湊かなえさん 少女 の感想。

軽いネタバレがあります



お互い一緒にいて心地良い関係を疑い続けることは非常に優しいことだと思う。それに似ている言葉を探して、あてはめるなら、「親しき仲にも礼儀あり」だろうけど、それではこの繊細で心臓を細い糸で締め付けてくるようなこの小説には変に歪すぎる。

この作品に登場する由紀と敦子は小学生時代に剣道教室で出会った。だがそれぞれの出来事をきっかけに、不信感を覚えながらも高校生になっても上辺の「友達」という関係を続けていく。そんななか、ふたりの仲を取り繕う役として結局は奇数の歪な関係性を作り上げることとなってしまった転校生の紫織が語った「親友の自殺」から、敦子は死を悟り見つめることで自分が強くなるのではないかと考え、由紀は紫織の「親友の自殺」という話を自慢話と捉えそれを羨ましくを思った。それぞれの思惑を胸に、「人が死ぬ瞬間に立ち会うため」梅雨が明けたというのに決して爽やかではない長期休みに、それぞれはボランティアとして、敦子は老人ホーム、由紀は大学病院でそれぞれの年代の死を見つめようとする。その最高であろう瞬間を眼球に焼き付けようとする。
そこから展開されていく物語は本当に面白くてそのあとのお話はぜひ買って読んでみてほしいんですが(こんなに小並感がある言葉じゃ言えないくらいに)
私は由紀と敦子の繰り出される思春的なぐちゃぐちゃでお世辞にも整理されていて綺麗だと言えない気持ちや考え、そこからすれ違うことしかないふたりの気持ちは、状態は、、またその関係性を、どう表現すればいいかわたしはまだわからなかった。わからなくて、読んでも読んでも分からないから、5回目くらい読んだ時にはもうこんがらがってた。どうしよう!定義付けできない!(するために本を読んでるわけじゃないけど)とにかく、わたしの高校生の小さな頭では足りなかった。
「愛」ではないな。愛は、性欲と本能の中で混じりあって、「きみは守るけど関係ないお前らは助けないよ」と言ったふうに周りが見えない見えなくなる感情だとわたしは(簡潔に言えば)思っているんだけど、それではないし。
そしてまた、物語中の不信感塗れた気持ちも「嫌悪」とは言いきれない。そこにはなにか、優しさがあって、それこそが作品の中での唯一の人間味だったし。あとは、「友情」とか。だけどそんな「友情」などの言葉はわたしのなかで「愛」に分類されるし、、、あとなにがあるかな。わからない、、、、、
となっていた。だけど!だけど!わたしはこの状態をどうしても言葉にしたかった。国語の成績がそんなに良い訳でもないし、読書の量も人並み程度(以下かも!)なので、そんなにことばというものにこだわりを持っている訳では無いけど、なんだかこれを言葉に出来ないのはもったいなかった。だからといって、愛とか友情とかでまとめてしまうのもいやだった。
だからわたしのなかでこの関係性や気持ちのすれ違い、喉をひゅっとすり抜けていくこの空気感を、芸術家が人工的に作り上げた規律正しい美しさと言葉をつけた。なのでわたし辞書をひくと
「湊かなえ (さん) の小説 少女の空気感
――――芸術家が人工的に作り上げた規則正しい美しさ」となる。ちょっとわたしでもなにいってるかわからないですが、、、、
先程書いたとおり、この物語には人間味がなんだか感じられなくて、淡々と語られる物語、由紀と敦子の思考主観物語全て心内に潜めてる訳ではなくでも誰かに話しかけているわけでもなく、本当に彼女たちのひとりごとな気分で、それが読みやすかったし他人に干渉しない感じがありました。だからモネやゴッホみたいな、風景だったり感覚的だったりするのではなくて、定規をつかってしっかりと測って、現代アートと言った方が近いのかな。(現代アートを主とした)芸術家が人工的に作り上げた規則正しい美しさ。人間がない、本能や性欲がないんです。だから愛でももはやそれは感情でもない。だけど、ロボットでもない。硬くないんです。触れたら柔らかいのに、暖かくないしちぎれないし、石を投げたら跳ね返ってくる。そんな様子が私はたまらなく好きでした。きみたちのこと、わかってあげたい。と思いました。でも、分かってあげられることなんてないんだろうな。とも悟りました。かわいかった。
そしてもうひとつ!この小説は登場人物が発する言葉の響き方が、ほかの小説とは違うな、と思いました。由紀や敦子が語る言葉もそうだけど、それを取り巻くひとたち、由紀の父や彼氏、敦子と一緒に仕事をしていたおっさんなどその人達が発する一言一言が、わたしの心臓を細くて細くてたまらない糸で締め付けてくるような感じだった。それでいて苦しくなくて、その人たちの言葉は潔くわたしの汚い部分を拭ってくれて、読み終わったあとこの物語は想像だって気が付いて、それは物語を作り上げた人、湊かなえさんがわたしの心臓を掴んで来てるんだって気付くと、とっても気持ちが良くてたまらなかった。
暫くはじーんって、余韻に浸って、気になるところは読み直して、、という生活を送りそうです。

最後まで読んで頂きありがとうございました!
はちゃめちゃななぐり書きでごめんなさい。

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