書ききれなかったため,次回まとめます.

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