餃子・スタンド・バイ・ミーの話
この体は餃子でできていると言われたことがある。
祖母に。
祖母の体じゃなくて書いてる人の体が、です。
子どもの頃、祖母と会ってごはん食べに行くとき、何でもあるからっていう理由で大体ファミレスとか回転寿司とかに行ってた。たぶん。
今はそんなの見たことないし、昔あったお店もなくなったけど、回転寿司と餃子の王将が一緒になってるお店(一つの建物の中で合わさってて、回転寿司のボックスシートみたいなのばっかでお寿司が回ってきつつ王将のメニューも注文できるっていう中学運動部男子の夢みたいなお店)があったので、結構頻繁にそこ行ってた。今考えれば普通に安いのに何でもあるって相当いいよな。
で、自分はその当時狂ったように餃子ばっか食べてたので、冒頭の祖母のひと言だった。
でも正直あながち間違いでもないというか、体の成分調べたら餃子の匂いしてきそうなほど食べてた。餃子をおかずに餃子を食べるレベルでそればっかり食べてた。頭おかしいと思う。実家で作るときは食べ盛りの兄弟姉妹もいたから100個包むのはデフォだったけど、今作るとしたら一人で何個包むんだろ。100包んでも20いけたらよくて後は冷凍だろうな、現実的に…
餃子はすごい。あのサイズでお肉も野菜も炭水化物も含まれてるとか超すごい。ヤバくない?アルティメットじゃん。しかも何かしら入れても大体おいしいとかほんとすごいと思う。
カレーはさあ、自分カレーめっちゃ好きなんだけど、カレーは何か入れてもカレー味になるじゃん。なんか、わかんないけどチーズかけてもそれはカレーが勝つし、なんだろ、なんか、海鮮とか入れてもカレーの味強いし。風味はあるけどカレーが強い。
けど餃子は入れたものの味がしつつちゃんと餃子として成立してて超いいと思う。誰とでも合わせられるし個性殺さないとかまじでめっちゃ人気者でしょ。中学とかだとクラスで人気ありすぎてヤンキーの先輩とか教室まで見に来るやつじゃん。
大学の頃に友達の部屋で4人くらいでダラダラしてたことあって、そのときのことすっごいめっちゃ覚えてる。
なんかたしか同じ部屋にいるのに各々がマンガ読んだりゲームしたりとかで、特に何もなかったんだけど、誰かがボソッと、ぽろっと、「餃子食べた~い…」って言って、もうその瞬間全員頭が餃子しか考えられなくなった。食べたいね~とか言わなかったけど、あれはまじでもうほんとに、全員テレパシーみたいに一瞬でおなじこと考えてた。
ものすごいスピードで各々の冷蔵庫の中身取りに行って足りないもの買い出し行って、正直あんなスピードで効率よく分担して動いたこと大学時代後にも先にもないよ。普段どんだけ適当に生きてんだよ。
お昼ごはん食べた後の微妙な時間だったのに、100個以上包んだし、それぞれ家から包丁とまな板持ち寄って白菜もキャベツもごちゃ混ぜにして刻みまくって、あの瞬間はめちゃくちゃ絵になってたと思うぞ!わからんけど!なんか、牛乳を注ぐ女の「ひたすら刻む女×4」みたいな!光の加減がさ!これ誰も伝わんねえわ、忘れて!
そんでまあキャベツとか白菜とか刻みまくって、ボウル何個分?くらいまでやって、にんにく山盛り入れるしショウガはもうショウガ汁じゃなくてすりおろし入れたらいいじゃん!とかギャーギャー騒いで、そんで包むときになったらめっちゃ無口で一心不乱に包んで、ジャンジャンバリバリ焼いて、それはもう食べまくった。一途に。ひたむきに。ただ食べることのみに真剣になってた。もうあれは賊。山でも海でもどっちでもいいけど賊。あんな目ギラッギラにして食べるのは賊ですわ。
いつもなら全っ然食べない子とかもめっちゃ食べてて、まじでいつものあのウサギみたいなちょびっと食べてずっと口動かしてんの何やったん!?てなるくらいめっちゃ食べてた。ウサギ食いじゃなくてめっちゃぱっかーて口開けてた。普段の小っちゃい口で嚙み続けてるやつまじで何なん?ミノ食ってんの?
でもあの子のあれも、やっぱ餃子がなんかそうさせてんのよな、多分な。
たらふく食べて、普段食べないぐらいまで食べたんだから、あれはぜったい、餃子が持つ魔性の魅力が我々を狂わせたに決まってる。
その後結局その四人で集まることはなかった気がする、会うことはあったけど。その四人で、四人だけで集まって、みたいなの、あれっきりだった。
普通に仲良かったし直後に卒業したし何より就職でみんなバラバラだったからしゃーないんですけどね。集まるってなったら他の人たちも呼ぶからさ。あと誰も死んでません。弁護士にもなってません。喉刺されるようなことはしません。
今も餃子は大好きだし、嫌なことがあったら、もう回転寿司と一緒ではなくなった王将に入って、瓶ビールと餃子二人前を頼んだのち無心で腹に収めて、そのあとまた「あんの野郎いつかやり返してやっからな覚えとけ」と頭の中で負け犬の遠吠えをかましている。
大学の頃の突発の衝動にまかせた餃子も美味しかったけど、どんなとき、どんな状況でも餃子はうまい。
これまでの人生も、今後の人生も、餃子の前で目の色を変えないことなんてない。
Jesus, does anyone?
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